< 日本の医療を守るのは誰か? | メイン | 「地域医療を支える住民の活動 」@練馬編... >
学会シーズンに入り、久しぶりに参加すると、いろいろと最新の医学についてとても勉強になります。ただし新しい医療技術や医薬品の評価の中に、患者 さんの満足という項目はあまり研究対象になっていなかったり(看護師さんの参加がある学会だとあったりしますが)、「治療のコスト」の話題は少ないか、 あっても地味な扱いだったりします。

 

 こと病気となると、医療費は国民皆保険だから患者さんはともかく、医師は気にしなくていいよという形でやってこれたのですが、今後、医療費の伸び は自然と増える中で、次に問題になるのは「誰が払う」かという問題に直結するのですが、学会ではコストの支払いより、新技術について学ぶということが優先 されて、それが「費用対策効果」まで含めて検討している風には見えませんでした。

 

 隣の韓国を引き合いに出すとあの国は先進国じゃないじゃないかと思われますが、医療費は同じように問題になっています。

 そしてカテーテルアブレーション(心筋焼灼術)について聞いたところ、同じ患者さんで保険適用になるのは一生で2回だけ、しかも医療費の100万 円のうち3Dマッピングシステムは保険の対象にならないので患者さんは30万円自己負担ということでした。そして合併症が日本の3倍くらい(タンポナーデ など3.5%て高すぎるような・・・)。

 

 これは一例にしか過ぎませんが、「新技術=いいもの」というよりは「高い」訳で、それをむやみに使うことについてしっかりとした検証が日本ではありません。

 日本で今後、がん患者さんの医療費がぐんと増えます。キャンサーサバイバーの患者さんが増え続ける訳で、その人達の抗がん剤や緩和ケア医療も含めると、医療費の支払いを患者さんだけに求め続けることは不可能です。

 そして健康保険制度に求めるのも不可能です。今後、患者さんのお財布の状況にあわせた医療を選択することもありえると思いますし、「保険償還」だ からといって新しい医療技術や医薬品の保険対象外での使用を行なっていけばいずれは、「保険」が使えなくなり、本来使うべき人にも使えなってしまうでしょ う。

 

 遅かれ早かれ、医療費のパイ全体の伸びを抑える努力ではなく、その中での医療費の使われ具合などもチェックされ、不適切な医療請求についてだけでなく、医療の内容についても結果だけでなく診療プロセスも問われる時代が来ると思います。

 まぁ、そんな中で、気になっている本をご紹介。中医協の委員でもある慶応大学の印南先生の本です。まだこれから読むところですが、やはり「理念なき」医師会や政治家に任せといていいのか?聖域とされてきた日本の医療が、本当に患者中心のものなのかは、これからますます問われる気がします。

 

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生命と自由を守る医療政策
著:印南一路, 堀真奈美, 古城隆雄
単行本: 492ページ
出版社: 東洋経済新報社 (2011/7/22)

<内容紹介>
 本当の問題、優先的に解決すべき問題を大胆に提示。今、なