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< まわるとたのしいもの | メイン | うー先生の怒りの当直 >

哀しみを抱いて故郷に還ろう(7)

akagama / 2007.02.23 22:31 / 推薦数 : 0

  (7)

 ところで、死んだ、宏の上着のポケットから、意外なものが出てきました。

 宏が子供のときに使ってた古い小さな財布に小銭が三百五十円。

 そして、大分までの航空券。

 ひょっとしたら、最初おいらを尋ねてきたときに、宏はおいらにこのお金を返そうと思っていたのかもしれません。

 あの時は、おいらも少し怒っていたので、結局お金を渡しそびれたのではないでしょうか。

 あの時に、おいらも、じっくり、宏と子供のころの思い出話をして、お金を受け取っていれば、こんなことにはならなかったかもしれないと思うと、とても残念です。

 そして、もうひとつの遺品、大分までの航空券。

 おそらく、おいらにお金を返したら、もう一度、大分に帰るつもりだったのでしょうか。

 かつての天使園は、大分の街並を見下ろす小高い丘の上にありました。

 いまは、園児達も他の施設に移り、建物も取り壊され、更地の駐車場になっているわけですが、宏は一目あの景色をみてから、犯した罪にけじめをつけるつもりだったのだろうと、おいらは思います。

 事件の後、司法解剖を終えた、宏の遺体は、東京で荼毘に付され、おいらと、勇太郎の手で骨壷に納めました。

 宏のお父さんは、九年ほど前に、刑務所で病死したそうです。

 行方不明のお母さんにいたっては、どこで、何をしているのかも、今はわかりません。 
 
 小さな壷の中で眠る宏は、おいらが、大分まで連れて行くことになりました。

 恵まれなかった彼の生涯の中で、一番幸せな時期を過ごした故郷の土に還してあげようと。

 ところで、天小路次郎吉は、やっぱり、無罪放免というわけにはいかなかったようです。

 荒川医大病院を退院したあと、すぐ東京地検特捜部に、贈賄の疑いで逮捕されました。

 これから、「ロイザックトラスト投資詐欺事件」の捜査は、天小路、政界ルートの解明に向けて、一歩を踏み出したわけです。

 テレビではあわてて、汗をふきふき、釈明会見をする、大物政治家の姿が連日のように映し出されています。

 どこまで解明されるかは、あやしいものですが、これがきっかけになって、被害者の人達に、少しでも騙し取られたお金が戻ってくるといいなあと思います。

 もっとも、天使園の園長先生のように命を落とした人にとっては、あまり、慰めにもならないのですけれど。

 そして、おいらは、平塚講師に、三日間の休暇をもらうことにしました。

 宏の納骨と、園長先生のお墓参りのためです。

 羽田空港から、おいらと宏の、幼ないころの想いをのせた飛行機が、飛び立ちました。

 窓から富士山が見えました。

 雲の切れ間を飛行機は飛び続けます。

 やがて、飛行機は、四国の上空を通過し、豊後水道にさしかかりました。

 故郷、大分の空に真っ赤な、夕陽が沈んでゆくのがみえます。

「宏、見えるかな。いま、豊後水道の上を飛んでいるよ。故郷にはもうすぐ還れるから、ゆっくりとやすむといいよ」

 おいらは、古財布を握りしめ、自分の心の中の宏にそっと話しかけました。

 あの、小さい頃のままの宏は、うれしそうに笑っているようでした。


   (了)

  Themes for this story

 NIGHTMARE 悪夢(中森明菜/Stock)
  Superheroes(Edguy/Rocket Ride)
 Danger Ahead(Electric Light Orchestra/Secret Messages)
 

 お疲れ様でした。泣けましたら、お慈悲の一押しお願い頂ければ誠に幸いでございます。 にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ

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コメント一覧

今日から、IP変わりました。メルアドは↑のでいいとおもうのですが。。。
今回のお話はうるうるです。でも、流石はお医者様。やはり、頚動脈をきると、5Mくらいは血が飛ぶって本当ですか?切ってしまうと、もう助からないのですか?というか、助ける方法はないのでしょうか?

P.S.廻らなくて嫌なもの。首。(借金するとね)目。(気分悪くなります。) 先に言ってしまった。
written by J / 2007.02.23 23:54
ご贔屓、有難う御座います。
あのー、ここだけの話ですけど、あかがまって、かつて、鎖骨下静脈から、中心静脈栄養のカテーテルを入れるとき、隣の鎖骨下"動"脈を○○する名手だったりしてますた。ウエーン。

 で、ケイ動脈切れたら、血飛びます。まじで。

 やっぱ、無理やり圧迫、ナート?内科ではめったにそおぐうしないことですが、外科の先生いかがでしょ?

 えーあと回らないほうがいいもの、じつは、もう一つあるんです。またカキマス!
written by akagama / 2007.02.24 00:04
学生時代、週1回養護施設を訪問して子供たちに勉強を教えたり、一緒に遊んだりしていました。

4年間ずっと私に反発していた女の子が、訪問最後の日に私の名前を呼びながら廊下を走ってきて抱きついて「ホントはずっと大好きだった」と言ってワンワン泣きました。

それから10年以上経ちますが、その子とは今も連絡を取り合っています。
written by トトロ / 2007.02.24 10:29
あ~、いい話ですねー。
学生とか修行時代のお付き合いって、長続きすることが多いんですよねー。
written by akagama / 2007.02.24 13:08
とってもいいお話でした。才能ありますね~
written by 春野ことり / 2007.02.26 09:10
いえいえ、まだまだ、習作中です。
また、よろしくお願いします。
written by akagama / 2007.02.26 12:27

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