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未来がいなくなってからも、それを理解できない麻子の身体は母乳を作り続け、麻子は乳腺炎になった。麻子は自分の手で母乳を搾って捨てなければならなかった。未来の飲む筈だった乳、未来の骨や血や肉に変わる筈だった自分の身体の一部を、麻子は何度もシンクに流して棄てた。ほとんど食事が手につかなかったにも関わらず、麻子の身体は自分の身を削り、どんどん母乳を作り続けた。麻子は、体中の水分という水分がすべて涙と乳となり、身も心も干からびて消えてしまえばいいと思った。
「未来の小さな心臓と肺は、どうして止まってしまったのだろう。」
その問いかけは始終、麻子の頭から離れることはなかった。
(妊娠中に何かよくないものを食べたのだろうか。)(胎児のときに毎日当てていた超音波がよくなかったのだろうか。)(それとも、賢い未来は瞬時にしてこの世の様々な醜さを察し、自ら呼吸をやめてしまったのだろうか・・・。)
麻子の頭の中では科学と非科学がごった返しになり、氾濫した。それらの考えの多くは自分自身を責めるものだった。麻子の意思でそれらを鎮静化する事はできなかった。仕事をしていればこれらの考えが鎮まるのではないかと考えた麻子は、未来をなくしたひと月後には、職場に復帰していた。
麻子の心にぽっかりと空いた穴はあまりにも大きかった。未来を失くしてからもうすぐ二年になるというのに、麻子の生きる世界では、時計の針がその進みを止めてしまっていた。
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