薬剤師に対する認識変革を-08年回顧と09年の展望。薬剤師認定制度認証機構・内山充代表理事
■積極的に業務分野の拡大を
―昨年の年頭には、薬剤師の社会的責任についてお話されていました。今年、薬剤師に望むことをお聞かせください。
これからは、社会の中で薬剤師という仕事に、より多くの価値観が生まれる必要性があります。これまで薬剤師は、「患者に顔が見えない」といわれたりしてきましたが、薬剤師に対して社会が期待し、「やはり薬剤師がいなければならない」と思うように、認識が変わっていかなければなりません。
―薬剤師が社会から期待される存在になるため、何が必要でしょう。
例えば、昨年に厚生労働省から出された「安心と希望の医療確保ビジョン」には、薬剤師のスキルミックスが盛り込まれました。また、日本病院薬剤師会からは、新しく求められる薬剤部の業務として、薬剤師がバイタルサインをチェックできるようにするという提案もありました。このほかにも、薬剤師に対するさまざまな要望や提言がなされていますが、これらを個々の薬剤師が人ごととせず、自分の問題と思って意識的に行動していく必要があります。それらを、「誰かがやるべきだ」と考えるのではなく、自分がやらなければならない自分の問題として考えれば、自己反省や自己診断が生まれます。そうすることで、何ができるのかが新しく見つかるのです。人ごとと考えない。これが一つ目です。
また、新しい認識を社会から得るには、何かが変わらなければなりません。どうすれば変われるのか、自分で分からなければ変わることはできません。そこで、どんどん勇気を持って分野を広げる行動をしてほしいということ。これが二つ目です。「患者の安全を守るため」「よりよい医療にするため」といった大義名分が立つならば、薬剤師の業務や実務行為の範囲を広げることに積極的になってほしいのです。医師も、もともと診断や治療が実務範囲だったところから、今ではターミナルケアや保健、公衆衛生など、かかわる範囲がどんどん広がっています。薬剤師も同じです。保健指導、学校薬剤師、在宅医療、プライマリーケアやセルフメディケーション、OTCなど、薬剤師の業務範囲は大きな広がりを見せています。作用機序や代謝機能といった面から考えられる薬剤師が、お酒やたばこなど嗜好(しこう)品への正しい考え方の普及啓発をはじめとする生活習慣病対策や、高齢者の生活改善にかかわっていくことは十分に考えられます。医師が少ないから薬剤師が代行補助して業務を拡大するという見方ではなく、薬剤師が積極的に自ら分野を広げていってほしいです。
―そうやって積極的に動くために、生涯研修が必要ということですね。
薬剤師の業務に関連する学問や技術は日々進歩しています。医療や病態について学ぶことは当然必要ですが、それにも増して薬学の基礎知識を深めるために、生涯研修が重要です。よく卒前教育と卒後教育は違うといわれたりしますが、一貫しているものです。どうやって学ぶかですが、大学で学んだ薬学の基礎学問の中で何が好きだったかを思い出して、それに関連する新しい知識を学び直すのはいい方法です。「スキナー・ボックス」で有名な米国の行動心理学者、バラス・フレデリック・スキナーは、「学んだことがすべて忘れられた時に残る『何か』が教育(成果)である」という言葉を残しています。こうして自分の中に残っていることなら、その周辺の知識はすぐに思い出して学んでいけます。自分の得意な基礎的フィールドを伸ばしてください。医療現場で医師と対等にコミュニケーションしていくには、しっかりとした薬学の知識が必要です。
基礎知識があれば、自信につながります。自信は積極的な動作となって表れ、「顔が見える薬剤師」となってきます。今年、薬剤師にはこうした姿を期待しています。そうすれば、必ず新しい価値が生まれてくるでしょう。
■薬剤師の業務、最初から最後まで「評価」
―昨今、医薬品行政のテーマはドラッグ・ラグから市販後安全対策に移りつつあります。こうした中、医薬品行政におけるレギュラトリーサイエンス(評価科学)の重要性が盛んに言われるようになってきました。先生は国内で最初にレギュラトリーサイエンスの概念を提唱された方です。
わたしは1987年、旧国立衛生試験所時代にレギュラトリーサイエンスを提唱しました。レギュラトリーサイエンスとは、新しい科学技術の進歩を、どのように人間と社会に調和させていくかというサイエンスです。原子力、化学物質、バイオテクノロジー、食品などさまざまな分野がありますが、医薬品と薬物療法について最も必要とされる概念です。
レギュラトリーサイエンスでは、開発や試験の結果を正しく評価して、人間や社会に対する影響を予測することにより、将来に対する的確な判断を行うことが重要です。薬剤師の業務は、最初から最後まで「評価」です。医薬品が人間に、つまり物が人の役に立つかどうかという的確な判断をすることが「評価」です。「評価」というと「規制」や「審査」と思われがちですが、少し違います。薬剤師は常に、医薬品の働き、性質、注意事項等の情報に基づき、患者のために最善の薬物療法が行われているかどうかの正しい評価をする必要があります。医薬品の開発から医療現場での実務行動まで、すべてに正しい評価が求められている業務であるということができます。
ところで、食品や教育や医療などさまざまな分野で、ややもすると信頼が揺らぐ昨今の日本の社会にとって、将来における信頼性を確保することは重要です。信頼性をより確実に生み出すために最近盛んにいわれているのが、第三者「評価」です。この「評価」に向かってすべての技術を結集していくことがレギュラトリーサイエンスだと思っています。「評価」についての学問が構築されていくには、これから長い時間がかかるでしょう。社会に信頼と評価が共存するようになることが大事です。
―薬剤師認定制度認証機構も「評価」を実施しています。今後、薬剤師に対する生涯研修について、どのように整備を進めていかれますか。
認証機構では、個々の薬剤師が取得する単位の質を保証することが大事だと考えています。生涯研修が自己研さんの域を脱して免許の更新条件につながる時が来れば、生涯学習が義務化されていくと思います。その時に、質のそろった生涯研修を受けていなければ、社会からの信頼が得られません。実施する研修と与えた単位について、それぞれの研修提供機関が内容と質に責任を持つ。そうした研修機関が全国に数多く広がってほしいと思います。わたしたちは研修の中身に対する評価を大事にし、優れた認定制度を今後も認証し、公表していきたいと思っています。キャリアブレイン
ややこしい制度?ばかり増えそうですね?
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