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< 「医療を崩壊させないために」小松先生の講... | メイン | 我が子の死を乗り越えて >

ふう、やっとここまで辿り着きました。

 

診療行為に関連した死亡の死因究明等の在り方に関する試案―第二次試案

 

 

基本理念

最大の問題点は理念部分である。「安心・安全」という言葉が使われている。安全はリスクと同義で変数に過ぎない。安心が得られるかどうかは、個人の心の中での安心の基準に依存するので、医療側から提供できる問題ではない。

(当然ですね。死を恐れる人に医療者がいくら「死ぬことは怖くないですよ」と言っても安心させることはできません。)

第二次試案の前提として、このような患者側の主観的な願望の実現を、医療側の責任としている。この前提に無理がある。

 

理念の第三番目の項目がこの制度の基本的性格を示す。

「予期しない死亡が発生した場合に、遺族の願いは、反省・謝罪、責任の追及、再発防止」であり、「これらすべての基礎になるものが、原因究明」であるとしている。原因究明の目的は、反省・謝罪を求めること、責任追及、再発防止にある。 

(つまりは法的責任追及が主目的というわけです)

 

 

組織

中央に置かれる委員会は、医療従事者、法律関係者、遺族の立場を代表する者により構成される。のみならず、地方ブロックでの報告書原案作成段階から、法律関係者、遺族の立場を代表する者が参加する。

(なぜ遺族の代表者が入るのかが理解できません。中立的立場の人でなされなければ、公平な判断ができる筈もありません。)

 

刑事における真相究明とは、刑罰という法律効果を発生させるために、犯罪構成要件という法律要件に該当する事実の存否を確認しようとして、刑事訴訟の手続きを進めていくことである。

民事における真相究明とは、損害賠償という法律効果を発生させるために、犯罪構成要件という要件事実という法律要件に該当する事実の存否を確認しようとして、民事訴訟特有の手続きを進めていくことである。

(つまり、ここでいう真相究明は、医学的な真相究明とは全く異なるものです)

 

個人の処罰との関係

第二次試案は「行政処分、民事紛争および刑事手続きにおける判断が適切に行われるよう」「調査報告書を活用することができる」とする。

 

議論が進んでいる航空業界では、国際民間航空条約(ICAO条約)の第13付属書に、「調査の唯一の目的は、将来の事故または重大なインシデントの防止である。罪や責任を課するのが調査活動の目的ではない」とあり、また「罪や責任を課するためのいかなる司法上または行政上の手続きも、本付属書の規定に基づく調査とは分離されるべきである」と明記してある。

(医師個人の責任追及を目的とする第二次試案と正反対!)

ところが、日本では警察が法的責任追及のために事故調査を行い、検察は航空・鉄道事故調査委員会の報告書を刑事裁判の証拠として使用してきた。

警察が収集した情報は、警察内にとどめられ、事故防止に利用できない。

日本の司法が条約の基本思想を受け入れていない。 

(何それ。そんなのあり?って感じです)

 

2003年ごろを境に、大病院には院内事故調査委員会が置かれるようになった。

多くの病院では医療事故をシステムの問題として捉え、ヒューマンエラーを処罰の対象としていない。

第二次試案が実現すると、院内事故調査委員会における調査結果が、調査報告書に盛り込まれることになる。つまり院内事故調査の結果が、個人の処罰に直結することになる

証言は極めて慎重なものにならざるを得ない。必然的に、事実が表に出にくくなる

 (かえって真相が究明しにくくなる結果、亡くなった方や重大な合併症に遭った患者さんのことが、次の医療に活かされることはなくなるのです。この試案が目的とする再発防止には繋がりません。)

処罰を前提にした調査は科学的調査と異なり、遺族と医療従事者の対立を高める。

病院管理者と現場の医療従事者の間にも疑心暗鬼が生まれる。厚労省と病院の間の溝も深める。

 

7.医療における正しさを誰が決めるのか

 第二次試案は、実質的に「正しい医療」を厚労省が決めることを意味する。

たとえば、ハンセン病患者の、90年にも及ぶ隔離政策の歴史で、何人かの医師が異議を唱えた。患者をかくまった医師もいた。これらの医師は、「医学と良心」に基づいて行動した。

厚労省は「医学と医師の良心によって動いているわけではない。

これゆえ医師の行動の制御を国家に委ねることに問題がある。小松先生は、世界の常識と強調していらっしゃいました)

行政は、医療における正しさというような価値まで扱うべきではない。明らかに行政の分を超えている。

 

第二次試案が実現すると厚労省は医療のすべてを支配する。全体主義的統制医療は自立性を奪い、医療の進歩と国民への適切な医療の提供を阻む。

現場にもたらした結果からのフィードバックで、厚労省の責任を問うようなシステムを構築することなしに、厚労省の権限を限界まで強化すると、現場と乖離した規範がまかり通り、適切な医療提供体制を壊す。(すでにそうなりつつある)

8.提案

 今、必要とされるのは、なにより患者側と医療提供者との軋轢の軽減。患者の理解と納得を高めるための支援制度。そのなかに調査制度を含む。

以下の条件が求められる。

1)患者側の理解と納得を高めるために、科学的調査と中立的立場の介在者による理解援助を行う。

2)調査報告書を個人の責任追及には使用しない。

3)この枠組みは、全ての事例の最終的な解決を図ろうとするものではない。対立を助長しがちな法的評価はこの枠組み外で行うものとする。患者側、病院側の同意の得られる範囲で、各種ADRと連携するものとする。

