大学化するということ―特集・看護基礎教育
看護基礎教育を大学化するには、どのような方策が考えられるのだろうか―。日本看護協会は、養成所が大学に移行することを念頭に置いて、その方策を支援するとしている。しかし、大学(学部、学科)の開設とは、簡単にできるものなのだろうか。(吉澤 理)
現在ある看護師養成所は、文部科学省・厚生労働省令の「保健師助産師看護師学校養成所指定規則」にのっとって運営されている。保健師助産師看護師法により、看護師国家試験を受験するには、文部科学相か厚生労働相の指定を受けた養成所、学校を卒業しなければならず、その指定の基準を定めているのがこの指定規則だからだ。
3年課程の場合の基準は、一クラスの人数が40人以下で、修業年限は3年以上。看護師資格を持つ専任教員が8人以上で、そのうち1人が教務主任となる。カリキュラムは合わせて97単位で、必要な数の普通教室、専用の実習室などが要る。管理・運営については「管理及び維持経営の方法が確実であること」とあるだけだ。
■大学設置基準とは
では、養成所が大学に移行するとはどういうことなのだろう。基本的には、大学あるいは学部、学科を新たに開設するということになる。その際、基準になるのが文科省令の「大学設置基準」。看護系に限らず、すべての大学に共通の基準で、当然ながら看護系もこの基準に合わせなければならない。しかも、そのハードルはかなり高いのだ。
例えば、施設の基準。校地の面積は、収容定員上の学生一人当たり10平方メートルが必要になる。また、校舎の面積も、定められている。そのほか、運動場、図書館、学長室、会議室、医務室、学生自習室、学生控室、研究室、教室を必ず置かなければならない。図書館には専任の職員を置かなければならない。研究室は、専任の教員に対しては必ず備えなければならない。
指定規則には施設基準がほとんどないため、既存の養成所がこれらの基準を満たしていることはまずないだろう。
■教授は基本的に博士
教員に関する基準もかなり厳しい。専任教員の最低数は12人。指定規則の8人の1.5倍だ。しかも、教授、准教授、講師、助教、助手それぞれに、資格が定められている。
例えば、教授になるには以下の条件をクリアすることが必要である。
▽博士の学位を有し、研究上の業績を有する者
▽研究上の業績が前号の者に準ずると認められる者
▽専門職学位を有し、当該専門職学位の専攻分野に関する実務上の業績を有する者
▽大学において教授、准教授又は専任の講師の経歴のある者
▽専攻分野について、特に優れた知識及び経験を有すると認められる者
准教授でも、教授の資格があるか、▽大学において助教又はこれに準ずる職員としての経歴のある者▽修士の学位又は専門職学位を有する者▽研究所、試験所、調査所等に在職し、研究上の業績を有する者▽専攻分野について、優れた知識及び経験を有すると認められる者―のいずれかでなければなれない。
現在の養成所の教員の中で、教授の資格を有する人はいったいどのくらいいるのだろうか。大学への移行といっても、教員がそのままスライドすることは、ほぼ不可能だろう。
しかも、看護系大学の場合、併せて指定規則もクリアしなければならない。看護師免許を持った専任教員を8人以上置かなければならない。教員の半分は医師、というわけにはいかないのだ。
■一本化には30-40年かかる
1992年、「看護師等の人材確保の促進に関する法律」が制定されたのをきっかけに、看護系大学の数は年々かなりのペースで増加している。現在は166校。それでも、看護師の養成数全体に占める看護系大学の割合は、約2割にすぎない。3年課程だけに限っても、3割をわずかに超える程度にしかなっていない。
毎年10校程度が大学化している今のペースがこれからも単純に続くとすると、毎年5万人の養成数すべてが大学になるには、あと30-40年かかってしまうことになる。少なくとも現行の制度の下で、看護基礎教育の大学への一本化というのは、かなり厳しい道のりだと言わざるを得ない。
キャリアブレイン
長く教育はいいけれど現実には卒業しても、、生活厳しいってことになりそう!
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