意味を変えた「2200億円」 機械的削減にこだわるのは何のため?2008.8.6 |
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じほう社 医療・介護・年金など社会保障費の自然増2200億円圧縮などを盛り込んだ2009年度予算の概算要求基準(シーリング)が7月29日、閣議了解された。
歳出・歳入一体改革として「社会保障分野は、過去5年間における1.1兆円の歳出削減努力を今後5年間継続する」との文言が「骨太方針06」に明記されてからは3回連続だ。「社会保障分野における改革内容は、機械的に5年間均等に削減することを想定したものではない」と「骨太方針07」に明記されてからは2回連続で、自然増2200億円の伸びの抑制が決定した。
◎ 税制論議に早くも期待?
ただ今回の決定によって、「2200億円」の持つ意味は確実に変わった。多くの医療関係者が切望する「2200億円の削減撤廃」は叶(かな)わなかったが、政府にとっても「2200億円」を修正あるいは撤廃するタイミングを逃したと言えよう。
09年度予算のシーリングは、一般歳出の上限額が47兆8000億円(うち年金・医療などの経費21兆6000億円)。社会保障費は自然増が8700億円となり、その内訳は医療が3000億円台半ば、年金が3000億円強、介護が1000億円弱、その他が1000億円弱とされている。自然増については8700億円から2200億円を圧縮し、6500億円に伸びを抑制する。
また予算配分の重点化促進として、公共事業関係費などを圧縮して3300億円程度の「重要課題推進枠」が設定され、医師不足対策や成長力の強化など緊急性が特に高い事業に対して充てられる。
シーリングが閣議了解される前日の28日、舛添要一厚生労働相は額賀福志郎財務相(当時)と会談し、税制改正議論の中で社会保障費に充当できる安定的な財源が確保できた場合は、削減額を2200億円を減額する余地を残した。
一方、医療関係者らによる2200億円の削減撤廃を求める声は、これまで以上に大きく、かつ切実だった。
日本医師会は「現在の医療崩壊の原因は、社会保障費、とりわけ医療費におけるこれまでの行き過ぎた抑制政策にある」と繰り返し指摘。「医療現場の努力は限界を超えており、社会保障費の機械的削減の撤回こそが地域医療再生への第一歩だ」と強調している。
また医療関係40団体からなる国民医療推進協議会は24日に東京都内で決起大会を開催し、「社会保障費の年2200億円削減撤廃」を決議した。
協議会の運動は全国へと拡大し、シーリングが閣議了解された29日以降も、各地で2200億円の抑制撤廃を求める決議が相次いで採択されている。
◎ 政府の対応は「八方美人」
医療関係者らは、一貫して「2200億円」という金額の撤廃を求めてきたが、政府がとった対応は2200億円の削減方針を維持した上で、医師不足対策や救急医療に対し、新たに財源を充当するというものだった。
福田康夫首相の「2200億円の削減をやめると『日本売り』につながる」という発言から受け取れるように、財政再建論者からの強力な圧力に対して体裁を保つ一方、厳しさを増す医療現場からの声を受け、削減したうちの一部を別の財源で穴埋めするという、いわば「政治的」な手法だ。
ただ、政府がそうまでしてこだわり続ける2200億円の削減を堅持し、07年度からの5年間で社会保障費1.1兆円(国の一般会計ベース)の削減を含む14.3兆円の歳出削減を実現した場合でも、11年度の国と地方のプライマリーバランスは3.9兆円の赤字となることが、内閣府の試算によって明らかになった。
毎年2200億円の伸びを抑制し、5年間で1.1兆円を削減するのは、国・地方のプライマリーバランスを11年度に「確実に」黒字化するため、「骨太方針06」の社会保障分野に盛り込まれた目標だった。
それが、今回のシーリングどころか来年、再来年のシーリングで2200億円を削減してもプライマリーバランスの黒字化を達成するのは困難なのだ。
今回、医療関係者らの切実な声を受け、せめて「2200億円」という機械的な削減路線を変更していたら、政府に対する国民のイメージも変わったかもしれない。仮に来年以降のシーリングで「2200億円」をやめたとしても「これまで、なぜ『2200億円』にこだわったのか」という疑問は残るし、変更したらしたで財政再建論者から想像を絶する批判を浴びるだろう。意味を失ったともいえる「2200億円」が、このまま11年度まで迷走し続けるのかどうか、非常に気がかりだ。(藤田 昌吾)
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