4)大きな中央組織を作らず、地域の既存組織と専門家のネットを構築する。事例に応じて適切な調査チームを組織して、効率的な調査をする。

5)権限を厚生労働省に集中させない

 

今後医師が取り組むべきことは、自浄作用である。自らを律する気位の高い専門職団体の存在は、医療門だの解決を容易にする。

 

以上、我々は、

診療行為に関連した死亡の死因究明等の在り方に関する厚生労働省第二次試案

に反対するとともに、

調査制度を含む患者支援制度の創設を望む。

 

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医師が医療に殺される現実
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コメント

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ことり先生、すごく熱が入っていらっしゃいますね。
当然です、医療崩壊が確定するかの一大事ですから。
私も福島の大野病院事件以来、診療関連死と裁判の問題が、頭を離れません。
最近は日本産婦人科学界や全国医学部長病院長会議も反対声明を打ち出しており、小松先生の体を張った頑張りが受け入れられています。
臨床系学会が団結して、合同声明を厚生省に突きつける必要がありますね。
もちろん、あの馬鹿げた法案をスクラップすることが目的です。

東大医科研の現場からの医療改革推進協議会のメンバーの方が発表された「医療崩壊の現状分析と対策に関する考察」を読みました(川口さんのロハスメディカルから)。
http://kousatsu.umin.jp/pdf/zenbun.pdf(全文)
http://kousatsu.umin.jp/pdf/gaiyou.pdf(概要)

まず、患者の安全すなわち医療安全の為には、病院の医療スタッフを増やす(医療教育機関での養成の段階から、人数を増やす)、安全のコストをかける(医療費を削減せず、お金をかける)ことが一番大事だそうです。
また、刑事罰なしの医療事故報告制度の必要性にも言及しています。
これは、以前に紹介した世界標準であるWHOのPatient Safetyのポリシーの内容とも一致します。

診療関連死法案って、医療安全を目的としている訳でしょ。
でも、内容は診療関連死を刑事事件化して、医者を犯罪人扱いすることがメイン。しかも、医療安全のために医療スタッフを増やすことや、コストを増やすことなど、全く視野にない議論ばかり。
どこみて、議論しているの?厚生省で議論している人たち、バカじゃないの?と憤慨しきりです。
もっと臨床の現場の地に着いた議論をしていただきたいです。
世界標準から離れた、みょうちきりんな議論は不要です。
あんな法案の議論は止めて、医療安全のために必要なことは何か、医療現場からの発信をきちんと受けとめてください>厚生省で診療関連死法案を議論している方々、マスコミのかた。
written by 鶴亀松五郎 / 2008.03.05 01:30
鶴亀松五郎先生、いつもコメントありがとうございます。
先生の仰る通り、医療安全を目的とするのなら、医療スタッフを増やすことや、コストを増やすことなどをまず議論するべきです。診療関連死法案は、医者を犯罪人扱いすることが目的ですから,全くお話しになりません。


written by 春野ことり / 2008.03.05 15:11
ことり先生こんばんは。

まったく同感です。
それでも総額規制にこだわるのであれば、国として国民にメッセージを伝えることだと思います。
”安全”や”安心”などをキャッチフレーズにしながら、実際は現場判断にゆだねつつも、はみ出したぶんを炙り出しつつ時々の判断でいたぶるのは止めていただきたいと思います。
ハッスル


~ハッスル先生、こんにちは。コメントありがとうございます。

>”安全”や”安心”などをキャッチフレーズにしながら、実際は現場判断にゆだねつつも、はみ出したぶんを炙り出しつつ時々の判断でいたぶる
とても上手い言い回しですね。
>総額規制にこだわるのであれば、国として国民にメッセージを伝えること
まったく同感です。
総額規制しながらその責任をすべて現場に押し付けるのはやめて頂きたいです。
春野ことり


written by ハッスル / 2008.03.05 21:35
いま、小松先生の「医療の限界」(新潮新書)を読んでいます。終末期医療(私のいまの関心の的)との直接の関連は薄いのですが。小松先生は虎ノ門病院の先生なんですねえ。ここはうちの息子たちが生まれた病院で、私は強い愛着を感じます。地下鉄で「虎ノ門駅」を通り過ぎるだけで、妻のお産当時を思い出し、幸せな気持ちに満たされます。僕って変かな?
小松先生の講演と関係のない話で申し訳ありません。医療紛争や訴訟について、実例を挙げながら(とくに不当な判決の例など)わかりやすく書いた本はありませんでしょうか?読んでみたいです。
真太郎


~真太郎さん、コメントありがとうございます。
私も自分が出産した産婦人科医院の近くを通っただけで、幸せな気持ちになりますよ。ちっとも変じゃないです。
>医療紛争や訴訟について、実例を挙げながら(とくに不当な判決の例など)わかりやすく書いた本はありませんでしょうか?
残念ながら、こういう本は存じ上げません。あれば私も読んでみたいです。
春野ことり
written by 真太郎 / 2008.03.06 02:28

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