医療への幻想がある 医師で作家の久坂部羊氏 インタビュー企画「どうする高齢者医療」
―高齢者医療をどう思うか。
「無駄が多い。しなくてもよい検査や治療が多い。医者はそうしないと、もうからないからだ。患者は医療への幻想や過剰な期待から医療を受けるが、効果が出ないと後悔している」
「治ると思い、検査を重ねて、時間やお金をかけ、ストレスをためる。医師から『ここが悪いことが分かった。だが、治らない』と言われる。それなら『最初から検査しないでもよい』と一言、言ってくれたらよかったという現実がある」
―医療機関側は。
「医療機関も分かっていながら、現行の診療報酬が出来高払いの中では、そこで終わると収入にならない。経営のため検査や治療で医療を引っ張らないとだめだという状況がある。実態を見直して適正化すれば高齢者の医療費は下がると思う」
―ふさわしい医療は。
「本来、必要なのは無理な延命や正常値に近づけるということではなくて安心感。どんどん検査するよりも、じっくり話を聞いて説明してあげること。在宅医療では患者さんと接する時間が長く、いろいろ心配を聞くが、大抵説明で終わる」
「説明がないと、不安から病院に行き、念のため検査しましょう、と言われて見つけなくてもいい異常が見つかり、医療から逃れられなくなって、医療費が膨らむスパイラルに入ってしまう」
―望ましい形は。
「誤解されると困るが、高齢者を切り捨てるつもりはない。若い世代は残された年数、家庭の中での立場を考えると濃厚医療が必要。残された時間が長いからつらい検査や、リスクがあっても試す価値がある」
「しかし高齢者は10年先、30年先を考えることは非現実的。残された短い時間を検査で費やしてしまってよいのか。人生観や思いはさまざまだ。病気も治したいけど、ゆっくり孫と遊びたい、思い出の場所に行きたいといった思いもある」
―高齢者医療は違う。
「医師は往々にして、病気を治すことに一切の時間を使いなさいというが、これが本当に妥当かどうか。高齢者への医療は違ってしかるべきだ」
―なぜ医療に期待。
「医療提供者が正直に医療の無力さを伝えないからだ。医療を提供する者にそれを認めるのはつらい。老いに対して医療は“無力”ということはタブーだ。老いに対してもこんなことができると言う方が医療を高める効果があるので、そう言ってしまう。患者さんも素直に期待する」
―具体的には。
「実際に認知症がどれだけ改善できているか、脳卒中で手足がまひした人がリハビリでどれだけ効果があるか正直に検証する必要がある。リハビリをやれば良くなると思っている人は多いが、心の支えにしかなっていないケースも多い。医療幻想が広まりすぎている」
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くさかべ・よう 55年生まれ。医師・作家。大阪大医学部卒。著書に「廃用身」「無痛」など。執筆とともに在宅医療に従事。
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▽出来高払いと包括払い
出来高払いと包括払い 医療機関に支払われる診療報酬の基本となっているのが出来高払い制度で、処置や検査など一つ一つの行為に単価を設定し、その総額を支払う方式。包括払いは入院医療などを対象に病気の種類と診療内容により、例えば1日当たりの額が定められ、その枠内で支払う方式。出来高は医療行為を多く行えばそれだけ収入が得られるが、過剰診療につながるとされる。包括は、医療機関側の持ち出しになる可能性があるため、必要な医療が行われなくなるとの指摘がある。
共同通信社
本音と建前
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