病院に重点配分も実感は乏しく-2008年重大ニュース「診療報酬改定」

 4月に実施された診療報酬改定では、本体部分をプラス0.38%と8年ぶりに引き上げる一方、薬価部分(薬価と材料価格)は逆に1.2%引き下げたため、診療報酬トータルでは0.82%の引き下げになった。今回の改定では、勤務医不足に歯止めを掛けるため、緊急課題として勤務医の負担軽減策や、産科・小児科、救急医療を重点評価することなどが決まった。必要な財源として、医科の引き上げ分を病院に全額回したほか、診療所の財源約400億円(医療費ベース)を病院に移譲した。病院医療を重視した改定になったが、当の病院側は、必ずしも恩恵を実感できずにいる。

■基本診療料、実質的な議論は09年度から
 今回の改定をめぐる中央社会保険医療協議会(中医協)による議論では、診療所の再診料を引き下げるかどうかが最大の焦点になった。中医協では支払側と診療側の意見が最後まで平行線をたどり、最終的には公益委員の判断で引き下げを見送る一方、逆に病院(200床未満)の再診料を引き上げることで決着した==。

 診療所から病院に移譲する約400億円の財源は、診療所や200床未満の病院が算定する「外来管理加算」の要件見直し(「5分要件」の追加)や、「デジタル映像化処理加算」の廃止、軽微な処置の初・再診料への包括化などによって捻出(ねんしゅつ)。これと医科部分の引き上げに伴う新しい財源とを合わせ約1500億円が、緊急課題に掲げていた勤務医、産科・小児科の重点評価に回った。

 病院(200床未満)の再診料の引き上げ幅は3点(1点は10円)。また、入院では「10対1入院基本料」を当初の1269点から1300点にまで引き上げ、よりランクの高い「7対1入院基本料」(1555点)との格差を縮小した。さらに、産科・小児科、勤務医対策の一環として、既存の「ハイリスク分娩管理加算」や「新生児入院医療管理加算」「小児入院医療管理料」などの点数を引き上げたほか、「医師事務作業補助体制加算」や「ハイリスク妊娠管理加算」を新設した。

 一方、長期療養の患者の受け入れ病院が算定する「療養病棟入院基本料」では、5つの区分ごとに定められている点数が軒並み引き下げられ==、従来の「認知機能障害加算」も廃止された。また、特殊疾患病棟や障害者施設等入院基本料では10月以降、算定対象から脳卒中の後遺症や認知症の患者が除外され、意識障害など「重度の障害者」に限定された。
 中医協が2月にまとめた改定案の答申では付帯意見として、医療機関の初・再診料や入院基本料などの「基本診療料」について水準を含め在り方を検討し、「その結果を今後の診療報酬改定に反映させること」としている。

 厚生労働省の原徳壽・保険局医療課長(当時)は、6月4日に開かれた中医協基本問題小委員会で、基本診療料やDPC、薬価の在り方が次の改定の主要項目になるとの認識を示した上で、「実質的な議論は、おそらく来年度から進めていくことになる」と説明している。





■「5分要件」に賛否両論
 今回の改定では、産科・小児科や勤務医対策と並んで救急医療への重点評価を緊急課題に位置付けた。大規模な急性期病院に有利な改定だったとする見方もあるが、医療機関の経営計画策定支援などを手掛けるMMオフィスの工藤高代表は、これらの病院が実際に受けることができた恩恵はわずかだと見る。
 急性期病院では人員配置やハード面の整備への投資が膨らみ、利益率がどうしても低くなりがちだからで、工藤氏は「次の改定では、より抜本的な見直しが必要だ」と訴える。

 診療所や中小病院の受け止め方も複雑だ。「少なくとも耳鼻科では処置の点数が上がった。『丁寧に処置をしてもこんなに低い』といった不満の声を最近、聞かなくなった」(千葉県内、耳鼻咽喉科医院)、「病院全体で一か月当たり前年比0.2%程度のプラスだった」(東京都内、一般など284床)といった声がある一方で、不満を訴える関係者も多い。

