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国際輸血学会 第24回国際輸血学会(ISBT)が、3月31日から6日間にわたって、千葉の幕張メッセで開催された。

 約20年前にも、当時の弘前大学教授の品川先生と一緒に、パリで行われたISBTに出席したことがある。ちょうど、超音速旅客機コンコルドが就航し始めた頃である。
 新しもの好きの教授の提案で、そのコンコルドに乗ってパリまで行こうということになったが、旅程と運行の曜日が合わず諦めた。因みに、コンコルドの運賃は通常のジェット機の2倍以上であったと記憶するが、妻と二人の子供を抱える若い医者の懐では、残念というより逆にホッとしたものである。
 実際に乗ったのは、選択の経緯も思い出せないが、革命前のテヘランを経由するイラン航空のオンボロ機であった。輸血に伴うリスクから見た性差 Obstetrics is bloody businessという記載が教科書にあるように、産科臨床に輸血は密接なつながりを持っている。したがって、適正な輸血を行うための十分な知識が産科医にとっても不可欠であり、「産科領域の輸血」というシンポジウムの狙いもここにある。1年以上前になるが、シンポジウムの座長を依頼されたとき、即座にテーマを「輸血に伴うリスクから見た性差」と決め、シンポジストの人選にあたった。
 私の担当するシンポジウムは、翌4月1日の8時半から開始された。朝早いため出席者が少ないのではと危惧したが、座れない人が出るほどであった。しかも、日本で行われているにも関わらず、出席者の半数以上が外国人であったのも驚きであった。経胎盤出血による母体感作 本来、隔離されているはずの胎児血球が母体循環へ入り込むことがあり、これを経胎盤出血(Transplacental hemorrhage:TPH)という。TPHは妊娠初期からみられ、測定方法の違いもあり報告によって数値は多少異なるが、その頻度ならびに量は妊娠経過とともに増加する。分娩時におけるTPHは、妊娠中に比べて頻度ならびに量も多く、ほぼ全例に起こると考えられる。その結果として、母体循環へ入り込んだ胎児血球による母体感作が起こりうる。不規則性抗体の性差 一般献血者における不規則性抗体の陽性率には性差があり、女性は男性の2倍も高頻度である。この原因として、経胎盤出血による母体感作が考えられている。
 1995年7月より、献血の際の問診で輸血歴のある人は除外されている。そこで、1995年7月から1996年3月までに、青森血液センターで採血された献血について、改めて不規則性抗体の性差を調べてみた。やはり、女性の抗体保有頻度は、男性の2倍以上の高率であることが確認された。次に、カイ2乗検定で年代別に性差を検討したところ、10歳代のみ有意差なしという結果であった。特に、Rh系などの免疫抗体に限ってみると、28例のうち何故か男性が1例含まれていたものの、他はすべて20歳代以上の女性であった。これらの結果は、輸血歴のある男性が紛れたと思われる点を除けば、経胎盤出血によって母体感作が起こっていたことを裏付けている。初妊婦と経妊婦との比較 さらに、この点を明確にするために、初妊婦と経妊婦とにおいて、不規則性抗体のみならず白血球(HLA)抗体と血小板(HPA)抗体の陽性率を比較した。
 1994年1月から1995年12月までの2年間に、国立弘前病院産婦人科を受診した妊婦1334名を対象とした。妊娠12週で不規則性抗体のスクリーニングを行う際、同じ検体を用いてHLA抗体ならびにHPA抗体も検査した。初妊婦群と経妊婦群との抗体陽性率は、カイ2乗検定あるいはFisherの直接確率計算法で比較した。
 不規則性抗体陽性率は、初妊婦群が0.31%であるのに対して、経妊婦群では3.75%と有意(P<0.001)に高頻度であった。HLA抗体陽性率は、初妊婦群が5.00%であるのに対して、経妊婦群では17.15%と有意(P<0.001)に高頻度であった。HPA抗体陽性率は、初妊婦群が0.16%であるのに対して、経妊婦群では1.59%と有意(P<0.005)に高頻度であった。結局、経胎盤出血を経験していた可能性のある経妊婦についてみると、不規則性抗体ならびにHLA・HPA抗体陽性率は、初妊婦の3倍から10倍以上も高頻度であることが明らかになった。おわりに 輸血を受ける患者としてみた場合、男性に比べて女性はハイリスクと考えられ、なかでも経妊婦はさらにハイリスクである。また、胎児・新生児の溶血性疾患や血小板減少症という観点からも、経妊婦はハイリスクグループと考えられる。
 輸血が必要な多くの女性のために、全国どこでも安全に自己血輸血が行われるよう、医療関係者ならびに行政の奮起を期待したい。

