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シュリーは、約4年前、私が英会話を習っていたオーストラリア人の女性です。年齢を正確には知らないのですが、60歳を過ぎています。
彼女は今、ミラノでビジネスマン相手に英会話を教えています。その彼女が昨年来日して、私に大変ショッキングなことを言いました。
実は、半年前に乳がんが見つかった。見つかったときは直径1cmだったが、今は3cmになった。私は手術も抗がん剤も放射線治療も、いっさい受けるつもりはないと。
私は、Why?と聞きました。治療すれば助かるのにと。
シュリーは、手術して腕が腫れたり、痛い思いをしたりして、不自由して生きるのは御免だというようなことを言いました。私は今、全く無症状だからこれでいいのよ。もう十分好きなように生きたから、悔いはないと。
私は治療を受けるように説得しましたが、私の拙い英語力でシュリーの固い意志を変えさせることなど、とても不可能でした。
シュリーから告白を受けてから、1年が経ちました。
私は本を出版したと、シュリーにメールで知らせ、小説のあらすじを英語で書いて送りました。シュリーは大変喜んでくれ、是非英語で読みたい!と返事をくれました。
Of course your theme is particularly pertinent to me at this time!!(小説のテーマはまさに、今の私の核心をついている)
この夏、彼女は3人のお子さん達に癌のことを話し、「私に延命治療をさせたら、化けて出てやる!」と話しているそうです。尊厳死の書類もきちんと調えたとのことです。
彼女は、今、大変元気で、ミラノでの生活を楽しんでいます。「癌の診断を受けたあとにもかかわらず、イタリアに渡り、暮らし、英語を教えていることは正しい選択だった。全く疑いの余地はない」と言っています。
私は、できればシュリーに治療を受けてもらい、長く生きて欲しいと思いますが、本人がそう選択して納得しているのなら、それは仕方がないことです。自分の人生は自分自身にしか決められません。
でも、それは、シュリーが友人だから言えることです。もし彼女が自分の患者だったら、ちょっと困ったことになります。それは、訴訟の可能性を考えなければならないからです。
治療や検査を提示しても、「私はどうなってもいいから、そんなものは受けない」と言い張る患者さんがいます。しかし、そのまま鵜呑みにすると、後で家族から訴えられることがあります。そして、説明義務違反として医師の過失を認める判決を下されることがあるからです。
シュリーは最期まで自分の選択を正しいと信じるでしょう。それは、幸せなことだと思います。自分の人生の最期を自分自身で決める権利、そんな大切なことが日本ではないがしろにされていると思います。
シュリーに幸あれ