2008.07.30 20:40 |  診療  |  開業 / 病院経営  |  研究  |  医療制度 / 行政  |  仕事 / 職場  |  生活 / くらし  |  その他(一般)  |  その他(医療関連)  |  shushu  | 推薦数 : 1

混迷

混迷する“医療事故調”の行方◆Vol.15
「第三の過ちを犯すな」、厚労省案に異議あり
日本医学会シンポで、学会・現場の医師が厚労省案の再考求める多数 
橋本佳子(m3.com編集長)
 

 
 「総論は賛成だが、各論には反対。これまでの検討プロセスにも疑問があり、拙速は避け、さらなる議論を尽くすべき」。日本医学会が7月28日に開催した「診療関連死の死因究明制度創設に係る公開討論会」の議論は、こう総括できる。
 
 「日本医師会は開業医の代表と言われるが、その開業医の意見すら日医は聞いていない。アンケートを行い、医師会の7割くらいが(厚労省案に)賛成だと言うが、医師会の常任理事クラスの意見を聞いただけ」(長崎県諫早医師会会長・高原晶氏)
 

 「厚労省案がこのまま実行されれば、若手医師が臨床現場からいなくなってしまう。代わりに(厚労省案の支持者は)救急医療をやってくれるのか。またグローバルスタンダードから言えば、『第三の過ち』を日本の医療は犯すことになる。医師不足、低医療費、刑事罰に結び付く医療安全調査委員会の3つだ」(済生会栗橋病院副院長・本田宏氏)

 こんな過激な発言がフロアから飛び出したほど、この公開討論会の議論が白熱したことも、特筆すべきだろう。司会を務めた門田守人・日本医学会臨床部会運営委員会委員長が、「医学会や学会などが立場を超えて、一つのテーマでここまで意見交換をしたことが今まであったのか。ここで一致団結して方向性を探っていかなければならない」と締めくくったように、シンポジストや参加者は、主催者である日本医学会、厚労省案を支持する日本医師会に対して遠慮することなく、忌憚(きたん)のない意見を述べた。換言すれば、これまでこうした議論の場がないまま、「大綱案」という法案提出の一歩手前まで来てしまったことが問題だとも言える。
 
 厚生労働省は、今年4月3日に「第三次試案」、6月13日には「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」をそれぞれまとめているが(以下、両方を一括して「厚労省案」)、公開討論会では、一部に厚労省案を支持し、早期の制度創設を求める声が上がったものの、さらなる検討を求める声が多数派だった。厚労省は次期臨時国会への法案提出を目指しているが、現行案の見直しを迫られた格好だ(『臨時国会への法案提出に向け「大綱案」作成』を参照)。
 
 日本医学会では、「7月31日に運営部会を開催し、公開討論会の議論を踏まえ、今後の対応を検討する」(門田氏)。6月には基本的に支持する方針を打ち出しているが)「日本医学会が第三次試案の基本的方向性を支持」を参照)、どんな結論になるかが注目される。
 
 また前述の長崎県諫早医師会では、全国の郡市医師会に対して、厚労省案への意見を問うアンケートを実施する予定だ。地方の医師会が、全国の医師会に対してこうした調査を計画するのは異例だ。


 シンポジストでさえ厚労省案支持は少数派

 公開討論会の出席者は以下の通り。
 
総合司会 高久史麿:日本医学会会長
司会 門田守人:日本医学会臨床部会運営委員会委員長
    山口 徹:日本医学会臨床部会運営委員会委員長作業部会長
シンポジスト 日本内科学会:永井良三理事長
          日本外科学会:高本眞一理事
          日本救急医学会:堤晴彦理事
          日本麻酔科学会:並木昭義理事長       
          日本医師会:木下勝之常任理事       
          全日本病院協会:西澤寛俊会長
 
 代表的発言は以下の通り(発言の一部のみを抜粋)。
【厚労省案の問題点を中心に指摘】
日本内科学会:永井良三理事長
・大綱案と第三次試案の関係が不明確(第三次試案に記載されながら、大綱案への記載がない部分はどうなるのか、医療安全調査委員会と刑事訴追の関係を問題視する医療者が多いが、果たして厚労省と法務省とは何をどのように合意しているのか、その合意の実効性はあるのか、など)
・遺族が医療事故調査を求めた場合の対応(遺族が医療安全調査委員会に届け出た場合、警察に直接届け出た場合、それぞれどう対応するか、など)
・医療安全調査委員会の職権(「刑事手続きについては、委員会の専門的な判断を尊重する」とあるが、根拠や実効性はあるのか、など)
・医療安全調査委員会から警察への通知基準(大綱案では、「標準的な医療から著しく逸脱した場合」も含めているが、故意、重大な過失、隠蔽、「重過失に相当する悪質な医療」に限るべき、など)

