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先日、日経メディカルによるアンケートで「ドクターコールに応じますか」というものがあった。758人中、「応じる」と回答したのは34%だった。私はバカなので、最初この記事を目にした時、この34%の数字を「少ない」と感じた。しかし、Atsullow-s caffe 先生が私と異なる見解でこのアンケートについて3回に渡り考察されていた。
私がアンケートを受けたらおそらく「応じる」と回答しただろう。実際に名乗り出るかどうかはその場になってみないと分からない。しかし、多分、名乗り出るだろうと思っていた。上記のブログを読むまでは。
多くの医師が「応じない」と回答した理由は「過失があった時に医療過誤責任に問われる可能性があるから」だそうだ。私は、そんなバカな、善意で名乗り出ているのに過失責任を問われるなんて、そう思った。しかし、Atsullow先生の記事を読み進めるに従い、「バカなのは自分だ」と思った。そして、大変悲しい気持ちになった。最近の理不尽な医療訴訟の数々、大野病院事件などの警察の介入を見る限り、「医師の善意が踏みにじられている」のは自明である。今の日本を生きていくには、そこまで考えて行動しないといけないのだ。
十年くらい前のことだが、1人で東京の学会へ出かけたとき、白昼に東京駅でうつ伏せに倒れている若者がいた。私はとっさに「大丈夫だろうか」と思い、その人に近づいていった。しかし、その時、異様な光景を目にした。周囲の人たちが、全くその倒れている若者を気にかけることもなく、スタスタと通り過ぎていたのである。
気分が悪くて倒れているのか、意識はあるのか、ただ寝ているだけなのか。浮浪者にも見えない。私はその若者に近づき、そーっと様子をうかがってみた。息はしているようだ。声をかけようかどうか、迷った。一緒に「この人大丈夫ですかねー」と、気に留めて立ち止まってくれる人がいないだろうかと、周囲を見回してみた。しかし、通行人は多いのに、皆、足早に通り過ぎるだけであった。私は空恐ろしさを感じた。自分の住む地方ではあり得ないだろうと思った。「東京って、怖いところだ」
これだけ周囲の人から無視されるということは、この人はいつもこの時間に東京駅で寝ている「常連さん」なのだろうか、と思った。声をかけようとしている自分のことも周囲の人たちからは「バカだなあ」と思われているのに違いない、そう思えてきた。しばらくウロウロして思考を巡らした後、私もその場を立ち去ったのだから、人のことは言えない。
最近、特急列車の中で女性が強姦されているのに、乗客が見てみぬ振りをして誰も通報すらしなかったという報道があった。これも、最初に聞いたときは「なんていうひどい話だ」とやりきれなかった。しかし、通報しなかった乗客たちの心理を想像してみると、電車の中でそういう行為をする変態趣味のカップルと思ったのかもしれない。まさか、電車の中で強姦しているなんてあり得ない、止めに入ったら自分が何をされるかわからないし、通報しても自分がバカを見るだけだ、こう思ったのではないだろうか。十年前の東京駅での自分の行動を考えると、乗客たちを非難できない。
飛行機や新幹線の中で、「具合を悪くされたお客様がいらっしゃいます。医療関係者の方がいらっしゃいましたらお知らせください」というアナウンスが流れたとき、「応じる」と回答したのは34%、「わからない」が48%。
色々考えると自分も「分からない」に入ってくる。しかし、ドクターコールにそ知らぬふりをする事も、良心に反する。救命道具がなければ何もできないことは分かっている。自分の無力を思い知らされるだけかも知れない。しかし、自分が医師であれば、応じなければならないのではないか。たとえ後で過失責任を問われる可能性があったとしても、それを理由に「応じない」というのは、良心が痛まないのか。目の前に困っている人がいたら助ける、これが人間ではないのか。医師としてというより、人間としてどうなのだろう。
逆にもし自分が機内や列車の中で倒れたとしよう。ドクターコールのアナウンスに誰も応じてくれなかったら悲しくなるだろう。医者がいるのに来てくれないなんてことは考えたくもない。
私のブログに「自分は騙すよりも騙される人間でありたい」というコメントをくださった方がいた。私はこの言葉にハッとさせられた。現代の日本人に欠けているものはこれではないだろうか。国民全体が、自己保身に傾きすぎている。「騙されること」を恐れすぎているのではないか。
医師も国民の一部である。国民全体が「自分の身がかわいい」と思うのと同じ加速度でもって、医師も「自分の身がかわいい」と思うようになっているのではないだろうか。
私自身は今までドクターコールに出会った経験はない。しかし、今後そのような機会があったら迷わずに応じる「人間」でありたい。そう思った。
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