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はじめに

 近年、輸血需要の急激な増加に対する献血の伸び悩みが、社会問題のひとつにもなっている。なかでも、突発的な大出血に対して常に備えていなければならない産科医にとって、輸血用血液の備蓄が不足することは、ことさら深刻な悩みである。
 この問題に対処するひとつの方策として、一般の献血運動に頼るだけでなく、血液を使用する医療機関の側から、積極的に献血運動を推進しようという動きがある。1984年5月から青森県下で行われている「コウノトリ献血」の主なねらいもここにある。

「コウノトリ献血」運動

 妊婦の家族や友人など2名程度に献血をしていただき、その時に採血所で手渡されるシールを妊婦の母子健康手帳の表紙に貼ってもらうというものである。もちろん、これは強制されるべき性格の運動ではない。青森県臨床産婦人科医会会員(産科医)ならびに看護スタッフが、日常診療の際に妊婦へ「コウノトリ献血」運動の趣旨の理解を図る。
 「コウノトリ献血」件数は1984年の開始以来100%以上の対前年比を維持し、1991年には4,354件に達した。この年の青森県における総献血件数は100,936件であり、このうち「コウノトリ献血」件数は4.31%を占めていた。

今後の展望

 1964年8月21日の閣議決定により、それまでの売血から献血へと、輸血用血液を確保する体制は大きく変わり現在に至っている。しかし、この献血事業は主に行政(国・地方自治体)ならびに日本赤十字社によって進められてきており、使用者側である医療機関の積極的な参加が多かったとは言えない。
 「コウノトリ献血」運動は、産婦人科医や看護スタッフが音頭をとり、青森県赤十字血液センターの協力のもと、妊婦の家族へ献血を呼びかけてきたユニークなものである。この運動を今後さらに展開するためには、この三位一体の協力関係を全国規模に広げるとともに、次に述べるような行政も含めた献血運動を始めることが必要である。
 1)日本赤十字社
 血液センターは、各県支部の管理を受けるとともに、本社の血液事業部の指導を受ける二重構造的機構に属している。したがって、「コウノトリ献血」運動を全国規模で実施するためには、本社の血液事業部が中心となって、ポスターやパンフレットを作成するなど運動を進めていくことが必要であろう。
 2)市町村役場
 妊婦に母子健康手帳を配布する際、「コウノトリ献血」を呼びかけるパンフレットも同時に手渡して献血運動を推進する。
 3)日本母性保護産婦人科医会
 妊婦健診や母親学級などの機会に、「コウノトリ献血」運動の趣旨を説明して妊婦の家族に協力してもらうよう、会員ならびに職員に依頼する。
 4)妊婦の家族
 出生数の確認できた最近3年間において、「コウノトリ献血」件数の対出生数比は約25%であった。もし、「コウノトリ献血」運動が全国で行われていれば、約30万件の献血が皮算用できるであろう。

おわりに

 医療機関に勤務するものが献血運動を推進することは、献血者数を増加させるというためだけでなく、妊婦(患者)や家族に対する啓発になるとともに、自らが輸血用血液の貴重さを認識し適正な輸血を行う一助にもなるのではなかろうか。
 同時に日本赤十字社はじめ各血液センターにも、献血の受付時間を延長するなど、いわゆる企業努力が望まれよう。