【厚労省案の制度の根幹を中心に指摘】
日本救急医学会:堤晴彦理事
・ 今、医療界にとって、解決すべきなのは、「医療側にとって理解不能な刑事訴追」。「医師法21条の届け出」が問題なため、“医療事故調”を作ろうとしているが、この21条問題は二次的なもの。医療における業務上過失致死罪の対象となる行為を明らかにするのが先決。
・ 中立的な組織を作ること自体には異論はないが、これまでの厚生省の検討会のプロセスに疑問、要するに議論が尽くされていない。(1)1回2時間では議論ができない、座長は各委員から出された意見を「意見の分散」ととらえ、何とか既定路線に収束させようとしている、(2)警察庁や検察庁は委員ではなく、オブザーバーで出席。本来は医療者と「同じ土俵」に上がって議論すべき、(3)パブリックコメントを求めているが、その時点で「大綱案」の作成しており、形式にすぎない――など様々な問題がある。
 
全日本病院協会:西澤寛俊会長
・医療事故について、(1)説明責任と被害者への保障、(2)再発防止、この2つを同一の組織で実施することは無理であり、別個の組織とすることが必要。両方とも一緒にやろうとするとうまく機能しない。

【厚労省案を支持】
日本医師会:木下勝之常任理事
・ 福島県立大野病院事件により、外科系、産婦人科系の日常診療行為における死亡事故に対してでも、業務上過失致死罪容疑で逮捕、起訴という事態が起こり得ることが明らかになった。したがって、医師法21条による届け出義務を廃止し、警察への届け出義務を端緒とする診療関連死に対する刑事訴追の誤った方向性を正し、警察へ代わる届け出機関として医療安全調査委員会の設置が必要。
・ これまで法務省や警察庁と何度も折衝を行っている。第三次試案はその合意の下、作成している。
・ 医療安全調査委員会は、医療関係者の責任追及が目的ではなく、原因究明と再発防止を目的とした組織。調査委員会の調査により、捜査機関への通知は極めて限定された事例になり、捜査機関は医療界の代表者を中心とした調査委員会からの通知の有無を尊重して対応する。

 現状の問題点を分析し、それに見合った組織作りを

 もっとも、上記の議論はこれまで様々な場面で繰り返されてきた議論でもある。一連の議論の混乱は、現行制度の問題点と医療安全調査委員会の目的が整理されていない点にある

 医療界が最も問題視しているのは、通常の診療行為をしていても結果が悪ければ、業務上過失致死罪で起訴される可能性がある点。そうであれば、堤氏の指摘のように、業務上過失致死罪を医療にどう適用するかを検討するのが第一だろう。木下氏がいくら「医師法21条を改正。法務省などとは協議した。捜査機関は医療界の代表者を中心とした調査委員会からの通知の有無を尊重して対応する」と説明しても、永井氏のように、医療者の多くはその実効性に疑問・不安を感じている。

 また、そもそも医療安全調査委員会が、一定の事故について「捜査機関に通知する」ことは最終的には刑事訴追との連動を意味するため、その前段となる原因調査の際に、「自己に不利益な供述」を医療者に強いることを疑問視する向きも多い。正確な原因調査ができなければ、再発防止もままならない。だからこそ、西澤氏は、「目的に応じて、事故調査を行う組織を分けるべき」と主張している。

 一方、医療事故に遭った患者・遺族側にとっての現行制度の問題は、「何があったか知りたい、十分に説明をしてほしい」「再発を防止してほしい」という思いが、必ずしも十分に達せられないこと。フロアから発言した、済生会宇都宮病院(宇都宮市)院長の中澤堅次氏は、「院内調査を行い、患者さん側と一対一で向き合って経緯などを説明すれば分かってもらえる。しかし、第三者の機関が院内調査とは別に死因究明などの調査を行うことにより、かえってこうした取り組みができにくくなる。このまま法案を通せば、今より状況は悪化すると考えられる」と問題視した。

 現状の問題点は何か、「医療事故の調査」を死因究明・再発防止・家族や遺族の救済・責任追及のいずれの目的で実施するのか――。この辺りを改めて整理しないと、議論は進まないだろう。
難しい問題ですね!