 外科・内科・整形外科などを標榜し、10対1入院基本料を算定する大脇病院(東京都世田谷区、一般82床)では、今回の改定で1か月当たり数十万円の減収になった。入院基本料や再診料が引き上げられたため、当初は微増を見込んでいたが、デジタル映像化処理加算の廃止や外来管理加算の算定要件見直しによるマイナス分が上回った。特に、外来管理加算の算定数が改定の前後で半分以下に落ち込んだのが大きかったという。
 同病院の宇佐美譲事務長は、「無理やり5分以上をかけることもできるが、患者さんの負担増につながることを考えれば、それもできない」と話している。

 厚労省によると、外来管理加算の算定要件の見直しは、診療報酬体系を患者にとって分かりやすくするのが狙い。従来は、処置や検査を伴わない患者に丁寧な説明をした場合などに再診料への上乗せが認められていたが、「医療サービスの内容が患者にとって実感しにくい」などの指摘があったという。
 そこで、「医師が実際におおむね5分を超えて直接診療を行っている場合」という算定ルールを追加し、疾病、病状や療養上の注意などに関する医師の丁寧な説明を促すことにした。
 「5分要件」をめぐっては、日本医師会が「想定以上に算定が困難になっている」と主張するなど、医療団体から検証を求める声が上がっている。その一方で、「まじめに診療すれば、5分はかかるはず」と、前向きに受け止める関係者もいる。

■障害者入院基本料の見直し「患者にも過酷」
 障害者施設等入院基本料を算定している福岡県内のある病院では、脳卒中の後遺症や認知症患者が算定対象から外れた10月以降も、障害者病棟を継続している。当初はほとんどがこれらの患者で占められていたが、10月をにらんで、難病やがん患者などの受け入れを促した。このため夏以降は、脳卒中・認知症患者の転院や転棟、退院手続きに追われた。

 これらの患者には制度変更の中身を説明し、理解を求めた。退院に当たっては、この病院が運営する介護病床や他病院の医療療養病床を紹介したが、「なぜ、うちが?」と家族らに詰め寄られる場面もあった。この病院の医事担当者は、「病院だけでなく、患者や家族にも過酷な制度変更だった」と振り返った。

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 キャリアブレイン

厚労省の見込み違い?これでは困る!

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ここから本文です。現在の位置は介護報酬改定 賃上げ「スズメの涙」

 介護職場で働く人たちの処遇改善のため、3度目の改定で初めて引き上げられる09年度からの介護報酬。厳しい経営を強いられてきた介護事業者には待望のプラス改定だが、小規模事業者からは「スズメの涙ほどしか職員の賃金に反映できない」との声も漏れる。雇用悪化を背景に、今回の報酬改定は人材獲得の一助になりそうだが、安定した人材の確保は依然、介護事業の大きな問題だ。【佐藤浩、有田浩子、山崎友記子】

 ◇「月2万円」幻 加算条件、小規模は不利に

 「アップ分はすべて給料に充てるつもりだが、常勤でも1人につき月2000~3000円になるかどうか」。東京都小平市で通所介護事業所を運営するNPO法人「地域福祉ネットワーク第2こだま」の木村重成理事長(62)は、ため息をついた。

 今回の報酬改定は衆院選をにらんだ与党の政治主導で10月30日に決まった。翌日の記者会見で、舛添要一厚生労働相が「現場で働く方の月給が2万円くらい上がるかなという感じ」と発言。「賃金2万円アップ」が政治メッセージとして一気に広がった。その後、厚労省は打ち消しに走ったが、この日の発表で「2万円アップ」は完全にカラ証文になった。

 今回は有資格者の比率や立地条件できめ細かく加算を定めている。広く薄くすることでより多くの事業者に恩恵が出るようにした。「第2こだま」のような通所介護は(1)介護福祉士が40%以上(2)勤続3年以上が30%以上--のいずれかを満たせば加算される。こだまはデイサービスが中心で最も軽い「要支援」から最も重度の「要介護5」までの高齢者三十数人が通い月200万円前後の収益がある。木村さんの試算では改定で月5万円程度の加算になる。

 スタッフは常勤4人だが、散歩などを行うこともあって手厚い配置をしており30人以上になる。5万円を全部人件費に回してもたいした額にはならない。

 加算額が大きい大手はどうか。ニチイ学館(千代田区)はプラス改定を歓迎するが「当社にどう影響するのか精査してみなければ分からない。全国にサービス提供をしていることもあり、まずは内容を分析することが最優先」と話す。改定に伴う事務作業が膨大なためだが、介護福祉士の比率や勤続年数の長さを加算条件にした今回の改定は大手の会社や社会福祉法人に有利で小規模事務所は不利とみられている。

