2009.10.27 01:00 |  診療  |  研究  |  その他(医療関連)  |  ADHD関連  |  AC、人格障害関連  |  YANBARU  | 推薦数 : 3

過適応型ADHD

 明らかにADHDの仲間であるのだが、過集中エピソードが目立たない一群が居る。
 過集中で突っ走っているADHDから見ると、「好きなことに集中することを忘れた」という風に見える。
 周囲に合わせるしかないと思い込んだADHDのACかと思うと、それほど自己評価は下がっていない。
 場当たり的になった依存型ジャイアンかと思うと、合理的思考は保たれている。
 世間的には「頑固者」という見掛けになる。

 おそらくもともとある程度KYである(非言語的状況察知能力があまり無い)ので、場に合わせ続ける依存型にもなりきれず、「自分を飼いならすような合理的な理由を見出して無理矢理納得することを習慣としてしまった」と私は想像している。

 このタイプの親は管理型の強迫的ジャイアンが多く、幼少期からかなり強制的に親の価値観を押し付ける。
不思議なのは正面切ってこの親に反抗しないことだ。普通のジャイアン、ADHDであれば、不合理なこと
は許せず、また押し付けや束縛は嫌うはずだからだ。
 
 実際「変わり者」ではあるが、例えば部活動などである程度の適応は出来ていて、学齢期には障害としての診断が不要なケースが多い。
と言う意味では、「比較的適応能力の高いADHD」という言い方も出来るだろう。実際学齢期には診断されない(そこまで表面上は不適応で無かった)で来ているケースが多い。

 私がこのタイプに着目するのは、思春期から青年期の自立の段階や、大人になって仕事上で一度行き詰まったときのリカバリーが非常に難しく、ケアの難しいタイプの引きこもりや身体症状が主体のうつ状態やパニック障害、SADなどが治り難いタイプの根本原因であることが考えられるからだ。

 ADHDは本来、自分が納得することが一番重要である。また、「好きなことに向かって過集中する」モードが最もADHDの脳に適合したスタイルと言える。だから、例えば私はADHDのACの回復期の最後の段階では「好きなことを見つけて突っ走れ」ということを勧める。
 
 ところがこのタイプのADHDは、管理型の強迫的な親に支配される中で、「自分の好きなことを追求する」というパターンを見失い、しかし適応能力を持っているので、押し付けられた環境でもそれなりに実績を築き上げて、「表面上困らない」。(が、これがADHDとしては非常に不健康な病的な状態にあるということなのだ)
 
 例えば思春期から青年期に、いざ自立する段階で、「自分で道を選べ」という状況になった段階で壁にぶつかるケースがある。
 それまでは支配的な親に押し付けられて道は選択の余地が無かったのに、いきなり自分で選べといわれても「前向きな好きなことは何か分からない」ということになる。
 このまま現実逃避的なゲームやインターネットなどのバーチャルの世界に没頭したり、薬物やアルコールなどの破滅的な依存行動に向かうこともあるだろう。
 長期化する引きこもりの重要な一因であると私は考えている。

 また、仕事も親が公務員などを指定し、それなりにこなして居るうちは良いが、一度何かの壁にぶつかると、非常にもろく不適応状態になってしまうことがある。「踏み止まる粘り」が欠けているのだ。
 
 それは根本的にもともと自分で納得して道を選んでいなかったからに他ならない。この意味でADHDとしては不健康であったのだ。

 私は治療の中で、他のADHDと同様に「好きなことを探して突っ走りなさい」と勧めるが、そこから先の回復に非常に大きな困難がある。治るための原動力自体が出てこない。その意味で非常に治すときに治療者が困るタイプである。

 おかしな話であるが、不器用で不適応が激しく、自己評価が非常に下がってADHDのACになっていたタイプのほうが治しやすい。
 何とかしないといけない。自分は根本的に変わらなければならないことがはっきりしているからだ。

 自己馴化したADHDは、一見表面上は世間に適応してきたがために、根本的に変わる必要を本人が認識することが難しい。だから引きこもりなどの状態で長期化するのだ。

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