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はじめに

 新しく何かを導入しようとする際、それ自体は素晴らしいものなのに、何故か普及しにくいということがある。さしずめ、自己血輸血も、そのひとつであろうか?
 今年の9月に第4回日本輸血学会秋季シンポジウムが新潟で行われた。そのシンポジウムにおいて、「なぜ自己血輸血を導入できないのか?」というテーマで、全国国立病院における自己血輸血の実施状況をもとに私見を述べたので報告したい。

調査方法

 短期間に高い回収率を上げるため、アンケート用紙をファクシミリで、輸血業務の担当責任者と思われる臨床検査技師長宛に送った。回答のファクシミリが来ない施設には、薬剤科長宛に重ねてファクシミリでお願いした結果、最終的な回収率は100%(88施設)に達した。

調査結果

 1.病院規模別の自己血輸血実施率
 全国の国立病院88施設中59施設で自己血輸血が行われており、その実施率は67%であった。定床数で比較すると、病院の規模が小さくなると実施率も低い傾向がが示された。
 2.病院規模別の自己血輸血実施内容
 自己血輸血を実施している59施設のうち、病院全体のシステムととして実施しているのは5施設(8%)に過ぎなかった。最も多いのは、特定の1科で実施している施設で56%であったが、いずれも病床数とは相関しなかった。
 3.診療科別の自己血輸血実施状況
 特定の科で自己血輸血を実施している54施設のうち、整形外科で実施しているのが46施設(85%)と圧倒的に多かった。このうち、整形外科だけで実施しているのが26施設(57%)もあった。 自己血輸血を輸血管理室で行っているのは1施設に過ぎず、残りの58施設では主治医が実施していた。このことからも、国立病院の自己血輸血は、整形外科の医師が中心になって行われていることが裏付けられた。
 4.輸血業務の管理体制
 1)輸血管理室
 輸血業務を一貫した体制で行っているのは、88施設のうち12施設(14%)のみであり、このうち輸血管理室があるのは7施設であった。残りの76施設は、検査科と薬剤科で輸血検査と血液製剤管理を業務分担していた。この二本立ての体制は、300床以上の規模でも大部分の施設で行われており、施設規模とは相関しなかった。
 2)輸血療法委員会
 名称の違いはあるものの輸血療法委員会的な活動をしているのは、88施設のうち16施設(18%)のみであった。特に、400床規模の施設では全く行われておらず、病院の規模とも相関していなかった。

考 察

 「なぜ自己血輸血を導入できないのか?」という点を、輸血業務の管理体制から検討してみよう。自己血輸血を実施している59施設のうち、輸血業務を一貫した体制で行っているのは12施設(20%)であり、自己血輸血を実施していない29施設では全てが2本立ての業務体制であった。したがって、自己血輸血の実施率は、輸血業務を一貫して行っている施設が有意(p<0.01)に多いといえる。同様に輸血療法委員会も、自己血輸血を実施している59施設では14施設(24%)であるのに対して、実施していない29施設では2施設(7%)のみと有意(p<0.05)に少ないといえる。
 1996年9月に出された「輸血療法の適正化に関するガイドライン」には、一貫した業務体制を取ることが望ましいと謳われている。厚生省のお膝下である国立病院の現状を見ると、輸血部門ならびに輸血療法委員会ともに、その設置率は20%にも満たない。ガイドラインを出した当事者は、この現状をどのように見ているのであろうか。
 一方、自己血輸血を実施していない29施設の検査科技師長(あるいは薬剤科長)の意見では、実施しない理由として「臨床側から要望がないから」というのが26施設(90%)と圧倒的に多かった。その他の理由としては、「人員や機材不足のため」というのが8施設、「必要ないから」が4施設であった。 結局、自己血輸血の普及が遅れているのは、自己血輸血に限らず輸血療法全般に関する、医師(行政・臨床)の意識の低さが原因といえよう。

