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その日の朝、麻子は何日かぶりに夫と顔を合わせた。麻子には何日会っていないかもはっきり分からなかった。
「いつ帰ったの?」
「夜中の三時頃。緊急カテがあってね。まいったよ。一昨日は当直だったし、その前は学会の準備をしてて、病院でそのまま寝てしまった。」
同じ病院で働いていたので、夫の忙しさは十分分かっていたはずの麻子だが、結婚後、夫の家を空けることの余りの多さに、あらぬ猜疑心を抱くこともあった。しかし、未来をなくしてからの麻子には、夫がどこで何をしていようと、もうどうでもいいことだった。
麻子は未来を産んだ時に、百八十度世界が変わり、失ってからはまた、全く違う世界に生きている。麻子が二度も生きる世界が変わっているのに、同じ未来の親でありながら、夫の世界は何も変わっていない。未来が死んだ後、法要のために最低限の休暇を取った夫は、すぐにいつも通り仕事に戻っていった。未来の死は夫にとって悲しかったに違いないのだが、それによって彼の生きる世界が変わるほどではなかったと、麻子には思えた。麻子にとって、夫はもはや麻子とは違う世界に住む人なのだった。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4862230962/ref=sr_11_1/249-4503063-7813949?ie=UTF8
http://www.tokyotosho.co.jp/info/bun/s28.html
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