ADHDは見かけが「おばさん」のような感じになることが多い。「おばさんなんだけど少女みたいなところもある」という感じで、あまりドロドロした嫉妬とか、執着とかからは無縁のように見えることが多い。例えば女性でもADHDはギャンブラーであったりするし、男性は「子供っぽい」ということが多い。
対してアスペルガーの特に男性は演歌に出てくる女性のように情緒的で、(理屈を言うのだがよくよく見ていると感情的に行動している)、面白いのはかえってASの女性が堂々たるサムライのような見掛けになることだ。
発達障害はもともと脳の働きが多数派と根本的に違うので、性差とか、女性性男性性というのも多数派とはかなり異なる形になってももおかしくないと私は思う。
それほどたくさんのケースを見ているわけでもないけれど、性同一性障害を訴える人に「その前にADHDかな」と思われる人が多い印象もある。
自閉症的な脳の働きを「男性脳のもっと甚だしい状態」と考える学説もある。
性同一性障害を訴える人にも実は発達障害が隠れていることが多いと思われるので、その目で見て頂けると診断がつけられると思う。
また思春期の発達において、私もそうだったが、同年代の男性性や女性性の特化について行けなくて孤立することも発達障害のケアの中では重要なポイントだ。
精神疾患に見える発達障害シリーズ⑧
発達障害と解離性同一性障害
私は今解離(多重人格)を伴うADHDとASの人を診ていて、本人(その度変わる)からいろいろなことを教えてもらっている。パッと見意外に見えるが、よく考えれば解離性同一性障害にもともと発達障害があったというケースは多いだろう。
受動型ASの人は、「状況に流され続ける」という徹底的に受身の生き方なので、学校や家庭などで「状況」があまりに違うと、結果解離に近い状態になる。
ジャイアン(自己正当化型ADHD)は、都合が悪いときに「覚えていません」という現実否認の解離はあるだろう。
もうひとつ、合理的なADHDはあまりに合理的で、もしも「ぐちゃぐちゃした感情」や「理不尽な目に遭うこと」がどうしても回避できない現実の状況の中では、その合理的には受け止めようもない部分を別の人格の形で受け止めるということもありうるだろう。
こういうプロセスで、実は発達障害に解離が合併することは少なくない。私も最初は目を疑ったが、考えてみれば解離になりやすい人たちであるとも思える。逆に言えば、解離性同一性障害を見たときに、ベースに発達障害がある可能性を想像できると診療の幅が広がるだろう。
精神疾患に見える発達障害シリーズ⑦
その他のいろいろな人格障害と診断されている発達障害
私の経験では、最終的に私がADHDやASと診断した人の以前の診断名は多彩だった。
受動型ASの人が「依存性人格障害」、「回避性人格障害」、受動型ASの人が夫や彼氏など愛着の対象に対し支配的な態度をとる状況で「自己愛性人格障害」など。
ASもADHDもストレスが強くて、反応性に混乱したり暴れたりしたときに「情緒不安定性人格障害」、「失調性人格障害」など。
ADHDのACも訴えの内容や過剰反応したときの行動自体は「境界性人格障害」に表面上似ているので、表面的な診断上はつけられうる。
いずれも発達障害であるから、「もともとの性格的に」あり、ある時点から後天的に「病気」として急に始まったものではないという特徴から診断されるのだろう。
一生懸命にきちんと診断基準に当てはめて診断しようと努力されているのは分かるが、残念ながら上記のいろいろな診断名をつけても「だからこう治療すれば」という治療に役に立つことは少ない。むしろそういわれた本人や御家族が落ち込むマイナスのほうがはるかに大きい。