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DPC、「機能係数」の議論スタート

 病院の機能によって診療報酬に差を付ける「機能係数」をめぐる議論が、スタートした。DPC(入院費の包括払い)の在り方を検討する厚生労働省の会議で、松田晋哉委員(産業医科大医学部公衆衛生学教授)が、「医療者の配置」と「受け入れ患者の重症度」を機能係数に反映させることを提案したほか、「全患者数に対する全身麻酔の割合」「病理専門医の存在割合」などを示した。委員からは「全身麻酔を一つの係数にすると、局所麻酔でいいのに全身麻酔をする可能性がある」「ICUや病理医という切り口だけで見れば、DPC病院だけ特別扱いする根拠はない」など、さまざまな指摘が相次いだ。

 中央社会保険医療協議会の診療報酬調査専門組織「DPC評価分科会」(会長=西岡清・横浜市立みなと赤十字病院長)が7月30日に開かれ、松田委員の研究班がまとめた「病院機能係数の考え方」について意見交換した。

 松田委員は、機能係数を「固定費的な部分の評価」としながらも、その病院を利用する患者の一部が負担すべき費用は、「加算」で対応すべきとした。また、病院が地域で果たしている機能を「係数」で評価する必要性も示した。
 このため、機能係数で評価するのは「すべての患者が負担すべき費用」と「地域で必要な機能に掛かる費用」になる。

 松田委員はまた、「望ましい5基準の妥当性の検討」と題する資料を示した。「ICUの評価」では、医師や看護師の配置と受け入れ患者の重症度を機能係数に反映することを提案。このほか、「全患者数に対する全麻の割合」「病理専門医の存在割合」「全患者数に対する迅速検査の割合」を示した。
 さらに、病院が地域で果たす役割の評価について、「4疾病5事業の評価」を挙げたほか、「諸外国の例」として、教育・研修の費用に関するビクトリア州の例を示した。

 質疑で、齋藤壽一委員(社会保険中央総合病院長)は、DPCを導入していない出来高算定の病院との整合性の問題を指摘。「ICUや病理医は、既存の『特掲診療料』の中に盛り込まれており、出来高の施設基準として加算されている。確かに、DPC病院は高度な医療を提供しているが、ICUや病理医という切り口だけで見れば、DPC病院だけ特別扱いする(別計算にする)説得力ある根拠がないのではないか」と質問した。

 これに対し松田委員は、「特掲診療料」(基本診療料に含まれない治療行為の評価)を見直す必要性を指摘。「特掲診療料の設定に問題がある。例えば、重症度が高い患者を診ている場合、透析に回すなどいろいろな医療行為をするので、出来高換算だと加算を付けても赤字になる。とすると、ICUの特掲診療料を算定しているかどうかではなく、重症の患者を診ているかどうかを加味する必要がある」と答えたが、齋藤委員は「DPC以外の診療報酬体系との整合性がクリアされないと、納得できる機能係数を決めにくい」と返した。

 また、池上直己委員(慶應義塾大医学部教授)が、「望ましい5つの要件」を機能係数で評価することについて疑問を呈し、「ICUがある病院とない病院がある。外科系がある病院とない病院がある。従って、すべての病院に対する加算の指標としては適切ではない。また、全身麻酔が一つの係数になると、局所麻酔でいいのに全身麻酔をする可能性がある」と指摘した。
 「考え方」については、委員からさまざまな意見が相次いだ。このため、機能係数の具体的な内容は、今後引き続き審議する。

【機能係数】
 
病院の機能によって診療報酬に差を付ける「機能係数」をめぐっては、同分科会が昨年11月に取りまとめた「提案書」に一定の方向が示されており、中医協で既に承認されている。
 それによると、「DPC対象病院として満たすことが望ましい」とされている5つの要件(特定集中治療室管理料、救命救急入院料、病理診断料、麻酔診断料、画像診断管理加算)を機能係数にすることが示されている。

 また、「高度な医療を提供する病院」や「救急、産科、小児科などの不採算部門を抱える病院」を機能係数で評価する方向も示されている。具体的には、▽不採算部門(救急、産科、小児科など)の評価▽高度な医療提供体制(救急医療など)の評価▽高度な医療提供について地域の必要性を踏まえた評価―を挙げている。
 さらに、厚労省が7月16日の中医協で示した「DPCの在り方について」では、「地域における医療の必要性を踏まえた病院機能の役割を評価すること」が加わっており、地域医療に取り組む病院を機能係数で優遇する方針が示されている。

 前年度の収入を保証する「調整係数」を2008年度の診療報酬改定以降に廃止することが中医協で既に決定しており、それに伴って新たに機能係数が導入されることになっている。ただ、廃止の時期や経過措置、廃止に伴って新たに導入する係数(機能係数)の内容については、今後の議論に委ねられている。

 

 

 

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