糖尿病性網膜症にはカンデサルタンを「選択肢として考えるべき」
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| 提供:Medscape
| 試験の著者らと解説委員によれば、糖尿病性網膜症を扱った3つのDIRECT試験の主要エンドポイントはいずれも満たされていないが、アンギオテンシン受容体遮断薬のカンデサルタンがこの条件の一部の患者への治療選択肢として考えることができる Lisa Nainggolan Medscape Medical News | |
【9月26日】(英国ロンドンとデンマーク、オーデンセ)アンギオテンシン受容体遮断薬(ARB)であるカンデサルタン(商品名Atacand、AstraZeneca社/Takeda Pharmaceutical社)の糖尿病性網膜症の予防と治療における意義を検証する3つの最新試験が『the Lancet』2008年9月25日号オンライン版に2本の論文として発表された[1,2]。結果は揃っていないが、他に治療選択肢がほとんどなく、早期の網膜症に薬物で何らかの改善を示せた試験はこれが初めてでもあることから、この適応に対してカンデサルタンは使用可能であると研究グループは結論づけている。 特に、今回の結果によればカンデサルタンには、まだ網膜症を発現していない1型糖尿病患者での網膜症発生率を低減し、すでに網膜症を発現している2型糖尿病患者の状態を改善する働きがあると考えられる。 しかし、Dr Paul Mitchell(シドニー大学、オーストラリア)とDr Tien Y Wong(メルボルン大学、オーストラリア)が関連コメントとして、次のように指摘している[3]。「カンデサルタンには1型と2型の両方の糖尿病の網膜症を低減する効果が全体としてあるような印象を受けるが、この2つの試験はいずれも、あらかじめ定めたエンドポイントに達していなかった。」 とはいえ、Mitchell、Wong両博士はこの2つの新論文を「決定的(pivotal)」としながら、カンデサルタンが1型糖尿病で網膜症の発現を低減し、2型糖尿病でベネフィットを見せたという「糖尿病性網膜症カンデサルタン試験(DIRECT)」の結論は「若干の注意を要するが、正当だと認められる」と述べている。 1型糖尿病での網膜症の進行に対してはARBは効果なし 今回の2つの論文で報告された3つの試験でDIRECTが構成されている。DIRECTは、世界302カ所で1型または2型糖尿病患者5231例をランダム化し、毎日のプラセボまたはカンデサルタン32 mgのいずれかに割付け、4年間追跡した。 1つ目の論文では、Dr Nish Chaturvedi(インペリアル・カレッジNHSトラスト、英国ロンドン)を始めとするDIRECT Programme研究グループが、試験開始時において血圧正常・アルブミン尿正常で網膜症がない1型糖尿(DIRECT-Prevent 1、n = 1421)と、同様の1型で網膜症がすでにある糖尿病(DIRECT-Protect 1、n = 1905)に対するカンデサルタンの効果を検証した。最初の1カ月間は1日あたりカンデサルタン16 mgまたはプラセボを用い、その後はARBの量を倍増して32 mgにした。 主要エンドポイントは網膜症の発現と進行である。それぞれの定義は、「糖尿病性網膜症早期治療試験(ETDRS)」尺度がそれぞれ2段階以上または3段階以上増えた場合とした。 DIRECT-Prevent 1試験で主要エンドポイントである網膜症の発現があったのは、カンデサルタン群のうち178例(25%)と、プラセボ群のうち217例(31%)であり、差は有意でなかった(ハザード比は0.82、p=0.0508)。 しかし、Chaturvedi博士らによると、ETDRS尺度での3段階以上の増加に関してポストホック分析を行うと、HRは0.65(p=0.0034)になり、これは試験開始時の特性について補正すると減弱しながらも有意性が保たれた(0.71, p=0.046)。 DIRECT-Protect 1試験で主要エンドポイントである網膜症の進行があったのは、カンデサルタンを使用した群は127例(13%)であり、プラセボ群は124例(13%)であった(有意性なし)。 「カンデサルタンで網膜症の発生率が減少したが、網膜症の進行に対しては有効性が認められなかった」と研究グループは結論づけている。 Chaturvedi博士はheartwireに次のように語った。「我々が行ったすべての試験でもっとも大切なことは、網膜症に対して効果があったことだ。現在網膜症を有していないが血糖管理が不良な1型糖尿病患者には、血糖管理不良は明白に網膜症の最大のリスク因子のひとつであることから、カンデサルタンは有意義だと我々は思っている。こうした患者には網膜症発現のリスクを減らすために、カンデサルタンの使用が考慮されてもよい。」 しかし博士は、「我々の試験では1型糖尿病ですでに網膜症が現れている患者へのベネフィットは示されなかったので、そうした患者にカンデサルタンの使用を推奨することはできない」と強調した。 2型糖尿病での退縮はほとんどが早期患者 2つ目の論文は3番目の試験に基づいている。この試験は、Dr Anne Katrin Sj遵klie(オーデンセ大学病院、デンマーク)らDIRECT Programme 研究グループが、2型糖尿病(DIRECT-Protect 2)を対象にして行った。この研究グループは、アルブミン尿正常で血圧が正常ないし軽度の低血圧である2型糖尿病患者1905例をランダム化して、前述のようにカンデサルタン32 mgまたはプラセボを使用して4年間追跡し、カンデサルタンによって網膜症の進行が遅くなる、退縮が起こるかどうかを検証した。 網膜症の進行が主要エンドポイントであり、退縮が二次エンドポイントである。カンデサルタンによって網膜症の進行が13%小さくなったが、この結果は有意ではなかった(p=0.20)。 治療群は退縮が34%増加した(HRは1.34、p=0.009)。しかし、試験開始時のリスク因子や、治験中での血圧の変化で補正してもこれは減弱しなった。 ただし、退縮の効果が見られたのは早期の網膜症の患者にのみであり、編集委員はこれを「もっとも重要なこと」として強調した。 