 淑徳大総合福祉学部の結城康博准教授は「(事業者相互の)介護福祉士の争奪戦になるかもしれない」と指摘する。厚労省は専門性の高い強い事業者を育成することが介護事業の安定につながると考えており、今回の加算条件の底流にそうした政策意図もうかがえる。評論家の樋口恵子さんは「人材が逃げ出すのを防ぐカンフル剤に過ぎない。長期的視点に立った待遇改善が必要だ」と話している。

 ◇総合的視点欠く--高橋紘士・立教大大学院21世紀社会デザイン研究科教授

 改定は「加算」ばかりのびほう策だ。目先の介護職確保策に気をとられ、介護制度への総合的な視点が欠けている。これでは認知症や中重度の高齢者や家族が介護サービスが良くなったという実感を持てないのではないか。報酬アップ分を税金で賄い、保険料に反映させないのも社会保険制度として将来に禍根を残す。高齢者はますます増え給付費は確実に増える。次回の11年改定に向け、財源論も含めた政策選択について詰めた議論が必要だ。

 ◇保険料は増減二極化

 来年度から介護保険料はどう変わるのか。毎日新聞が17政令指定都市を調べたところ、京都市、名古屋市など5市が引き下げ、横浜市、浜松市など7市が引き上げる方針であることが分かった。札幌市など3市は現在とほぼ同水準で、川崎、千葉の2市は「検討中」としている。06~08年度(第3期)は、全政令市で保険料が引き上げられたが、今回は二極化している。

 介護保険料は報酬改定に合わせ3年ごとに見直され、今回見直し対象となるのは来年度からの3年間(第4期)。引き下げを決めた京都市は、赤字償還を終えたことや06年度導入の介護予防、地域密着型サービスが見込んだほど伸びなかったことから、積み立てた剰余金(介護保険給付費準備基金)32億円を引き下げ財源に充てる。65歳以上の高齢者1人当たりで月200~300円の引き下げになる予定だ。今年4月から75歳以上を対象とした後期高齢者医療制度も始まり「これ以上保険料は上げられない」と市長が政治判断した。

 一方、横浜市は要介護認定者数も介護サービスもさらに伸びる見通しで、11月に現行より750円高い4900円程度との見込みを示した。報酬改定や剰余金の活用を含んでいないが、引き上げは避けられない見通し。

 第3期の65歳以上の平均保険料は4090円。厚労省の中間推計では、第4期は180円アップし4270円となる。

毎日新聞

耐える時?

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薬事法の改正…大衆薬の販売資格 薬剤師以外にも

 風邪薬や胃腸薬などの大衆薬(一般用医薬品)を販売する仕組みが来年6月から大きく変わります。薬事法の改正によるものです。副作用など薬の特性に応じて、情報提供にメリハリをつけるほか、薬剤師の代わりに一部の薬を販売する専門資格として、「登録販売者」が新設されました。

 大衆薬は医師の処方せんが必要ありません。しかし、処方せんの必要な医療用医薬品と同様に、薬剤師のいる薬局やドラッグストアでしか販売できませんでした。「もっと自由に販売できるようにするべきだ」と、規制緩和を求める声が高まったこともあり、2006年、薬事法が改正されました。

 改正の柱は、大衆薬を副作用の度合いに応じて、安全性上、特に注意が必要な第1類医薬品、注意が必要な第2類医薬品、それ以外の第3類医薬品に分けたことです。薬の外箱に分類が表示されます。

 その上で、第2類と第3類を販売することができる登録販売者という資格が創設されました。実務経験などの要件を満たし、都道府県ごとに実施される試験に合格すれば資格を取得できます。薬剤師がいないスーパーやコンビニ、家電量販店でも、この資格を持つ店員がいれば、ほとんどの大衆薬を売ることができるようになります。

 その一方で、第1類については、薬剤師が文書で説明することを義務づけるなど、規制を強化しました。これまでは、どの薬も店内の棚から自由に取ることができましたが、第1類は薬剤師が確実にかかわれるよう、カウンター内に置かれます。店内に陳列される薬のうち、第1類は空箱などになり、薬剤師に症状を相談し、情報提供を受けた上で買うのです。

 もちろん、第2類も専門家による説明が努力義務になっていますし、第3類も相談に応じる義務があります。薬剤師なのか、登録販売者なのかは、着衣や名札によって分かるようにします。

 自分の健康を自分で守るには、何でも医師にお任せではなく、大衆薬を賢く活用することも必要です。消費者は、新しい制度を正しく理解し、店側は、薬の利点や副作用を的確に情報提供する体制を築くべきです。(阿部文彦)

読売新聞)一般の人は重い病気か軽い病気かわかんないんだけど?

