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もう医師の報酬の話は終わりにしたいのですが

最初に「医師は給料もらいすぎじゃないのか」というコメントをくださった愚樵さんのブログに、とてもよいことが書いてあったので紹介したいと思います。

 

医師が異常な「献身」」をしていたなんて話がウソだ。医師はちゃんと報酬を受け取っていた。考えてみればいい。どれだけの人間が正当な報酬なしで「異常な献身」を続けていられるというのか。この論でいうと昔の医師は皆、聖人といえるような人だったという話になるのだが、そんなことがあったわけはないのである。医師はちゃんとその働きに見合う報酬を受け取っていた。それが今は見えなくなってしまっただけのことだ。

その報酬とは「心の所得」である。この「心の所得」という言葉は先頃有罪が確定したとある県の知事が提唱した概念なのだが、要するに労働からはお金以外にも所得がある、という観念論だ。

そして、その愚樵さんのブログにTBされていたブログにも、こう書いてありました。   アルバイシンの丘より

医師たちは報酬のほかに,感謝や尊敬を得てきたのは事実であろう.そのほか,尊敬されること自体が,さらに医療行為そのものの仕事への誇り,達成感,優越感,などに導くことにもなっただろう.医学部志望が未だに高倍率を続けていることが何よりの証しである.医師たちががんばって来れたのも,高報酬そのものだけではなくこのような「心の報酬」があったからなのは確かである.

たしかにそうです。お二人とも非常によいことを書いていらっしゃる。

今まで医師は賃金以外に「尊敬、感謝」という心の報酬を受けてきました。これらはお金には換えられない喜びです。

愚樵さん曰く、「しかし、今はそれが見えなくなってしまった」

だから、医師にとってはその分「減収」なわけです。

 

産科医が減っているのはもう国民周知の事ですが、外科を選択する人も減っています。

風の便りで聞いた私の大学の話ですが、今年の外科の入局者は1人だったとか。ちなみに皮膚科は7~8人入ったそうです。(しかし皮膚科の人員はそれでも足りていませんが)

最近、日経新聞に「このままでは外科医がいなくなる」という見開き2面にわたる意見広告まで出ました。http://blog.m3.com/BH/20070901/1

事態は深刻なのです。

 

そもそも「外科」といえば医療の花形です。(でした?)

実際に患者さんに手を加えて病気を治すのですから、そのやりがいは内科の比ではないと思うのです。

産科も大変やりがいのあるお仕事です。新しい命を取り上げるのですから。

元々、外科医や産科医は「心の報酬」をたくさん得ていたはずです。しかし、最近は、それらが得られにくくなった。

手術やお産が成功すれば、今も感謝してくれる患者さんや妊婦はたくさんいます。

しかし、うまくいかなかった場合はどうなるでしょう?

民事で訴えられます。刑事罰もあり得ます。

結果だけで責任を問われます。

手術がうまくいって患者さんからいただける感謝がプラスの報酬ならば、訴訟、刑事告発というのはマイナスの報酬です。

訴訟ばかりが増え、感謝や尊敬があまり得られない昨今は、差し引きすると外科医にとっての「心の報酬」はマイナスになっているのではないでしょうか。

 

公立病院では、緊急性が高く呼び出しが多くて訴訟リスクが高い科の医師も、そうでない科の医師も、報酬は同じです。すずめの涙のような時間外手当で差がつくくらいでしょう。しかし、外科や脳外科、循環器などの医師らがそれで文句を言っているのは聞いたことがありません。それは、彼らがやりがいという「心の報酬」を多く得ていたからだと思うのです。

しかし、最近はそのような科を選択する若手医師は減っています。

アルバイシンの丘さんはこう書いています。

医学部志望が未だに高倍率を続けていることが何よりの証しである.

しかし、最近は医学部を卒業しても医師にならない人が増えているという話もあります。

参考:

医学生よ何処へ行く

医学生職業選択の自由

そんなことを聞くと国民は税金の無駄と怒るでしょう。しかし、医学部を卒業したら必ず医師にならなければならないという規則はありません。

ちなみに、医師一人を育てるのにかかり税金は1億円と言われていますが、それはでまかせのようです。

参考:

医師養成にかかる費用ー1

医師養成にかかる費用ー2

医学部を卒業しても医師にならない学生が増えているというのは、医師という仕事に希望が見出せない人が増えているということです。

やっと国は医学部の定員を増やす方向へ向かいました。定員は当然増やすべきです。

しかし、いくら定員を増やしても、医師の労働環境が改善されなければ、医師にならない医学生が増えるだけかも知れません。

産科医療の崩壊はすでに各地で起こっています。

これに続くのは外科でしょう。このままでは本当に日本から外科医がいなくなるかも知れません。

そうなったら虫垂炎(俗にいうモウチョウ)で命を落とすのが当たり前になります。

外科医や脳外科医の次には内科医もいなくなるでしょう。

国民は今から覚悟を決めなければなりません。

 

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 医療を壊しているのは「人の心」と思います。

これを立て直すのはもはや不可能なのでしょうか・・・

 

 

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不死と餓死
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posted from アルバイシンの丘 2007.09.21 11:00
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私がアメリカでで一番印象的だったのは両手が熱傷後の瘢痕で不自由になった医師と働いた経験です。ちょうど野口英世博士が幼い頃【てんぼう】と福島で呼ばれて育ったように、彼は右手は薬指と小指しか使えず、左手は... [続きを読む]
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「心の報酬」が負に傾く、なるほどうまい表現です。早速、メモして使わせて頂きます。     Taichan


