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夫の元に一通の手紙が届きました。
9年前に夫がガンの手術をした患者さんで、毎年年賀状やお手紙を下さるので私もお名前はよく存じ上げている方です。
ところが、今回の差出人はご本人ではなく奥さんでした。
嫌な予感がしました。
予感的中。手紙を読んだ夫が沈んだ声で言いました。
「Sさん、亡くなったそうだよ」
夫が読んだ後、お手紙を読ませていただきました。
Sさんは、ガンの再発で、年末から通院も出来ない状態となり、在宅で訪問看護と往診を受け、最期は自宅で息を引き取ったと書いてありました。
私はそれを読んで、ガッカリしている夫とは逆に、なんて幸せな死に方をされたのでしょうと思いました。
自宅で最期を迎えるなんて、今の時代には至難の業ですから。
「畳の上で死にたい」という言葉、私が医者になってから患者さんの口から聞いたことがありません。皆さん、はなから諦めているのだと思います。
在宅で最期を迎えるには、ご家族の相当な覚悟と、いつでも往診に駆けつけてくれるホームドクターの存在、訪問看護など、恵まれた環境が揃わないと無理です。
終末期を自宅で過ごされていても、最後の最後に家族があわてて救急車を呼んで救急病院などに運ばれると、望まない蘇生術を施されてしまうこともあります。
私は訪問診療も行っており、終末期を在宅で過ごしたいという患者さんをできるだけ応援したいと考えています。
しかし、在宅での看取りまでは出来ていません。最終的には病院に入院していただいています。
私は「畳の上で死ぬ」という選択を勧めている訳ではありません。しかし、「畳の上で死にたい」と言う人がいて、ご家族も「畳の上で死なせてあげたい」と思うならば、その望みを叶えるために自分も協力してあげられたら素敵な事だなあと思います。
でも、現実はそう簡単にはいきません。
だからこそ余計に、自宅で家族に見守られて亡くなるというのは、最高に贅沢な死に方ではないかなと感じます。
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