最初から子供のころからの自閉的な特徴(偏食、服装へのこだわりなど)や、注意欠陥、状況が分からないなどの発達障害を疑う生活歴を聴取していれば、発達障害の診断は比較的容易で、診断された後にコーチングや環境調整、周囲からの理解の道も開けてくる。
精神疾患に見える発達障害シリーズ⑥
自己愛性人格障害、境界性人格障害に見えるジャイアン
さてシリーズの中心課題とも言うべき本題に入ろう。
ジャイアン(自己正当化)型ADHDは環境と「インストール」した行動パターンにより多彩な臨床像を呈する。
その中で、暴君的なパターンを身に着けてモラハラやDVの加害者となるのが表面上自己愛性人格障害と見えるタイプだ。「ごり押しすれば何でも思い通りになる」というパターンを不幸にしてインストールしてきたジャイアンだ。
また、「周囲の(多くはASの)人を振り回して自分が努力しないで目的を達する」というパターンを身に着けたジャイアンは表面上「ボーダー(境界性人格障害)」に見えることも多い。
いずれも、「自分が低く評価されたことには情緒的に過剰反応するのに、他者を傷つけたことは全く気がつかない」という状況理解の非対称性というジャイアン独特の特徴から生じる現象だと私は考えている。
心療内科の3年間の臨床経験では、少なくとも自分で「AC」とか「境界例」とか「自己愛」と言って正直に受診する人はほとんど結果としてADHDだった。
きちんと発達障害を除外する作業を進めたとすると、もしかすると「自己愛」や「境界例」はほとんどがジャイアンと受動型ASだったということになるのではないかという実感がある。
逆に発達障害としてとらえれば、コーチングの中で改善する可能性は大いにあり、ケアできるわけで、私は臨床の場で自己愛や境界例と診断する前に発達障害を除外して欲しいとお願いしたい。
精神疾患に見える発達障害シリーズ⑤
-- ボーダー(境界性人格障害)に見える受動型AS
受動型アスペルガー症候群(以下AS)の人は、小学生のときから「外と内」が全く違う。多くのケースでは学校などの「外」ではほとんど意思表示せず、逆に「内」で愛着の対象である母親などには暴力暴言、理不尽な要求を突きつける。青年期になっても、パートナーの態度に過剰反応して、大人になっても自傷したり、過量服薬したり、説明しないで家出したりする。
この愛着の対象に対する態度は、「愛着」ゆえのASの人には当たり前のような行動である。愛着の対象は自分のすべてを知っていて当たり前であるし、逆に自分は相手のすべてを知っていなければならない。相手は自分のして欲しいことは言葉で説明しなくても分かるのが当たり前で、「何で分かっているのに意地悪をするか?」という解釈となる。
自傷や大げさな暴力などを伴う場合に、表面上「境界性人格障害」という診断になりうる。
「AC(アダルトチルドレン)」というのにも表面上非常に良く似ている。相手の問題と自分の問題の区別も出来なくなるし、「直接相手にはっきり言えない」ところも似ている。
鑑別は、「自己評価の下がり方」とこの行動が出る相手や状況を注意深く聞くことで出来る。
ASゆえの不安と、いわゆる「見捨てられ不安」は少し違う。境界例やACの場合には、明らかに自己評価が下がり、「自分を罰する」とか「自分を消す」ような自傷の意味があるのに対し、受動型ASの場合はそれほど自己評価が下がっている風には見えない。
またASの場合にははっきり「特定の相手に対してだけ」という特徴がある。
ケアも、受動型ASと診断がつくと、発達障害であるので、「周囲に理解してもらう」とか、「自分の脳の働きに向いた環境に移る」というような考え方となる。
もちろん子供のときからのこだわりなど自閉症的な特徴の聴取も役に立つが、時々自閉が軽く、「対人関係の部分だけAS」という人がいてなかなか見立てが難しい。