 最後になりましたが、アンケートに御回答いただきました関係各位に、心から御礼申し上げます。

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はじめに

 平成7年7月1日から、製造物責任法が施行された。この法律は、欠陥製品による被害者救済のために制定されたものであり、productive liabilityを略して、一般にはPL法と呼ばれることが多い。しかし、製造物責任の大枠を定めたものに過ぎないため、法律の具体的内容は、今後の裁判所の解釈と判断に委ねられることになろう。
 このような現状において、輸血を実施する医療機関側は、PL法と直接の関係がないとはいうものの、実際に事故が発生した場合には、民法により過失を問われることも予測される。翻って、国立病院における輸血療法の管理体制を見るに、あまりに無防備な姿が目に付く。そこで、輸血療法におけるPL法の意味を概説するとともに、国立病院としての対応策を考えてみたい。

過失責任と欠陥責任

 製造物責任制度の導入とは、過失責任から欠陥責任へという民事責任ルールの変更を意味する。不法行為法では、製品の”提供過程における落ち度”が問題になるのに対して、PL法では、提供した製品の欠陥の有無が問題になる。
 これまでの日本の法律(民法709条:明治29年制定)では、被害者がメーカーに損害賠償を請求するためには、次の3点を立証する必要があった。
1)メーカーに故意または過失があること。
2)損害が発生したこと。
3)故意または過失と損害との間に因果関係があること。
すなわち、メーカーの設計から出荷までの行為の全体を問題としているわけであり、過失責任を問うことになる。
 これに対して、PL法では、出荷した製品が通常有すべき安全性を欠いているか否かを問題としており、欠陥責任を問うことになる。欠陥責任の要件とは、次の3点のみであり、過失の有無は問わない。
1)その製品に欠陥があること。
2)損害が発生したこと。
3)欠陥と損害との間に因果関係があること。

医療機関側への影響

 輸血により重大な損害が生じた場合、患者は輸血用血液に欠陥があったことや因果関係を立証すれば、日赤の過失を立証することなく損害賠償を請求することが可能となる。従って、輸血に伴うウイルス感染および副作用等についての賠償訴訟が多くなることも予測される。
 例えば、PL法で輸血用血液の欠陥が問われた場合、日赤は抗弁を行うことになるが、その際、医療担当者(主治医)は原告側あるいは被告側の立証過程で裁判に関係することになろう。すなわち、当該医療機関の担当者は証人として出廷が必要とされることもあるのではないかと推測される。裁判の結果として、輸血用血液に欠陥があった場合には、日赤は治療費・休業補償・慰謝料などの損害賠償を求められることになる。
 一方、裁判で輸血用血液に欠陥がないとされた場合、原告(患者)側は医療機関に対して損害賠償を求めることも考えられる。そして、医師の治療が適正か否か(特に輸血の必要性の判断)、あるいは医療ミスの有無などが問われることになる。その場合は、PL法の欠陥責任ではなく、不法行為責任(民法709条)や債務不履行責任(民法415条)などの有無を、原告側と被告(医療機関)側で争うことになる。

輸血療法と指示警告義務

 製造物責任に際して、日赤が指示警告義務を負っている対象は医師であり、輸血を受ける患者ではない。したがって、この指示警告や添付文書に基づいて、医師は適正に輸血を行う必要がある。その際、患者またはその家族などに理解しやすい言葉でよく説明するとともに、患者側の自己決定権を尊重し保証することが必須である。そして、そのinformed consentの内容を診療録に記録しておくことが重要である。
 輸血療法に関するinformed consentとしては、次の5点があげられる。
1)血液(成分)製剤を輸血する必要性あるいは可能性について。
2)輸血療法を受けなかった場合の危険性とその結果について。
3)輸血療法の選択肢について。
4)同種血輸血療法の危険性について。
5)緊急時の処置について。

輸血業務の一本化

 既に、厚生省健康政策局は、1989年9月に「輸血療法の適正化に関するガイドライン」を打ち出した。そのなかで、”輸血療法の実施にあたっては、医療機関内の複数の部署がかかわるため、輸血部門の設置と責任医師の任命ならびに輸血療法委員会の設置により、一貫した業務体制をとることが望ましい”と謳われている。しかし、国立病院の現状は掛け離れたものであることが、筆者が既に行った全国調査(日本医事新報、3654号、98頁参照)で明らかになった。すなわち、全国82施設の国立病院に郵送でアンケート調査を行ったところ、77施設(93.9%)から回答を得た。その結果は、表に示すように、一貫した業務体制をとっているのはわずかに15%であった

