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先月のことです。地元有力地方紙から、天国へのビザについて取材をしたいとの依頼がありました。
私としては、待ってましたー!という感じでして
写真も撮りたいと言われたので、何を着て行こうかしら、髪型はどうしようかしらと考え(一応女性ですから)、つかの間、心ウキウキしました。でも、ちょっと待ってよ。
まだ病院には本を出版したことを話していません。私の病院は民間病院ですし、一応オーナーには言っておかないと・・・と思い立ちました。
しかし、ちょっと困ったな。何が、というと・・・。
このブログでは医師の立場を擁護することばかり書いているように思われているかもしれませんが、実は、小説には医者の嫌なところもいっぱい書きました。
ブログではとても紹介できませんが、小説の中には悪の象徴のような医者が出てきて、色々と非道なことをやってくれるわけです。これを、事実だと思われると、困ってしまうわけで・・・。
現に、
知人やお世話になった先生方などに拙著をお配りしたところ、中には
「先生がお子さんを亡くされていたなんて、知りませんでした・・・。」
と、しみじみ言う人がいて、
こっちの方がたまげてしまい、
「えっ!!先生、あれは作り話ですう~!!」
と言うと、
「なーんだ!!」と言われたりします。(この「なーんだ」は、ちぇっ、同情して損した!という意味なのでしょう。)
小説の中で、「あっけなく亡くなってしまった生まれたての命」と、「十分年老いて寝たきりになってもなお死ねない命」を対比させるために、生まれたばかりの子どもを亡くした女医を主人公にしました。
そして、その女医が、療養型病棟の、意思の疎通も取れず、身体がガチガチに固まったような老人達を回診をしながら、「私の子どもはあっけなく死んだのに、なぜこの人たちは死ねないのだろう」と、矛盾に思う場面を組み入れ、そのフレーズを帯に用いました。
しかし、読者の中には、主人公の女医と、著者である私を同一視してしまう人が、結構いるみたいなんです。
ということは、一般人、とくに私の患者さんが読んだ場合、ここに書いてあることがすべて真実だと思い込んでしまう人が、必ずいるような気がします。
それは、困ります。
というわけで、オーナーに本を渡して、取材の可否について相談してみることにしました。
私 「あのう、相談があるんですけど、実は、私、本を出版しまして・・・。」
オーナー 「えっ!!本を!?すごいじゃないですか、先生!!」 と、嬉しそう。
私 「それで、○○新聞から、取材の依頼があって・・・。」
オ 「えっ!!取材!?いいじゃないですか!!」 益々嬉しそう。
私 「でもー、あのー、この本なんですけど・・・、内容を読んでいただいて、取材を受けてもいいかどうか、そのー、ご判断を・・・。」
オ 「な、何かやばいことでもかいてあるんですか?」 ちょっと顔に曇りが
私 「いえいえ、まあ、読んでいただいて、ご意見を伺いたいと思いまして。」
2時間位してから、オーナーから電話がありました。
オ 「あっ、先生、あの本読みましたけどー」
私 「はい」
オ 「いやー、面白く読めて、よく書けていると思うんですけどねー・・・。」
私 「はあ」ドキドキ
オ 「しかしー、あそこに書いてあることがですねー、うちの病院で本当にやっていると思われると困りますねー。」
私 「そうですねー。」 やはりそう来るか
オ 「うちの病院と特定できるような記事はちょっと、困りますねー。」
私 「そうですか。」ガックリ
オ 「やっぱり、うちみたいな病院は評判が第一ですからー。悪い噂でも立つと困りますからー。」
私 「そうですよねー。」 それも分かる
オ 「ぜひ、素性が知れないようにお願いします。」
私 「わかりました。」 やっぱりねー
よく考えてみると、地元紙に顔写真付きの記事が載ると、それを見た患者さんたちがどっと外来に押しかけ、
「先生、新聞、見ましたよ。すごいですね!」 とか
「ところで、あの本に書いてあることは本当のことなんですか?」 とか
「先生、お子さん亡くされたんですか。」 とか
極め付けが、
「よく本なんか書く暇ありましたねー!」
こう言われることがあるんですけど、この場を借りて言わせていただきますが、私は暇だから本を書いたわけではないんですねー。睡眠時間を削って書いていたわけで・・・。
外来で口々に患者さんたちからこういうことを言われたら・・・と想像すると、
やはり、ちょっと遠慮願いたい。
というわけで、取材は受けることにしたものの、本を片手にニッコリと微笑む私が紙面を飾るという夢は、もろくも崩れたわけです。
次回は、取材の内容について書きたいと思います。
こんな長い記事、読んでくださって、ありがとうございます。
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