精神疾患に見える発達障害シリーズ④
アスペルガー症候群のPTSD(心的外傷後ストレス障害)
PTSDは大変なストレスの後で極度の不安や身体症状が続く病気だ。世間では「ストレスケア」を専門とするクリニックもある。
AS(アスペルガー症候群)の人は驚くほど記憶力が良い。特に外傷体験となるような辛い思いをした経験については「刻み付けられる」というほど忘れがたく覚えている。
またASの人はストレスがあると身体症状が出やすい。身体感覚もそうだが、「脳自体が過敏」に出来ているという感じだ。
だからASの人はPTSDになりやすい。ただし、強弁して攻撃的なまでに自分の被害を訴えたりするために、「被害者である」こと自体が疑われてしまうことがある。ひどいときは「クレームをつけてお金を取ろうとしている悪人」というレッテルを貼られることさえある。
「過敏」であるがゆえに、多数派から見たもとの刺激自体は「大したことない」ことを、相手以外の第三者に対し「さも大変な被害を受けたように大げさに訴え続け」、また他方、「ずっと落ち込んでいるかと思えば自分の好きなことは(PTSDなのに)問題なく楽しめる」という見かけが非常に理解されにくい。
多数派に見られるPTSDの場合、原因となった外傷体験については本人もなかなか抵抗があって語れないことが多いが、ASの人は堂々と能弁に語れるということも「PTSDらしくない」ところだ。
いずれにしても、鑑別は自閉症的なこだわりや、対人関係の極端な受動性などで注意深く生活歴を聞けば診断は可能だ。ASの場合にはロールシャッハテストなどの心理検査も有効だ。
精神疾患に見える発達障害シリーズ③
ジャイアンの身体症状
ジャイアン(自己正当化)型ADHDは自分に不利なことや納得できないことがあって、現実的に解決したり、打ち消したり出来ないと、多彩な身体症状が出てくることが多い。
吐き気、下痢、動悸、耳鳴り、ふらつき(浮動性のめまい)、強迫症状などが多いが、一度こういった身体症状が出てくると、この症状自体への予期不安が強くなり、「症状が出たらどうしよう」という不安で引きこもりになったり、飛行機や高速道路の恐怖症(途中で降りられない)になったり、時には「台風恐怖症」の人もいる。(台風で表に出られない時間が続くことに対する恐怖)
私は逆に考えて、こういった不可思議な神経症(不安障害)様の症状を訴える人の大きな部分がジャイアン(残りの大きな部分はAS)なのではないかと感じている。
症状が状況やストレスによって変動したりすることと、前回書いたように「強弁できる」こと、また訴えに情緒的な深刻味があまり感じられないことなどから、診断能力の高い精神科医は「身体表現性障害」と診断するだろう。
カウンセリングなどでストレスの原因を時間をかけて聞いてみると、ジャイアンの特徴は、「周囲のストレスの原因となる人がその度ごとに変動し、この前本人をひどい目に遭わせていた相手だったのが今は問題ない、という風に問題がころころ変わる」というところだ。
鑑別は難しい。ジャイアンは片づけも出来る人が多く、強迫的なので時間にも間に合う。「物が捨てられない」「他者への自分の行動に関して状況理解が著しく不足している」ことを注意深く聞くのが一番大事だ。
私は最初に「ADHD」を告知し、ADHDが理解できたところで、ジャイアンを告知する。そういう順番で説明していくと、本格的にジャイアンであることを自覚して自分で治す形に持ち込めることは案外多い。
精神疾患に見えない発達障害シリーズ①
--- うつ状態なのにうつに見えないADHD
ADHDにもうつ状態はある。意欲が低下し、自己評価が下がり、イライラして、何もやる気が起こらない。しかしADHDは「うつ病」と診断されない。なぜか?