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救急外来「軽症者に加算金」拡大、夜間・休日医師の負担軽減

 緊急性がないのに夜間・休日に救急外来を受診する軽症患者から、全額自費の時間外加算金を徴収することを地方厚生局に届け出ている病院が、123施設に上ることが読売新聞の調査で分かった。

 制度は1992年に始まったが、最近5年間で76施設も増加。このうち最も多かった理由は軽症患者の抑制で、44施設と6割近くに上る。

 医師不足などで患者の「たらい回し」が相次いでいるほか、軽症患者が安易に病院に行く「コンビニ受診」が問題になっているが、勤務医の負担を軽減するための“自衛策”が広まりつつある。

 時間外加算金は、例外として保険適用外が認められた制度。医療機関は、管轄の地方厚生局に届け出れば、緊急性がないと判断した患者から徴収できる。

 本社が12月1日時点で調べた。過去5年間に届け出た病院の設定額は8400円~300円。7施設は徴収を始めていない。

 夜間・休日の軽症患者の受け皿としては、地域の夜間診療所や当番医がある。時間外加算金を徴収している複数の病院によると、軽症患者が「病院の方が安心でき、夜だと待ち時間が短い」「当番医は毎日変わるので、分かりにくい」などとして、病院に来るという。

 最高額8400円を徴収しているのは、山形大医学部付属病院(山形市)。今年5月には840人いた時間外の患者は、徴収を始めた6月以降、毎月600人台に減少。一方で、このうち入院した重症患者は、5月の119人から128~156人と増加した。

 同大は「金額は、大学病院としての役割、医師の人件費などを勘案した。入院患者が増えたのは、医師に余力が生まれたからではないか」(医事課)としている。

 静岡県の志太榛原(しだはいばら)地域では、焼津市立総合病院など4自治体病院が、足並みをそろえて今年4~6月にかけて導入。いずれの病院も時間外の受診者数が前年比で1~3割減った。

 [解説]「コンビニ受診」に歯止め

 患者にすれば時間外加算金など、ない方がいい。それでも徴収する救急病院が急増している背景には、軽症にもかかわらず、夜間・休日に気軽に来院する“コンビニ受診”が、勤務医を疲弊させている事情がある。

 軽症患者が増えると、重症患者への診療に支障をきたしかねない。保険証一枚で自由に診療先を選べる「フリーアクセス」が認められているとはいえ、病院での専門的な治療を求めようとする軽症患者に、病院側が待ったをかけた格好だ。

 徴収を始めた病院では、時間外の患者が減る一方、重症患者が増加するなど、効果が出ている。目立ったトラブルもないが、緊急性や症状の軽重など徴収の条件を巡って、一部の患者から、戸惑いや不満の声も出ているという。

 過剰な受診抑制につながりかねない懸念もある。埼玉医大総合医療センター(埼玉県川越市)は今年6月からの徴収を昨秋に公表したところ、制度が始まったと勘違いし、受診を控えていた軽症者の症状が悪化したケースもあり、現在も徴収を保留している。

 兵庫県立柏原病院(兵庫県丹波市)では、周辺の住民グループが地域でコンビニ受診を控えるよう呼びかけ、時間外の軽症患者が減った。医療崩壊に歯止めをかけるには、患者側も「医療は公共財」と認識し、モラルある行動をとることが求められる。(地方部 菅野薫)

 時間外加算金 医療機関が金額を設定し、表示した診療時間以外(深夜、休日など)に受診した患者から徴収できる。掲示や窓口で事前に患者に知らせ、同意を得る必要がある。救急搬送のような緊急性が高いケースや、地方厚生局に申請のない医療機関では、通常の保険適用の時間外料金(初診時850~4800円)がかかり、患者は3割負担。

読売新聞)病院の経営がこれでうまくいけるんですか?

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