倒産減少、モラトリアム法が奏功か-期限後への懸念も
昨年1年間に全国で発生した「病院・開業医」と「老人福祉事業者」の倒産は、前年から共に減少した。中小企業の資金繰りを支援する「中小企業金融円滑化法」(モラトリアム法)が、診療所や介護事業者の倒産を防いでいるとみられる。ただ、同法はあくまで時限措置のため、期限後に再び倒産が増える懸念もある。関係者からは、これに代わる恒久的な支援を求める声も上がっている。(木下奈緒美、外川慎一朗、兼松昭夫)
帝国データバンクの集計によると、病院・開業医の昨年の倒産件数は41件で、過去最悪だった前年から11件減少した。特に診療所の倒産は11件の減で、歯科医院も3件減少した。
有料老人ホームや在宅介護サービスなど老人福祉事業者の倒産件数は17件で、前年の32件からほぼ半減。老人福祉事業者の倒産件数が前年を下回るのは、2000年の介護保険制度スタート以来、初めてのことだ。
倒産減少の背景には、09年12月に施行されたモラトリアム法の影響があるという見方が多い。
モラトリアム法は、中小規模の事業者から融資の申し出があった場合に融資条件の変更要請に応じるなど、借り手の返済負担を軽減する努力義務を金融機関に課すなどの内容だ。
資金繰りに行き詰まりやすい中小事業者を支援するため、今年3月末までの時限立法として成立した。
金融庁は昨年12月、同法の期限を1年延長すると発表したが、期限後に倒産が再び増加しだす可能性がぬぐえない。
介護業界には中小企業の事業者が多いだけに、期限切れへの懸念が強い。民間の介護サービス事業者でつくる全国介護事業者協議会の佐藤優治副理事長は、「団塊の世代が75歳以上になる25年に向けて、介護需要はますます高まる。効果的な融資制度を導入するなど、拡大志向の事業者を支える恒久的な施策が必要だ」と訴える。
■病院の倒産は200床未満が中心
病院に関しては、運営方針を固め切れていない中小病院の苦境を危惧する声がある。最近の倒産件数は06年5件、07年18件、08年7件、09年10件と推移し、昨年倒産した13件は、中小の運営主体(200床未満)が中心だ。
医療経営コンサルタントを手掛ける「MMオフィス」(横浜市)の工藤高代表は、診療報酬改定の翌年に病院の倒産が多くなる傾向に注目する。
昨年の診療報酬改定では、病状が不安定な患者を受け入れる急性期の入院医療に財源が重点配分されたが、工藤氏は「恩恵を受けたのは主に大病院で、中小病院は依然、苦戦している」と指摘する。
「今年は、在院日数が長くて看護師が少ないのに、急性期医療の提供にこだわろうとする中小病院の倒産が増えるかもしれない」
■病院消失、患者の戸惑いなおも
昨年4月に倒産した医療法人社団双樹会(さいたま市)の「岩槻脳神経外科病院」―。
建物はまだ残されているが、エントランスには落ち葉がたまり、敷地内のごみ収集所には医療関連の書籍などが無造作に積み上げられたままだ。
帝国データによると、双樹会は千葉県内の別法人の買収などをきっかけに借入金が膨らみ、資金繰りが悪化。こうした中で同病院では、入院患者の転院を進め、昨年3月に診療を休止した。
かつてはこの病院を受診していたという女性は、現在では市内の別の病院を受診している。この女性によると、当時は外来を受診する患者は多く、「(休止した時には)皆困っていた。代わりの病院を見つけられずにまだ迷っている人もいる」という。
帝国データによると、病院・開業医の倒産は、かつては放漫経営が多かったが、近年は収入減によるものが中心。双樹会のように、運営主体の再建を前提としない破産が増えているのも特徴だ。昨年は、41件のうち32件が破産によるものだった。中小病院や診療所では事業規模が小さく、再生を目指しづらいためとみられる。キャリアブレイン
意味のある制度は残さないとね!
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