ひとつは「強弁できる」ことにある。一生懸命に訴える。「私はうつなんです」と強く言う人は多数派の世界の見方では「うつ」とは見てくれない。いわゆるうつ病の人は、そのことを訴える元気もないからだ。この点は実はASにも共通する。
だから「抑うつ神経症」と言われることが多くなる。
もうひとつは、「うつ状態の真っ最中でも特に好きなことには熱中できたりする」ことだろう。ある年配のADHDの御婦人は、うつの真っ最中で寝込んでいるのに、好きな大正琴の練習だけはばっちり3時間集中する。「これが出来るのに」うつだと言っても多数派の世界で理解されるのは難しいのは容易に想像できる。
他にも、「ひどいうつが直ちに治ったりする」とか、いろいろな特徴があり、一般的なうつの状態とは違うので、うつにあること自体が分かってもらえない結果になる。
治療法で言えば、「好きなことが見つかったら直ちに全力で突っ走りなさい」というのがADHDのうつの直し方。刺激があるほうが回復が早い。何年待っても安静にしていては治らないことがある。治療法も正反対だ。
精神疾患に見える発達障害シリーズ②
強迫性障害に見えるADHDやAS
ASとジャイアン型ADHDにはそれぞれ特有の強迫症状や強迫的傾向があり、見かけは「強迫性障害」となるが、特にASの場合ケアとしての「認知行動療法」が逆効果になる場合がある点で注意が必要だ。
ASの強迫症状はASの自閉的なこだわりとしての場合と二次障害の場合があるが、いずれも「皮膚感覚の延長線上」という特徴があり、「身体的な違和感」「穢れた感じ」という様に体験されるため、本人が「不合理」と感じることは少ない。
対してジャイアンの強迫症状は一種「抽象的」で、ガスの元栓確認とか、「車で運転中何かを踏みつけた」とか、「全部確認しておきたい」といった強迫的不安を背景にすることが多い。こちらは本人も「不合理」と頭では分かる。
表面だけ見るとASの場合は統合失調症と間違えられやすく、ジャイアンの場合はいわゆる「強迫性障害」と診断されるだろう。
ここで重要なのは、ASの場合、厳しい行動療法が裏目に出ることがあることだ。あるASのケースは、思春期後半に受けた厳しい行動療法を「大人のいじめに遭った」と表現して、その後の人生でうまく行かないことがあるたびに、「あの時の体験のせい」という話になる。ASの場合は注意しないと「取り返しのつかないトラウマにしかならない」ことが重要だ。
鑑別はいずれも、他のASやADHDとしての認知と行動の特徴を調べれば分かる。ジャイアンは片付けは出来ることも多いが、状況認知の不器用さや思い込みの激しさは明らかにADHDなので、除外はそれほど困難ではないと思う。
ASやADHDの場合は、炭酸リチウムが有効なことが多い。
精神疾患に見える発達障害シリーズ①
--統合失調症に見える広汎性発達障害
広汎性発達障害(今は自閉症スペクトラムということが多くなった。アスペルガー症候群はこの中のIQが70以上のものを言う)の人の多くは非常に生真面目で、正直、完ぺき主義で、ずるいことができない。表情の変化に乏しく、マイペースで、対人緊張が強く社交的ではない。まずこの見かけからして「統合失調症の病前性格」および「病後の無為自閉的な特徴」と似ている。
「外を歩く人の声が自分のことを悪く言っている」「みんなが自分にいやがらせしている」というのはASの人の当たり前の訴えだ。これを統合失調症の被害妄想とどう区別できるか?
幻聴もある。詳しく聴取しないと幻聴と区別が難しい「聴覚過敏」もある。感覚全般は過敏で、触られたのを殴られたといって殴り返すこともよく見られる。
情緒的に反応しやすく、死ぬとか殺すとかの極端な言語表現もする。思い込んだら確信犯で、結果として暴力を振るうこともある。
この状態を「被害妄想などの病的体験に支配された幻覚妄想状態」と区別することは表面上難しいことも多い。
実際ASの人が統合失調症と診断されていることはすくjなくないだろう。結果としてたくさんの抗精神病薬を服用すれば、副作用でボーっとして見かけ上は本当の統合失調症の人と区別することはますます困難となるだろう。
<鑑別のポイント>
統合失調症は「発病前はごく普通」ということが多い。幼少期からのこだわりや自閉症的な諸特徴(偏食、服装など身に着けるものへのこだわり、感覚過敏、強迫症状など)を注意して聴取すればASと鑑別できる。
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