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多発性硬化症の治らない原因を特定―慶應大グループ

 神経難病・多発性硬化症に関する再生医薬開発研究に取り組んでいる慶應大医学部神経内科、解剖学教室の研究グループ(鈴木則宏教授・相磯貞和教授・中原仁講師)は、多発性硬化症で神経機能を支える髄鞘の自己再生能力が低下する原因を特定したと発表した。世界初の成果で、新たな髄鞘再生医薬の開発が期待されるという。成果は、国際医学誌「The Journal of Clinical Investigation」誌2009年1月号に掲載された。

 多発性硬化症は、若年女性に多くみられる原因不明の神経疾患で、世界で約250万人、日本では1万2000人の患者がいる。脳、脊髄、視神経(中枢神経系)に病変が多発性に出現し、四肢まひや失明などさまざまな神経症状が一度に現れる。多くの患者が発病後、10年ほどで車いすや寝たきりの生活を余儀なくされる。

 多発性硬化症では、神経機能を支える髄鞘が20歳代後半から30歳頃を起点に、脳や脊髄などで多発性に崩壊(脱髄)し、神経機能に支障をきたす。その後は、平均して半年から2年に1度髄鞘の崩壊が起こり、神経機能は進行性に失われる。

 中枢神経系で髄鞘を形成しているのは、「オリゴデンドロサイト」と呼ばれる細胞。多発性硬化症の病変では、脱髄に伴ってオリゴデンドロサイトが死滅する。しかし、脱髄病変後も「未熟なオリゴデンドロサイト」である「オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)」は多数残っている。本来、OPCは能動的にオリゴデンドロサイトへ成長し、髄鞘をほぼ完全に修復する能力を持っている。多発性硬化症では、OPCが残っているにもかかわらず、なぜ能動的にオリゴデンドロサイトへ成長することもなく、また髄鞘を修復できないのかは解明されていなかった。

 OPCがオリゴデンドロサイトへ成長するには、その成長にかかわるDNA上の遺伝子情報を読み出すことが必要になる。DNA上の遺伝子情報を読み出す役割を担うのは転写因子と呼ばれるタンパク質群で、OPCがオリゴデンドロサイトへ成長する際に使用される転写因子は、NICDと呼ばれるタンパク質だ。
 OPCが脱髄した神経軸索を感知すると、OPC内部にNICDが出現する。NICDはOPC内部で、DNAが保管されている核の内部に入り、DNA上の情報を読み出すが、このためにはImportinと呼ばれる運搬タンパク質に乗って、核膜に空いた小さなゲート(核孔)を通る必要がある。
 研究ではまず、多発性硬化症脳を細かく解析。髄鞘の自然再生が成功したわずかな例外的病変のOPCでは、NICDが核内に移動して遺伝子情報の読み出しに成功しているのに対し、再生に失敗した大多数の病変では、NICDが核内に入れず、細胞質内に残っていることが分かった。
 再生に失敗したOPCでは、NICDがImportinに搭載されるまでは成功していたものの、Importinの運搬能力を阻害するTIP30分子が異常に増加、結果的にNICDが核内へ移送されず、オリゴデンドロサイトへの成長や髄鞘再生に必要な遺伝子情報を読み出せなくなっていた。
 こうした研究の結果、多発性硬化症の脳において病変部位に髄鞘再生を妨げるTIP30分子が過剰に発現していることが、髄鞘の再生能力が乏しい原因と特定した。

 今後、研究成果は発症により傷ついた髄鞘を修復し後遺症を回復させる「再生治療」に生かすことが期待される。

キャリアブレイン

私の患者にも多発性硬化症の患者診てます。困ってます。

 

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