離れの個室に座る木村智秋さん(右)と茂さん。左手の車いす用の木製スロープは脱着可能。奥の畳の間の段差は、腰かけて出入りしやすい45センチ=大分県由布市湯布院町の「昔噺」
診療所を併設した温泉旅館が大分県の由布院にある。女将(おかみ)は看護師で、内科医の夫が宿にほぼ常駐。病が重く旅行をあきらめたり、家族の介護で疲れ切っていたり、そんな人たちに安心して骨休めしてもらいたい――。多くの患者や家族に接してきた夫婦が長年の思いを込めて開いた。(原篤司)
JR由布院駅近く。水田や畑が広がる田園風景の中に、黒い塀に囲まれた旅館「昔噺(むかしばなし)」がある。
離れ形式の個室が3棟。中には寝室とリビング、畳敷きの居間、源泉かけ流しの内湯の温泉がある。広さは70平方メートル前後。一見、普通の高級旅館と変わりないが、玄関には手すりがつき、浴槽の端には座ったり手をかけたりするのに便利な木製の台がある。リビングの板の間と畳の間の段差は、畳の間に腰かけて立ち上がりやすいように45センチと高めに作ってある。
宿のテーマは、癒やしと心身のリセットだ。「お客さまの大半は健康な方ですが、お体が不自由な方でも快適に過ごせるように工夫しています」と女将の木村智秋(ちあき)さん(48)。
予約の時に病気やけがの状態と希望を伝えれば、食事や必要な設備についても配慮する。車いす対応のトイレや洗面台、人工肛門(こうもん)で使うパウチ(汚物入れ)の洗浄機を備えた棟もある。呼吸不全に備えた、吸入用の「在宅酸素」の装置を持ち込むことも可能だ。
夫の茂さん(42)は、県内数カ所の病院に非常勤で勤務。休みの日や夜は、1人で宿を切り盛りする智秋さんを家族として手伝う。自宅も診療所も宿の敷地内で、泊まり客に何かあれば、内装に無垢(むく)の木材を多用した温かい雰囲気の診療所も使って対応できる。
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夫婦は長年、大分県内の大規模病院に勤めていた。同じ病院で働いたこともある。茂さんは受け持ちのがん患者から「不安で旅行に行けない。先生、ついてきてくれませんか」と言われたことが度々あった。家族の看病や介護に追われ、疲れ切ってしまった人たちを何人も見てきた。「患者や、その家族たちを癒やしてあげることができないか」。2人はいつしか、そんな思いを共有していた。
智秋さんが退職、茂さんが非常勤になったことを機に、具体的に動き出した。当初は小規模なホスピス造りを考えたが、人員や設備の面で難しく、断念。「それなら楽しい思い出作りの場を提供しよう」と、旅館を思いついた。
智秋さんは、由布院と同じ大分県由布市にある温泉地・湯平温泉の旅館で「おかみ修業」を受け、茂さんは裏方として資金準備などに駆け回った。2人の子どもたちも建物のペンキ塗りなどを手伝い、2007年9月に診療所付きの温泉旅館としてオープンさせた。
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特に宣伝はしていないので、泊まり客に病弱な人が極端に多いということはないが、口コミで評判は広がり、予約が入ってくる。
開業から数カ月後、大分市の20代の女性の、結婚パーティーの会場にという依頼を受けた。女性の50代の母は末期がんで体のあちこちにチューブを通した状態だったが、お気に入りのワンピースを着て出席。普段は口に出来なかった野菜スープやアイスクリームを食べ、乾杯のビールも少し飲んで、家族を驚かせたという。宿泊の翌日、近くの教会であった式にも出て、1カ月後に亡くなった。
それから1年半。結婚したその女性が再訪した。「母の喜ぶ顔が忘れられない。思い出が詰まった部屋にまた泊まりたかった」と言ってくれた。自分たちの選択は間違いなかったと思った。
JTB広報室は「医師が常駐している宿泊施設は聞いたことがない」と、新しい試みに注目する。ツーリズムおおいた(旧・大分県観光協会)の担当者は「病弱なお客さんには心強いでしょう。病む人にも介護の人にも旅の楽しさを味わってもらえることは、癒やしを提供する宿の側にとって本望では」と感心する。 朝日
付加価値付けないと診療所やっていけなくなってきそうな?じゃないか?湯布院か、、。行きたいなー温泉!
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