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< 許されざるもの・死の粛清(13) | メイン | 毛はえサロンで地獄をみよう >
(1)
おいらの同級生に、遠藤陽一というやつがいます。
寄生虫学教室の、大学院生です。
実は、公衆衛生学専攻のおいらとはどうしてもからむことがおおいです。
だいたい、荒川医大の寄生虫学教室には、かなり、イッチャッテル先生が多いのですが、遠藤はさらにイッチャッテマス。
パスポートもなしに北朝鮮の公衆便所にしのびこんで、ウンコを盗んできて、日本に持ち込み、キタチョウセンアラカワレットウジョウチュウという、新種の寄生虫を発見して学会に発表しました。
ワケワカラン寄生虫を、北朝鮮から持ち込んだので、外務省と、厚労省から教授もろとも呼び出しをくらい、死ぬほど怒られたそうです。
でも、二人とも全然懲りてません。
こんどは、アフリカへまたワケワカラン寄生虫を捕まえに行こなー、と二人でヘラヘラしています。
彼らにとっては、アジアは寄生虫の宝庫だそうです。
ベトナム、ミャンマー、朝鮮半島。
ジャワにスマトラ、ボルネオ島。
世界はおいらのフィールドだ!が彼と、教授の合言葉です。
世界中、ウンコ袋をかかえて巡っています。
実は、昨日、遠藤から電話がかかってきました。
「今度、Q県の野呂居村に行くよー。おまえ、今ヒマだろ? 一緒にいこうよー」
おいらはとりあえず、今のところは、これはという仕事もないので、ボスの平塚講師に、お伺いを立てに行きました。
「まー、寄生虫学教室の手伝いならええやろ。一週間休みやるわ。まあ、ゆっくりしてこいや」
病棟でこの話になりました。
「せんせー、Q県のノロイ村に調査に行くんですって、勇気ありますねー」
香奈ちゃんと同期の看護師、常盤田ちあきちゃんが、おいらに話しかけてきました。
この娘はおっぱいが、大きいので、よく、「チチウシちあき」とバカ院生たちにからかわれていますが、なかなか可愛い娘です。
「先生、ノロイ村の奇病伝説って聞いたことありませんか?」
香奈ちゃんも近づいてきておいらに聞きました。
「ほえ?しーりません」
ちあきちゃんは、なら、教えてあげるわよとしゃべり始めました。
「あのねー、Q県の野呂居村というところは、昔、源平の争いのとき、壇ノ浦で、敗走した平家の落人が逃げ込んだところらしいのよ、そこで、平家再興のための金銀財宝を隠したらしいんだけど、その記録は、地元の古文書にしか残ってないの」
「そうそう、それでその隠し場所には、のろいがかけられていてこれを盗みにくるものは、皆原因不明の奇病にかかって、血を吐いて死ぬって話ですよ」
香奈ちゃんが続けて言います。
「うひゃ、そんなあやしいところなの?単なる都市伝説じゃないの?」
「テレビのオカルト番組ではよくやってるよ、ねー」
香奈ちゃんと、ちあきちゃんが口をそろえていいました。
「だいたい、先生、なんで、ノロイ村にいくんですか?あそこ、もう住んでる村民の人がほとんど、いなくて、廃村状態だって聞いたんですけど」
「知らないよ。寄生虫学教室の同級生から誘われていてね。村役場から寄生虫の研究依頼がきたって話なんだけどね。おまえはちょっと手伝ってくれればそれでいいんだ、だって」
「あー、先生、気をつけてくださいよ。奇病にかかると大変ですよ」
「うー、おどかさないでよ」
とにもかくにも、おいらと、遠藤は、日暮里の駅から電車に乗り込み、ノロイ村に向かったのでした。
(2)
Q県、野呂居郡、野呂居村。
人口424人、平成の大合併のとき、近隣の市町村から、おまえとだけは絶対いやだ、勘弁してくれといわれ、どことも合併できなかった、気の毒な過疎の村。
そこに、おいらたちはやってきました。
まず、役場へ挨拶にいきました。
役場の助役さんがにこにこしながら、おいらに対応してくれました。
どうやら、この助役さんが遠藤を呼んだようです。
助役さんが、野呂居村の地図を広げて説明します。
「えー、村の南地区なんですが、野呂居山が、ここ村の中心部との交通を遮断しています。山の裏側に位置する南地区はそのため、ちょっとした秘境状態となってるんですがね。そこは、よくテレビとかで取り上げられてる平家の落人伝説があるところですが」
「あのー金銀お宝が眠ってるっちゅうことですが、ほんとですか」
すこし気になるおいらは、聞いてみました。
「あはは、古文書自体の存在は確認されていますが、少なくとも、私達の知るところで、お宝を手にした人の話はききませんねえ。テレビ屋さんがおもしろおかしく番組でながしてくれるんで、現地はちょっとした秘境お宝ブームに沸いてはいるんですが」
「ふーん」
「ですが、最近、その南地区にお宝捜しに出かけた連中の中に、妙な死に方をしたものがおりましてねえ」
「ふむふむ」
遠藤が、早速身を乗り出してきました。
「大阪からきた、三人組みのお宝探しのグループだったんですがね、十日間ほど南地区の野呂居山をうろついたものの、空振りにおわり、新幹線にのって帰る途中に、三人とも激しく吐下血をして、急死したのです。そして、司法解剖の結果…」
「お腹から、これがでてきたというわけですね」
遠藤が、バッグから、瓶を取り出しました。
「げっ」
おいらは、おもわず、声をあげてとびあがってしまいました。
そう瓶詰めの蛔虫さんです。
学生の時、いやいやスケッチさせられた蛔虫さんです。
でも蛔虫さんにしては、四十センチほどもあり、先端部に大きな口と牙とも、トゲとも区別のつかないものが二本突き出しています。
「遠藤、なんだよそれ、きしょいよ。しまえよ」
「これか、これは、蛔虫の親戚ではあるが、正しくは南仏棘口線虫というんだ。一八九六年、農作業中に急死した南フランスの農夫の腹から発見された記録がある。それ以外はほとんど報告例のないもんだ。もちろん日本では始めての発見になる」
「そうです。そして、その三人の、消化管は、あちこちが食い散らかされていました。死因は、消化管出血による出血性ショックです」
助役さんはずずーっとお茶を啜りました。
そして、話を続けます。
「まあ、我が野呂居村にはそういう奇病伝説はあったのですが、実際に発病者が出た以上、村としても放っておけなくなったわけでございまして、有害寄生虫学の大権威、遠藤先生とそのお弟子さんに来ていただいたしだいでげす」
弟子といわれて、おいらはむっとしました。
「ああ? で・し? それじゃ何か? おいらは、おまえの弟子か」
おいらの抗議にへらへらしている遠藤。
「まあまあ、怒るな。日当ははずむから、な」
「くそう、ばかにしやがって」
おいらたちは、村役場の用意したジムニーにのって、野呂居山の裏斜面、通称南地区に向かいました。
お忙しい中、何時も御訪問誠に有難うございます。一押しお願い頂ければ誠に幸いでございます。
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パスタ・うどんの類はアレだと思われます。
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