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早春の輝かしい光の中、麻子は、日本三大清流の一つと言われるN川の堤防の上に、車を走らせていた。車は病院所有のマーチで、ドアには病院の名前とマークが印字してある。助手席には中年の小太りの看護師が座っている。訪問診療のため、患者宅を回るところなのだ。
毎週水曜の午後は、麻子は訪問診療に時間を割り当てていた。麻子は在宅で過ごす寝たきり患者たちを十数人抱えていた。状態に合わせて、月一回か二週間に一回、そういった患者たちの家へ、定期的に往診に行くのだ。今の病院では女性の内科医師は麻子一人だった。男性の医師は訪問診療を面倒くさがるため、麻子が一手に引き受けていた。
以前は病院の専属運転手がいたのだが、何かの理由で退職し、その後は人件費削減のため、もう運転手を雇うつもりもないようだった。麻子は自分で運転をしなければならなくなったが、その方が気楽であった。一日に四、五件の予定が入っていた。今日は、その中に山脇源次郎の家が含まれていた。
源次郎の自宅へ行くには、この土地の観光名所の一つで、夏には鵜飼いが行われるこの川の堤防を必ず通った。麻子は、このドライブが好きだった。水面に陽の光が反射し、川は銀色の輝くウロコで覆われた巨大な美しい蛇のようだった。対岸には深緑の山が聳え立った。
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