経済情勢が悪化するなか、保険料を払えない低所得者が財産を差し押さえられ、生活を圧迫されかねないとの批判を招きそうだ。
所得基準が低いほど、強制徴収の対象拡大につながる。社保庁は03年度から強制徴収を強化。差し押さえ件数は同年度の50件から06、07年度は1万1千件台と急増した。60%台に低下した保険料収納率を向上させる狙いだ。
昨年4月、同庁は国民年金事業室長補佐名で強制徴収手続きに入る基準を全国の社会保険事務局に通知した。通知では、対象者を選ぶ基準として「対象者または配偶者もしくは世帯主のいずれかの所得金額(控除後)が、おおむね200万円以上」と明示。それぞれが200万円以下でも、「合計額が200万円以上である時は選定しても差し支えない」と記していた。
社保庁によると、この基準を明記した通知は06年度から毎年繰り返し出している。通知にある「所得金額」は住民税の課税所得を指し、前年の収入から必要経費などを引いて総所得を算出したうえで、配偶者控除など各種の所得控除を差し引いてはじき出す。
社保庁はこれまで、未納者を「高・中・低所得」に分け、低所得者には「申請免除の周知」、中間所得者には「強制徴収を前提とした督励」を基本姿勢とし、高所得者だけを対象に強制徴収の早期着手を実施する方針を示してきた。だが、課税所得200万円という基準では、単身者で控除前の年間所得200万円台、夫婦と子供2人の4人世帯では同300万円台でも対象となる可能性がある。社保庁の実態調査(05年)では、国民年金加入者を世帯ごとにみると控除前所得の平均額は434万円だった。
社保庁は今年度、差し押さえの執行件数について「督促状送付者の20%以上」とする目標値を全国の社保事務所に示し、強制徴収担当の職員を最低1人配置するよう指示した。今回の通知では、年金記録問題への対応に人手を割かれて、「(強制徴収が)低調な実施にとどまっている」との認識を示し、「着実な前進」を迫っている。
同庁国民年金事業室は「強制徴収を効率的、効果的に実施するには所得基準による線引きが必要と考え、保険料の免除などを除いたラインとして200万円に設定した。強制徴収は加入者自身の無年金、低年金を防ぐためにも必要。ただ、実際には所得が高い人から実施しており、200万円ぎりぎりの人の財産を差し押さえるようなことはないと思う」としている。(永田豊隆) 朝日
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