国立身体障害者リハビリテーションセンター病院(埼玉県所沢市)の医療機器選定を巡る汚職事件で、贈賄側の医療機器販売会社「ヤマト樹脂光学」(東京都千代田区、破産)が、ほかの公立病院に対しても、現金や商品券を贈る受注工作を繰り広げていたことがわかった。
指示していたのは「ワンマン経営者」として知られる社長の久保村広子容疑者(74)(贈賄容疑で逮捕)。元社員などの証言から、その実態を追った。
「現金や商品券を贈って仕事を取ってくるのがヤマトのやり方。すべて社長の指示だった」。4年ほど前に同社を辞めた元社員の男性が受注工作の詳細を明らかにした。
地方の公立病院への医療機器の売り込みを巡って、社長室に呼び出されたのは約5年前。久保村容疑者から病院幹部と引き合わせるよう指示され、側近の女性役員から数万円分の商品券が入った封筒とようかんを渡された。とりあえず一人で病院に出向いて医療機器の発注を担当する幹部に面会し、「ごあいさつです」と封筒とようかんが入った紙袋を手渡した。
1週間後、再び商品券とケーキを持って訪問すると、この幹部は何事もなかったかのように再び受け取った。「突き返されなかったということは、工作がほぼ成功したこと」。元社員はそう確信した。後日、久保村容疑者が、この幹部を東京・日本橋の料亭で接待することに成功したとも聞いた。
同社は結局、この病院から1億円以上の機器を受注したという。「今となって思い返すと異常だったが、当時は『この業界はこんなもんだ』と思っていた」と元社員は振り返る。
別の同社関係者によると、全国の複数の病院幹部などに歳暮や中元を贈る際、メロンやジャガイモの箱に現金を忍ばせることもあったという。
同社は1966年に設立されたコンタクトレンズ製造販売の老舗。医療機器販売にも手を広げ、取引先は東北、大阪、鳥取の各大学や、滋賀医大の付属病院など全国に及んだ。久保村容疑者は都内の私大職員などを経て、73年に39歳でヤマト社の社長に就任。同社関係者によると、銀行との融資交渉に自ら臨むなどトップダウン経営を貫く一方、意に沿わない社員を解雇するなどワンマンぶりは有名で、業界内では「久保村商店」とも呼ばれた。
しかし、昨年8月、東北大病院への眼科検査装置などの納入で、予定価格と同額で落札する不自然な入札が相次いでいたことが発覚。同11月には、医療機器を納入する防衛省の調達担当者を中国旅行に招待していたことが明らかになった。今年7月、コンタクトレンズの消毒液の使用期限を書き換えて出荷していたことも判明。信用を急速に失い、今月11日に破産開始が決定した。
警視庁は、久保村容疑者から約60万円を受け取ったとして収賄容疑で逮捕したリハビリテーションセンター病院元部長、簗島(やなしま)謙次容疑者(63)との癒着だけでなく、同社が各地で展開してきた受注工作についても解明を急いでいる。
(竹下誠)
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