~よい言葉はどんどん拝借しましょう。(こtれも拝借したものです)    春野ことり
written by Tai-chan / 2007.09.21 04:57
おはようございます
あらかじめ、嵐が来ないうちに、貼らせて頂きます。
医師養成には 1 人 1 億円かかっているのだから、医師は黙って酷使に堪えて奉仕せよ。
http://sword.txt-nifty.com/guideboard/2006/09/__9966.html
http://sword.txt-nifty.com/guideboard/2007/05/2_8ae6.html
というのは妄言に過ぎませんので、念のため。 道標主人


~道標主人様、ありがとうございます。
本文中に引用させていただきました。
今後ともよろしくお願い致します。   春野ことり
written by 道標主人 / 2007.09.21 07:48
はじめまして.TBと記事のご紹介戴き,ありがとうございます.門外漢が勝手なことを言いまして申し訳ありません.
「心の報酬がマイナス」という点,事態はここまで至っているのか,と驚くばかりです.
<医療を壊しているのは「人の心」>
人の心をここまでにしたものに想いを馳せるとすれば,庶民そのものの変化もありますが,それも含めて医療行政そのもの(構造改革と官僚支配)の責任は大きいと考えているのですが,どうでしょうか.
なお,あまり関係がないのですが,最新の記事をTBさせていただこうと思います.可能でしたらよろしくお願いします. アルバイシンの丘


~アルバイシンの丘さま、はじめまして。
TBありがとうございます。「死」に関してかなり突っ込んだ記事ですね。
>死に往く者と残される者の想いには,元々大きなギャップがある.『死は死』であるが,本人はよくても,『そんな死に方』であったら残される方はたまらない,ということがあると思う.

同意します。尊厳死が日本ではなかなか困難なのですが、これはまさに「死に往く者と残される者の想いのギャップ」によるものだと思います。

もちろん、医療崩壊は行政のミスリードによるところが大きいと考えています。
それでも現場の医師が身を粉にして支えているものを、更に壊しにかかっているのが「マスコミによる医療叩き」と「訴訟の増加」だと思うのです。 
誤解のないように申し上げますと、本当の医療ミスは法の裁きを受けるべきです。 しかし、最近の訴訟事例を見ますと、見当外れなものが多すぎます。そもそも「医療ミス」と「合併症」は違うものなのですが、それを理解しない判決や報道が多すぎるのです。医師は患者を助けるために治療をします。そして、うまくいかなければ何でもかんでも「医療ミス」と騒ぎ立てられます。それでは医師もやっていられません。「それならば、人が死なない科に入りましょ」、「もう現場から立ち去りましょ」となります。使命感が強く現場に残っている医師の負担が大きくなります。それでも国民は最高の医療を求めます。
まずは、こういう現状を国民に広く知っていただかなければならないと考えています。   春野ことり
written by アルバイシンの丘 / 2007.09.21 10:57
私も自分の未来に確信をもてない外科医の1人です。
幸い心の負の遺産はあまりありませんが、時間の負の遺産に悩まされています。手術は多くの人手を必要とします。たった1人の患者を救うために最低3人の外科医、二人の麻酔科医、最低1人のME、最低二人の看護婦が必要です。
非常に効率悪い職場です。
上下関係に気を使い、コメディカルに気を使い、多くの説明時間と多くの承諾書、、、これらの書類の重さは、おそらく内科の数十倍に達するでしょう。   Atsullow-s caffe



~Atsu先生、第一線で闘う外科医としてのコメントありがとうございます。外科医の労働環境が改善されて、外科を志す若い医師が増えてくれることを心から願います。  春野ことり

written by Atsullow-s caffee / 2007.09.21 11:32
春野ことり先生 はじめまして こんにちは。

私は医療従事者ではありませんが、いつも興味深い内容のブログに感銘しながら、拝読させていただいております。

この夏、とある病院の時間外診療にお世話になることがありました。そのときまさに、別の患者が看護師、医師に対する暴言をはいているという場面に遭遇しました。
これが、ちまたでいうモンスター患者か!と思いつつ、看護師さん、医師の方の心労は、いかばかりかと痛感しました。

現在の医療をとりまく問題は、確かに行政によるところが大きいと感じておりますし、本当に真摯に患者さんと向き合っていらっしゃる医師の方々を知るにつけ、早急に抜本的な改革が必要だと感じています。

医療を壊しているのが「人の心」なのだとすれば、医療を立て直すのもまた、「人の心」なのだと思います。

医療にしても、教育にしても、福祉にしても、崩壊しはじめた今、ひとりの人間として、何ができるのか、何をしたらいいのか…、考え行動していきたいと思っています。   すかる


~すかる様、はじめまして。
いつもご覧下さっているなんて嬉しいです。
医療者の立場を慮って下さり、ありがとうございます。
クレーマーはどこの世界でも増えていますね。学校もモンスターペアレントが多くて大変と聞きますが、病院もしかりです。
給食費を払わない親が増えたのと同様、支払い能力があるのに医療費を支払わない患者も増えています。
日本人一人一人がすかるさんのようによく考えて行動していけば、日本は本当によくなるのだと思います。      春野ことり
written by すかる / 2007.09.22 09:41
済みません、私の方の記事を引っ越ししました。

http://guideboard.wordpress.com/2007/09/22/医師養成にかかる費用-1/
http://guideboard.wordpress.com/2007/09/22/医師養成にかかる費用-2/              道標主人


~了解です。記事訂正しました。ありがとうございます。 春野ことり
written by 道標主人 / 2007.09.22 23:45

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