師走の慌ただしさを増した金曜日の午後11時半、酒に酔って転倒した60代の男性が、東京都墨田区の白鬚橋(しらひげばし)病院に運ばれてきた。男性は頭から出血しており、CT(コンピューター断層撮影)検査で、脳などの様子を調べることになった。
「30代男性、めいてい状態で自転車から転倒」。その間に、別の救急車からの要請を受け入れ、さらに約10分後にも、飲酒後に意識を失った別の救急患者を引き受けた。
25分間に救急車が3台。看護師は「いつもこんな感じ。特に週末は酒に酔った患者が多い」と事もなげに話す。
次々に到着する急患の診察に追われる2人の当直医と看護師。60代の男性は検査の結果、脳に異常はなく、傷口の処置をするまで、約1時間、廊下で待つことになった。
都内で約330ある救急病院のひとつである同病院は、都内でも指折りの年間約6800台の救急車を受け入れる。この日午後5時から翌朝9時までに受け入れた救急車は15台。そのほかに、徒歩などで訪れる患者もいる。
東京で昨年救急搬送された患者は約62万人。10年間で約3割増えた。一方、救急病院は10年前より2割減った。人口当たりの救急病院の数では、全国の都道府県で43番目の少なさだ。
都の救急医療対策協議会の委員を務める院長の石原哲(とおる)さんは「医師不足のため、当直医の確保が難しくなった。小規模病院を中心に、救急をやめる病院が相次いでいる」と指摘する。
同区内でもここ数年で5病院が救急から撤退。残った病院の負担が重くなっている。石原さんは「救急病院はどこもぎりぎりの状態でやっている」と話す。
総務省消防庁によると昨年、全国で救急搬送された重症患者約41万人のうち、受け入れ拒否が1回以上あったのは約6万件。「空きベッドがない」「処置中」などが主な理由だ。
同病院は、救急車は原則断らない。たとえ空きベッドがなくても、とりあえず受け、応急治療をしたうえで入院が必要ならば他の病院へ転送する。「地域の救急病院として、地域の救急患者には責任を持つ」との姿勢からだ。
たらい回しをなくすため、まず、すべての患者を受け入れるER(救急治療室)を看板に掲げた病院も全国で増えつつある。だが、救急受け入れ態勢が万全な病院はそう多くない。信頼の医療構築へ、模索の続く救急現場を取材した。
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