2009.06.25 23:39 |  診療  |  研究  |  その他(医療関連)  |  ADHD関連  |  AC、人格障害関連  |  YANBARU  | 推薦数 : 4

「先延ばし」のうつ状態

 「やらなければならないことが分かってるのに手が付けられない」
 ADHDは「先延ばし」をしている時にうつ状態になる。意欲が低下して、不安が強く気分が不安定となり、時には希死念慮も出てくる。楽しいはずのこともまったく楽しめない。特徴的なのは、「居留守」が見られることだ。

 この「先延ばし」は自己突っ込みと関係している。ADHDは合理的で、自分にも人にも厳しい、「言っていることとやっていることが違う」ことなどには激しく突っ込む。その分自分自身にも厳しい。

 「必要なことは分かっているのに取り掛かれない自分を許せない」「何で自分がこんな不合理なことをしているか?」「他人が不合理、不条理をしている時には突っ込むのに自分は何だ?」等。

 私が診療していたケースでは、「夫の負債があることには気付いていたが確認することを先延ばししていた」「自分自身が自己破産するしかないことの先延ばし」「論文を書いたらうつが治った」「定年後の経済的な見通しをはっきり考えることの先延ばし」などいろいろあった。

 このいずれも、実際の展開で追い詰められ、問題自体をクリアして、みんなうつ状態から立ち直って行った。先延ばしを実行してしまうと、うそのように劇的に明るく回復する。

 この「先延ばし」のときに、パキシルを処方されたケースがあった。その結果は、「死にたくなった」というものだった。

 私が考える病態機序は以下のとおりだ。

 「もともと先延ばしがうつの原因だった」。
 「先延ばしによるうつ状態は、考え続けることがあまりにもストレスが大きいので、脳が合目的的に機能を落として考え続けることを回避するような意味があった(と想像する)」。
 「パキシルでうつ状態が回復し、特に認知が回復した」。
 「そのため自己突込みがさらに激しくなり、必然的に死にたくなった」 というものだ。

 抗うつ薬をどんなに調整しても治らない難治性のうつ状態、かえって悪化するようなケース、いわゆる「非定型」うつ病などの場合に、当然考慮するべき鑑別診断のひとつに、「ADHDの先延ばし」を考えるべきであると私は思う。

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