輸血部門の設置と責任医師の任命

 輸血療法を日常的に行っている機関では、できるだけ専門の輸血部門を設置し、集中的に業務を行い、院内における輸血業務の実施全般について責任を持つ医師を任命しておく。”
 しかし、その実態を見ると、輸血検査と血液製剤の保管が同一部署で行われているのは11施設(14.3%)のみであり、独立した輸血部を保有しているのは8施設(10.4%)に過ぎなかった。残りの66施設(85.7%)は、薬局と検査室との二本立てであり、事務情報や検査結果ならびに検体や血液製剤の流れも非常に複雑であった。
 全国の国立病院では人員の削減が行われており、この時期に輸血部という新たな部署を設置することは困難であろう。そこで、名目はともかく、業務の一本化を図るためには、薬局での血液製剤保管をやめて、輸血検査を行っている場所に保管用冷蔵庫を移す必要がある。そして、薬剤師が出向いて保管用冷蔵庫の血液を管理すれば、複雑な搬送や業務連絡が半減し、実質的な輸血部門が機能することになる。その際、検査室と薬局とのパイプ役としても、責任医師を任命しておくことが望ましい。

輸血療法委員会の設置

 病院管理者および輸血療法に携わる各職種からなる輸血療法についての委員会を病院内に設け、その委員会で輸血療法の適応の問題、血液製剤の選択、輸血検査項目・術式の選択、輸血実施時の手続き、院内での血液の使用状況、輸血療法に伴う自己や副作用・合併症対策等について検討する。
 このように、非常に重要な役割を果たすことになっている委員会であるが、わずか7施設(9.1%)に設置されているだけである。輸血部門の一本化にしても、国立弘前病院での経験(とうほく、379号参照)からすると、人員増を伴わずに実施できることである。厚生省からの通達が1本あれば、お膝下の全国国立病院グループに「ガイドライン」が徹底される、と期待するのは乱暴な考えであろうか。

おわりに

 「輸血療法の適正化に関するガイドライン」が出されて、既に6年が過ぎた。そして、PL法という厳しい航海のなかで、国立病院グループとしては、自らこれを遵守する必要があろう。”まず隗より始めよ”

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はじめに

 既に1989年9月、厚生省健康政策局は、「輸血療法の適正化に関するガイドライン」を打ち出した。そのなかで、”輸血療法の実施にあたっては、医療機関内の複数の部署がかかわるため、輸血部門の設置と責任医師の任命ならびに輸血療法委員会の設置により、一貫した業務体制をとることが望ましい”と謳われている。さらに、昨年の7月には製造物責任(PL)法が制定され、輸血用血液も製造物としての対象になったことから、医療訴訟の観点からも輸血業務の一本化が急がれる。しかし、国立病院グループの輸血管理体制の現状は、ガイドラインと掛け離れたものであることを既に述べた(飛翔37号7頁、1995年)。そこで今回は、輸血管理室を開設して輸血業務を一本化したことが、患者さんへの安全性の向上のみならず、「経営改善」にも貢献していることを紹介する。

輸血療法委員会の設置

 国立弘前病院では、1993年12月に輸血療法委員会を設置し、上記の「ガイドライン」に沿うよう検討を重ねてきた。
1)赤血球MAP400の採用:1994年6月より、それまでの濃厚赤血球200から赤血球MAP400へと切り替えた。
2)不規則性抗体検査をルーティン化:1994年8月より、それまでは主に妊婦に対して行われていた不規則性抗体検査を、入院時(術前)検査の一部に組み入れた。
3)輸血実施(副作用)報告書の実施:1994年9月より、輸血療法が実際に行われた場合には、副作用や合併症の有無についても記載した輸血実施報告書を検査課へ提出することにした。
4)血液製剤の返品廃止:1994年10月より、薬剤科の保冷庫から病棟などへ出庫された血液製剤は、返品を受け付けないという申し合わせを実施した。

