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前回のエントリーで96歳の老人が家族の「家へどうしても連れて帰りたい」という、たっての希望で退院して行ったことを書いた。そうは言っても、どうせすぐに戻ってくるだろうと私は高を括っていたのだが、
なんと、退院した翌日には違う病院に行き家族が入院させて欲しいと言い、入院になったそうだ。その病院の医師からそちらでの経過を教えて欲しいという連絡が入った。
騙された、と思った。
一族郎党が集まり「おじいさんが家に帰りたがっているからどうしても願いを聞き入れてあげたい」と私に懇願したのは、ウソだったのだ。始めから違う病院に入院させようという計画だったのだろう。
患者から裏切られることは度々経験するが、こんな大勢で演技をされて騙されたのは初めてだ。非常にいやな気分である。
こんな手口を使わなくても、転院したいなら転院したいと言ってくれればいいのである。何が不満だったのか、なぜ転院したかったのかはよくわからない。(好意的に考えれば、無理に退院させたもののやはり家では看れないと気づいたが、すぐに同じ病院に入院するのは恥ずかしいので違う病院に行ってみたとか?)
前回の記事では伏せておいたが、この老人は生活保護受給者なので、医療費の自己負担はない。彼の生活費、検査費、治療費、すべて公費から賄われている。そもそも、生活保護受給患者に病院を自由に選択する権利はない。役所の許可なく勝手に医療機関を変えてはいけないことになっている。しかし、現実には、生活保護受給患者の中には自由にドクターシヨッピングを行っている者もいる。
一方、医者はと言えば、診療を拒否する権利は認められない。いかなる患者であっても、例え殺人犯でも、治療費踏み倒しの常習犯であっても、診療を拒否することはできない。
ちまたでは治療費の不払いが病院の経営を圧迫している。それでも、払ってもらえないかも知れないと思いながらも、診察を拒否することはできないのである。さらに悲しいことに、そんな患者であっても医療側にに落ち度があれば訴えられる可能性があるのだ。
日本の医療は崩壊しようとしている。当たり前だと私は思う。
「もう、やってられない」
最近、多くの医師が思うことである。
なぜかというと、誠意のない患者が増えたから。これが一番の原因ではないかと私は思う。医師はお金儲けがしたくて医師になったわけではない。お金が目当てなら医者にはならない方がいい。医者の収入なんて、その労働の対価としては屁のようなものだ。
労働に見合わない賃金での過酷な勤務を強いることで、日本の医療を支えてきた医師たち。そんな医師を支えてきたものは、自分の仕事に対する誇り、ではないだろうか。しかし、最近は結果次第で医師は犯罪者に貶められる。患者が死ねば「医療過誤じゃないのか」と勘ぐられる世の中。医師はもはや患者から感謝される仕事ではなく、恨まれるだけの仕事に変化してきている。
医師らの誇りがずたずたに打ちのめされるような、数々の訴訟、理不尽な判決!もはや医師の仕事は誇りの持てる仕事ではなくなりつつある。
医師に誠意を求めるならば、患者も医師に対して誠意を見せて欲しい。そう思う。
先日もブログに書いたが、日本全国ヤブ医者マップなるものをヤフーが公開している。患者の独断と偏見で好き勝手に、しかも匿名で(!!)病院の悪口を書き、それを全国に公表するという劣悪なものである。
これを真に受けて病院の評価をしようという一般人がいるかと思うと、ぞっとする。
誠意のない患者には、医者が誠心誠意を尽くしても伝わらない。
私が医者になった時、先輩医師からはこう言われた。「患者さんに誠心誠意を尽くせば訴えられるなんて事は、まずないから」
しかし、今ではそれを言った医師も自分の間違いに気付いて、考えを変えているはずだ。
医療はいつのまにかサービス業になった。
私の勤務する病院では、数年前からスタッフに対し、患者の名前は「様」をつけて呼ぶようにと指導し始めた。今では徹底的に「○○様」「申し訳ございませんでした」と言葉遣いの指導がされている。
毎朝仕事を始める前、スタッフらは「患者様中心の医療サービスを行います。」と病院の理念を音読させられている。
医療は患者のためのものであることに間違いはないのだが、「患者中心の医療サービス」と言う言葉は誤解を招く。今では患者中心という意味を履き違える患者が続出している。患者は我が儘放題である。毎日のように当直明けのナースから、患者から受けたひどい罵詈雑言について聞かされる。看護師のことをまるで召使いや下僕のように思っている患者がいかに多いことか。
義務を果たさず権利ばかりを主張する人間が増えている。日本全体がおかしくなっている。
くどいがもう一度言おう。
医療者に誠意を求めるならば、患者も医療者に対して誠意を見せよ。
あー、すっきりした。
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参考ブログ:
東京女子医大人工心肺事件で不当逮捕され、無罪となった先生のブログ↓
紫色の顔の友人を助けたい(不当逮捕された大野病院産婦人科医の公判傍聴記を書いていらっしゃいます)
天使のような産婦人科医なな先生のブログより
冒涜(尊敬する医師が業務上過失致死で書類送検されたことを嘆いていらっしゃる記事です)
「やぶ医師のつぶやき」Dr.I先生のブログより、
加古川AMI 衝撃の事実急性心筋梗塞で亡くなった患者の家族が訴訟を起こし、医療側が負けました。医師にどんな過失があったのか全く理解出来ません。
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