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十数年前、ことりちゃんという研修医がとある地方大学病院で研修していました。
ことりちゃんの科では、正規の当直の下に、研修医当直というものがありました。
正規の当直医は当直室で休むことができましたが、研修医用の当直室はありませんでした。
それで、研修医は病棟記録室のソファーベッドで休みました。
うら若き乙女が、何十人もの研修医の汗と体臭を染み込ませ、いつ洗濯されたかわからない毛布を被り、眠るのでした。
記録室にカギはありません。不審者だろうが、患者さんだろうが、夜中に入ってくる可能性があります。ちなみに、他の研修医が眠っている時にガバッと入ってくることはよくありました。今考えると何と無防備だったのかと恐ろしいです。
当時の研修医は勤勉な人が多かったので、真夜中の12時過ぎ、1時過ぎまで記録室に詰めてカルテ整理をしたり、勉強したりしている人がいました。眠りにつけるのはその人たちが帰った後です。
ことりちゃんの科は、循環器の患者さんと呼吸器の患者さんが多く入院していたので、夜中に必ず誰か1人くらいは「胸が苦しい」と言います。
すると、まず研修医当直が起こされ、眠いまぶたをこすりながら心電図をカタカタと引いて病室へ行き、患者さんの心電図を取ります。
「これは」、と思うような心電図の時は正規の当直医を呼びます。
採血が必要であれば、研修医が採血して、7階の病棟から2階の検査室へ走って持って行き、検査技師さんに検体を届けます。血ガスは自分で行います。
上級の当直医が、レントゲン写真を撮れと言うと、レントゲン技師さんに頼みます。(医師が自分で撮らないといけない病院もあるみたいですね)
レントゲン技師さんは夜中に起こされて、すごく不機嫌です。「チッ」みたいなことを言われ、研修医ことりちゃんは「すみません、すみません」と患者さんのために頭を下げます。
フイルムができたら、1階のレントゲン室まで、研修医が取りに行きます。ついでに検査室に出した検体の結果も出ていないか見に行って、出ていたらそれを持ってまた病棟に上がり、上級当直医に見せます。
上級医が「○○○の点滴を投与する」と言い、それが病棟に置いてない時は、1階の薬局まで研修医が走って取りに行きます。で、薬剤師さんにもブチブチ言われて「すみません、すみません」と患者さんのために頭を下げます。
そうこうしてその患者さんが落ち着くと、入院暦のある心不全の急患さんが来たりします。
研修医はまた心電図を取り、採血をして、検体を持って検査室まで走って、レントゲンフィルムを取りに走って、と同じことを繰り返します。
上級医が「前回の入院カルテを出せ」と言うと、研修医はカルテが保存してある倉庫まで行って、そのカルテを探してこなければなりません。真夜中のカルテ庫は幽霊でも出そうな雰囲気で、怖かったです。
やっと明け方にソファーベッドに倒れこむと、深夜勤務のナースから起こされました。
「せんせ、私たち、これから検温に回るので詰め所に誰もいなくなるの。モニター見ててくださいな」
と言われ、詰め所のモニターの前に座らされます。
そうそう、真夜中に、一般の人から「僕、肺がんじゃないかと心配なんですが、大丈夫でしょうか」などという電話がかかってきて起こされた事も何度かありました。
この研修医当直、ちなみに
0円
でした。
正規の当直医は1万円くらい当直料がもらえました。
ある時、いくら研修医だって当直0円はかわいそうだ、上級当直医がその日の研修医当直者に当直料の中から、千円手渡しすることにしよう、と決まりました。
律儀に千円下さる先生もいましたが、知っていて無視する先生が多かったような・・・。
こうしてほとんど眠れない夜をすごした翌朝は、また通常通りの勤務です。(医者にとっては当たり前のことですが)
朝、入院患者を診に行って、研修医のデューティー(尿検査当番とか、点滴当番とか、カルテを心電図に貼る当番とか・・・要は雑用)をこなして、お昼に記録室に戻って、入院患者さんのカルテを書いていると、
どやどやどやっと、掃除のおばちゃんたちが記録室に入ってきて
「じゃま、じゃま!さっさとどいて!」
と言われて記録室から追い出されました。
どこまでも研修医は人間扱いされていなかったと思います。単なる雑用マシーンでした。掃除のおばちゃんよりも身分は下でした。
なんだか、あつかふぇ先生のブログを読んだら、自分の研修医時代を思い出してしまったもので・・・。
研修医ことりちゃん、シリーズ化するかどうか、わかりません。
ところで大学病院離れが増しているというニュース
うーん・・・
当時、大学病院以外で研修する選択肢があったら、ことりちゃんもそうしていたと思います。
ちなみに今は大学病院でも研修医は人間としての人権を認められているようです。(ここに書いたのは十数年前のお話ですので、あしからず)
今は、研修医様は大切にされているようですので、大学で研修する人が増えてくれるとよいと思います。
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