試験の終了時まででの網膜症の重症度が減る方向の変化はすべてカンデサルタン群で見られたものであり(オッズ比は1.17、p=0.003)、それを基に研究グループは、「2型糖尿病で軽度から中等度の網膜症がある患者の網膜症は、カンデサルタン治療によって改善されるのかもしれない」と結論で述べている。 カンデサルタンは数少ない選択肢のひとつ Sj遵klie博士はheartwireに、「2型糖尿病では、失明の危険がある網膜症がもっとも大きな問題である。なぜなら、現行の治療選択肢は後期の段階ではほとんど役に立たないからだ」と語っている。 「DIRECT-Protect 2試験は、眼合併症による損傷が不可逆的なものになる前の比較的早期での薬物治療で網膜症が改善することを示した初めての研究である。2型糖尿病患者の大部分が高血圧も有しているので、網膜症の改善というベネフィットがさらに得られ、失明に至る眼合併症のリスクが減る可能性のあるこうした患者にはカンデサルタンを使用しようと思う。また、この治療が忍容性に優れていることを我々は示した。」 DIRECT-Protect 2試験の論文の共著者でもあるChaturvedi博士も同意見だ。「カンデサルタンは、すでに網膜症が発現している2型糖尿病に使うことが考えられる。その他にも、高血圧になった患者に対しても使える。もし降圧薬を選択しなければならないのであれば、その量を選択することができる。しかし、網膜症を逆転させるというベネフィットがさらにカンデサルタンにあるのなら、カンデサルタンの使用を考える価値がある。」 「さもなくば、増殖抑制薬による硝子体内治療(あまり勧められない)や、もっと後での破壊的なレーザー治療が必要になるほど患者の網膜症が進行するのを待つしかなくなる」と博士は言い添えた。 「(2型糖尿病で)網膜症がすでにある患者と、1型糖尿病で網膜症リスクがありその管理が困難な患者では『選択肢として考慮する』べきだ」と博士は強調している。 血糖と血圧以外の過程も網膜症に寄与する Chaturvedi博士の説明によると、その他のARBで、糖尿病性網膜症に何らかの有効性が示されたものはひとつもなく、ACE阻害薬も、「未発表の小規模試験1例」を例外として、どれも有効性がない。 1型糖尿病におけるリシノプリルを検証したEUCLID試験(DIRECT program全体のきっかけとなった)では、2年間の網膜症の進行に対してリシノプリルが有効性があることが示されたが、博士によれば、対象はすでに高血圧を有している1型糖尿病患者であり、しかも二次分析によるものなので「この結果に基づいて治療の推奨を行うことはできない。」しかもDIRECT試験の患者は血圧正常であったので、(EUCLID試験とDIRECT試験を)直接に比較することはできないと博士は考えている。 Mitchell、Wong両博士はコメント記事の中で、EUCLID試験は試験開始時の血糖値に治療群間で差があるという限界もあると述べている。また、それ以外の2つの試験であるUKPDS試験とABCD試験は、両博士によれば、糖尿病性網膜症に関してACE阻害薬がその他の降圧薬よりも優位であるという報告をしていない。またADVANCE試験は、ペリンドプリル?インダパミドの併用で血圧をさらに降下させると、プラセボよりも糖尿病性網膜症にベネフィットがあるという報告がない。 ADVANCE試験のその他の結果からは、血糖と血圧以外の過程が糖尿病性腎症の発現に関わっている可能性が考えられると両博士は指摘し、「糖尿病性腎症のリスクをさらに減らすためには、標的を特定のものに絞り込む必要があるかもしれない」と述べている。 DIRECT試験は、AstraZeneca社とTakeda社の合同出資で行われた。Chaturvedi博士、Sj遵klie博士、そのほかの共著者は、AstraZeneca社とTakeda社から科学プレゼンテーションの謝礼金を受け取っている。Mitchell博士は、Novartis社、Pfizer社、Allergan社、Solvay社の諮問委員を務めており、各社から謝礼、旅費・宿泊費の提供を受けている。Mitchell博士はさらに、上記各社およびLilly社がスポンサーとなった臨床試験の支援金の提供を受けている。Wong博士は、Novartis社、Pfizer社、Allergan社の諮問委員を務め、各社から謝礼および旅費・宿泊費の提供を受けている。 1. Chaturvedi N, Porta M, Klein R, et al. Effect of candesartan on prevention (DIRECT-Prevent 1) and progression (DIRECT-Protect 1) of retinopathy in type 1 diabetes: randomized, placebo-controlled trials. Lancet 2008; DOI:10.1016/SO140-6736(08)61412-9. www.thelancet.comで入手可能。 2. Sj遵klie AK, Klein R, Porta M, et al. Effect of candesartan on progression and regression of retinopathy in type 2 diabetes (DIRECT-Protect 2): a randomized, placebo-controlled trial. Lancet 2008; DOI:10.1016/SO140-6736(08)61411-7. www.thelancet.comで入手可能。 3. Mitchell P and Wong TY. DIRECT new treatments for diabetic retinopathy. Lancet 2008; DOI:10.1016/SO140-6736(08)61413-0. Available at: www.thelancet.comMitchell P and Wong TY. DIRECT new treatments for diabetic retinopathy. Lancet 2008; DOI:10.1016/SO140-6736(08)61413-0. www.thelancet.comで入手可能。 どうなんですか? | | | |
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