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11月6日、中日新聞の夕刊を何気なく広げたら、こんな記事が目に止まりました。
大きな文字で以下の見出し
「診療報酬 矛盾だらけ」
都内で歯科医3人”自殺”
日々是よろずER診療のなんちゃって救急医先生から、記事全文送って頂きましたので、掲載いたします。(いつもありがとうございます)
特報 都内で歯科医3人“自殺” 診療報酬 矛盾だらけ 削減へ不正対策強化 『摘発ありき』の指導
2007.11.06 夕刊 2頁 2面 (全2,358字)
診療報酬の不正請求をめぐり、東京社会保険事務局の個別指導対象となった都内の少なくとも3人の開業歯科医師が、この1年間に自殺したり、自殺とみられる死に方をしたりしていたことが分かった。指導対象となれば、最悪で「5年間の保険医登録の取り消し処分」の可能性もあるが、そうした処分が下される前に、なぜ3人は死んだのか。指導と死は無関係なのか。真相を追った。(鈴木伸幸)
港区で開業していた五十歳代の男性歯科医師は昨年四月に最初の指導を受けた。その九カ月後の今年一月に再指導。八カ月後の九月上旬に処分の程度を決める監査に入るとの通知があり、監査予定日の三日前に、首をつって自ら命を絶った。
国が定めた指導大綱には「保険診療の取り扱い、診療報酬の請求に関する事項について周知徹底させることを主眼とし、懇切丁寧に行う」とされている。
だが、最初の指導は二時間足らず。再指導もわずかに三十分。男性から相談を受けていた歯科医師によると「指導医療官は『こんなことをしていて、お前はすべてを失うぞ。今から診療所に行って、調べてやってもいいぞ』と、まるで犯罪人扱いで、ほとんどどう喝だった」という。
男性は、歯科医師仲間や患者からは「おとなしくてまじめな人」で通っていた。
男性の妻は「診療報酬が引き下げられた昨年四月から、診療所の収入が三割落ちた上、報酬請求に必要な書類が増え、連日深夜まで仕事に追われていた。そこに、指導のプレッシャーで疲れ果てていた」と話す。
男性は妻などにあてた遺書や手紙を残していたが、指導に関する恨みはつづられていなかった。「文句をいえる気力があれば、自殺しなかったと思う」と妻はいう。
裁量次第で認定にずれ
別の指導に立ち会ったことがある歯科医師によると「問題のある報酬請求について丁寧に指摘し、修正するよう指導する医療官もいる」という。だが、指導における不正認定では医療官の裁量が大きく、個々の資質に指導内容は左右される。東京社会保険事務局では、顔ぶれが変わったここ一、二年は「指導ではなく、不正摘発ありきだった」と指摘する歯科医師は多い。
こうした情報は歯科医師には知れわたっていて、昨年十月には新宿区で四十歳代の男性が、今年五月には杉並区で六十歳代の男性が、いずれも個別指導の通知を受け、指導予定日の直前にビルから転落するなどして亡くなった。遺族などは、現場の状況などから自殺とみている。
いずれの死も、指導を動機と結びつける具体的な証拠はない。だが、三人とも指導対象となってから死んだ-という事実は、偶然の一致とするにはあまりに不自然だ。
東京歯科保険医協会は、この中で港区のケースについて、指導に行きすぎがあったとみて東京社会保険事務局に抗議。東京都歯科医師会も、指導内容やその進め方に問題がなかったか調査を進めている。
もちろん、東京社会保険事務局にも、指導の中身はともかく、不正請求を厳しくチェックするには正当な理由がある。「不正請求の疑いがなければ、指導を受けることはない。指導を受けても不正請求をしていなければ、何も怖がる必要はないはず」だからだ。
頑張るほど赤字になる
だが、日本の診療報酬は国際的に異常に安い。他先進国の平均と比べて四分の一というデータがあるほどだ。しかも単純な出来高払いであることから、特定非営利活動法人(NPO法人)「みんなの歯科ネットワーク」副理事長の歯科医師、大塚勇二氏が言うように「いい治療をしようと頑張れば頑張るほど、赤字になる」実情がある。
それに加え、一九六一年に導入された国民健康保険の診療報酬は、定期的に改正はされているが「つぎはぎだらけで、進歩した現在の歯科医療にふさわしい設定になっていない」と指摘されている。
例えば、治療の質は問われないため、同じ治療に三十分かけて丁寧に処置しても、十分で終わらせても報酬は同じ。虫歯の治療では神経を残した方がいいが、残せるかどうか微妙なときに保存を選択すると、条件によって報酬は異なるが、奥歯では基準が千二百円。その後、やはり神経を抜かなければならない状態となり、処置すると報酬は五千七百円だが、前の報酬分の千二百円は減額される。
「それなら最初から神経を抜いてしまおう」と歯科医師が考えても仕方がない。だが、それは患者の利益にはならない。
そのため、保険医療をあきらめて患者負担が大きい自費診療を選択するか、保険診療を拡大解釈して報酬を請求し、それが不正とされてしまうこともある。
もっとも、こうした実情から、以前は社会保険事務局も拡大解釈には寛容で「一定の許容範囲があった」という。ところが、財政の悪化もあり、国が医療費削減を徹底。厚生労働省は医療官を増員する方針を示す一方、不正請求対策の強化を指示している。
『個別判断』 現場が混乱
歯科医師側も「不正請求は許されない」としているが、最大の懸念が医療官の裁量の問題だ。例えば、歯が欠損したあとに人工歯根を埋め込む「インプラント」という技術がある。これは保険対象外だが、同時並行で進む別の治療に保険を適用できるのか、東京歯科保険医協会が今年二月に厚労省に統一見解を求めたところ「個別具体的に判断する」と回答があった。
「これでは、現場の医療官による、恣意(しい)的な判断が下される恐れが強い」と同協会の中川勝洋会長は批判する。
診療報酬は矛盾だらけだが、不正追及だけは厳格化。その一方で不正認定は個々の医療官の裁量任せでは、歯科医療の現場は混乱するばかりだ。
杉並区の開業歯科医師、増田進致(のぶゆき)氏は主張する。「現状の制度では、まじめに治療すればするほど、やっていけなくなる。それを抜本的に変えなければ、どうにもならない時期に来ている。保険歯科医療が崩壊して困るのは国民。そうなってからでは遅い」
中日新聞社
(引用 ここまで)
歯科開業医の自殺、医師にとっては対岸の火事ではありません。
歯科医療に限らず、診療報酬は矛盾だらけです。
実際、患者さんのために一番よい治療を行うと、病院や医院の持ち出しになるということはよくあります。
もちろん、不正請求は断固糾弾するべきです。しかし、このままでは多少の不正請求をしないと多くの病院、医院が潰れてしまう時代がやってきそうな予感もします。
やがて保険歯科医療は崩壊して、歯科治療は全額自費となる時代がやってくるのかも知れません。歯科医にとってはその方が好都合なのかも知れません。
保険医療の崩壊で困るのは国民です。
そうなってからでは遅いのです。
最後の一文に心から同意致します。
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