一般用医薬品販売が劇的に変化―2009年重大ニュース「改正薬事法」
今年6月に施行された改正薬事法は、医師の処方せんを必要としない、いわゆる一般用医薬品の市場に大きな変化をもたらした。新たに設けられた「登録販売者」の有資格者を配置することで、薬剤師がいなくても一般用医薬品の大部分を占める第2類、第3類医薬品の販売が可能になり、大手コンビニエンスストアが相次いで試験販売をスタートさせるなど、規制緩和が進んだ。一方で、インターネットなどによる販売は、厚生労働省の「薬事法施行規則等の一部を改正する省令」により、リスクの低い第3類を除き、規制されることになった。規制の「緩和」と「強化」をめぐる今年一年の動きを振り返る。
■コンビニ業界が相次ぎ市場に参入
改正薬事法では、一般用医薬品を副作用のリスクに応じて3つに分類。安全性の上で特に注意を要する成分を含むH2ブロッカー含有薬などは「第1類医薬品」、まれに入院相当以上の健康被害を生じる可能性のある成分を含む風邪薬や解熱鎮痛剤などは「第2類医薬品」、日常生活に支障を来さない程度の身体の変調・不調が起こる恐れがある成分を含んだビタミンB・C含有保健薬などは「第3類医薬品」とした。
このうち、第2類と第3類については、1年以上の実務経験を積んだ「登録販売者」の有資格者が販売できるとした。
薬剤師よりも人件費の安い「登録販売者」に注目したのは、同業や異業種との激しい競争にさらされているコンビニ業界だった。最大手の「セブン-イレブン・ジャパン」(本社=東京都千代田区)は直営の「麹町駅前店」で、施行に合わせてテスト販売を実施しており、12月までの売り上げは「ほぼ予定通り」(広報)。現在、直営のうちテスト販売を実施しているのは同店舗のみだが、「急拡大はないにせよ、徐々に増えていくだろう」(同)という。
ただ、この「登録販売者」試験の受験資格には「専門家の指導下での1年以上の実務経験」が盛り込まれており、これが「登録販売者」の確保を難しくしている。
この問題解決のための一つの策として、異業種の参入で生き残りを懸けるドラッグストアとの業務提携を進める動きも活発化している。ローソン(本社=東京都品川区)とマツモトキヨシホールディングス(本社=千葉県松戸市)は8月24日の記者会見で、業務提携することで合意したと発表。コンビニとドラッグストア(第1類も販売)に加え、調剤薬局の機能も兼ね備えた新業態の店舗を展開していくことを明らかにした。この提携によって、ローソン側は医薬品販売のノウハウを修得できるとともに、人材交流により「登録販売者」の育成も図れることになった。新浪剛史社長は会見で、2011年度までに同社の医薬品販売店を500店舗にまで拡大する方針を明らかにした。
一方のマツモトキヨシ側の狙いは、自社商品を供給することに加え、コンビニ運営のノウハウを得ることだ。会見で松本南海雄会長は、「消費者のニーズを満たしていくには、やはり登録販売者を配置して、長時間営業ができる業態を開発する必要がある。ドラッグストアだけでは非常に難しい」と説明。競争の激化により、今後は「専門性を打ち出す必要がある」と強調した。
さらに、ドラッグストア「セイジョー」「セガミ」を展開する業界大手ココカラファインホールディングスとサークルKサンクスも12月21日の記者会見で、業務提携を行うことを発表。今後は、ドラッグストアとコンビニの機能を融合した新業態店「ヘルスケアコンビニ」(仮称)を開発するとした。
■規制が「強化」されたネット販売
一方で、2月に公布された「薬事法施行規則等の一部を改正する省令」は、一般用医薬品のインターネットなどによる販売を大幅に規制した。同省令は第3類に限ってネットなどでの販売を認め、第1類、第2類については、対面販売以外の方法による販売を禁止している。
しかし、一般用医薬品のネットを含む通信販売に対する規制強化については反対も根強く、舛添要一厚労相(当時)は2月6日の記者会見で、規制強化の賛成派、反対派を交えたメンバーが参加する「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」を設置することを表明。初会合は同24日に開かれた。
マスコミが多数押し掛けるなど、大きな注目を集めた同検討会では、予想された通り激しい議論の応酬が繰り広げられた。初会合の席上、規制強化に反対する楽天の三木谷浩史社長は、「現在、既にネット販売、通信販売で生計を立てている事業者はたくさんいる。重要な権利を省令だけで制限していいのか」と強く訴えた。一方、全国薬害被害者団体連絡協議会の増山ゆかり氏は、「薬害は薬が引き起こしていると誤解をしている人が多いが、薬害は社会構造の欠陥や情報の不開示といった人的な要素が副作用被害を深刻化させている。対面販売ということが、何よりも薬を消費する人にとって安全を担保するものと考えている」と強調。また、委員からは「議論は尽くされたものではないか。何を今議論するのか」と、検討会の開催自体を疑問視する声も上がった。
第2回会合以降も、パブリックコメントや楽天の募集した署名を「国民の声」とする規制強化反対派と、ネット販売の安全性に疑問を呈する賛成派との議論が延々と続いた。繰り返される議論に終止符を打つべく、第5回会合の席上、ついに北里大名誉教授の井村伸正座長が「報告書にまとめられないような気がしている」と述べた上で、「意見がちゃんと出ているので、全部くんで、これに対してどういう措置を取るかは行政の責任だと思うので、これから先は行政に考えてもらいたい」と突然表明した。これに対して厚労省側は、「特定の薬を6月1日以前から継続して服用している人」や「離島など薬局・薬店がない所で医薬品の入手が困難になる人」がこれまで通り、通信販売などで医薬品を購入できるよう、時限的な経過措置を盛り込んだ案を策定し、パブリックコメントの募集を実施するとした。
パブリックコメントに寄せられた意見は9824件。このうち経過措置に「賛成」の意見は42件、「反対」の意見は1146件で、「郵便等販売の規制をするべきでない」との意見が8636件に上った。しかし、同省側は第7回会合で、「パブリックコメントは数字を見るというより、原案を作る時に気付かなかった点を中心に見させてもらっている」として、結論は変わらなかった。
その後も、同省が示した案をめぐって意見交換が続けられたものの、井村座長が「コンセンサスを得るのは極めて難しい」と判断し、議論を打ち切った。井村座長は同省の担当者らに対し、「安全な医薬品を供給するということを大前提として話を進めてきたので、たとえ周りでどのような騒ぎが起ころうと、これこそ安全に供給する上では非常に重要なことで外せないと思って出した施策は、ぶれないでぜひ勇気を持って進めてほしい」と要望した。
■決着は法廷へ
規制の是非については検討会の終了後、決着の場が法廷へ移ることになった。検討会の委員だった後藤玄利氏が代表取締役を務めるケンコーコム株式会社と、有限会社ウェルネット(尾藤昌道代表取締役)は5月25日、一般用医薬品のネット販売の権利確認と「違憲・違法省令」の無効確認・取り消しを求める訴えを東京地裁に起こした。
両社は医薬品のネットなどによる販売について、それに起因する問題や事件が存在しないにもかかわらず、明確な理由がないまま一般用医薬品のネット販売そのものを禁止する規制は、「法律的な見地からみても、行き過ぎた過度の規制であって、営業の自由を保障した憲法に違反するもの。さらに、それを省令で定めること自体も違憲」と主張している。
訴訟は12月24日に結審。判決は来年3月30日に言い渡される。
キャリアブレイン
裁判の結果が気になる!
登録販売員の資格で給与がアップしないと頑張ったこと無駄になっちゃうよね?
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