輸血管理室の開設

 1995年6月15日の正午を期して、待望の輸血管理室がオープンし、一貫した業務体制が取られることになった。しかしながら、全くの院内措置として行われたため、人員増などは最初から望むべくもなく、新規に準備したものは、輸血管理室の専用電話一台とプラスティックの看板が数枚だけという簡素なものであった。もちろん、業務体制の変更に伴う各種伝票類の新規作成が必要になり、検査科の他の伝票と区別するため、ピンク地の伝票に赤字で印刷したものに統一した。
 オープンの一週間前には、医局・看護部・事務部の代表に対して、新しいシステムや伝票類に関する説明会を開いた。当日の午前中には、保冷庫やフリーザーを薬剤科から検査科へ移動させ、輸血管理室の新しい看板を掛け替え、院内放送で業務連絡を繰り返して正午を待った。

輸血療法マニュアルの発行

 輸血療法委員会と輸血管理室の協同で、輸血療法マニュアルを発行した。発刊に寄せて当時の津島院長は、「医療従事者は、輸血療法の必要性を自ら十分把握することが重要であり、患者または家族に理解しやすく説明するとともに、その必要性について患者側から同意を得たうえで実施することが大切である。さらに、血液製剤の選択・用法・用量についても絶えず注意を払い、その必要最少量を安全に実施することが寛容であろう。」と強調している。そこで、患者側へのインフォームドコンセントを行う際に利用しやすいように、輸血に関する院内統一の同意書を作成して利用している。

手術室における輸血量の推移

 手術中の出血量や輸血量に関する調査の結果、準備血液の多くがキャンセルされていることが明らかになった。そこで、不規則性抗体が陰性の場合は、原則として交差試験済みの血液を手術室へ持参しないシステムを始めた。その施行の前提条件として、次の二点を申し合わせ事項とした。
1)輸血管理室に患者の血液型と同型の赤血球MAPが備蓄されている。
2)手術の術式に応じた適正な輸血準備量(maximum surgical blood order schedule:MSBOS)の基準に沿っている。
 1996年の手術室における集計を見ると、月別の手術件数・全麻件数に大きな変動はない。それにも関わらず、術前に交差試験を申し込まれた赤血球MAPのバッグ数は大幅に減少した。輸血されたバッグ数はほぼ一定なので、キャンセルされたバッグ数も大幅に減少した。このことは、交差試験の件数も減少したことであり、検査試薬の節減ならびにマンパワーの節約につながる。

おわりに

 輸血管理室を開設する際、薬剤科の血液保管業務を検査科に移すことで、臨床検査技師の業務量が増えると危惧した。しかし、技師全員の積極的な姿勢によって、国立弘前病院は、日本輸血学会認定医制度による指定施設(10006号)として認定を受けている。
 輸血業務を一本化することにより、一時的には増えた業務量も、病院内の輸血に関する意識改革が進むに伴い、逆に減少することが明らかになった。弘前病院の小さな「経営改善」ではあるが、国立病院グループ全体に輸血管理室ができれば、大きな節約が生み出せよう。

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20世紀の思い出に、昔の書き物を残しておきます。

時期や内容に不適切なものがあるとは思いますが、あくまでも個人の思い出としてご容赦下さい。

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仮想輸血管理室

Virtual Blood Transfusion Service

 

なぜ開設したのか?

 従来は血液型不適合が問題とされてきた同種血輸血であるが、最近はエイズを初めとする各種感染症ならびに移植片対宿主病(GVHD)などの危険性が社会問題にもなっている。
 したがって、自己血輸血も含めた適正な輸血の実施にあたり、健康危機管理基本指針の策定は誠にタイムリーといえる。ところが現状をみると、適正な輸血を行うための輸血管理室が設置されている施設は、国立病院等においてさえ非常に少ない。
 危機管理に際しインターネットの有用性は、O-157問題においても既に明らかである。そこで適正な輸血に関する情報を全国の医療機関に広めるため、インターネット上に Virtual Blood Transfusion Service: V-BTS を開設した。
 国立弘前病院の現実の輸血管理室は、既に日本輸血学会認定施設として活動中であり、さらに青森県医師会報などを利用して地域医療機関への広報啓発も行っている。
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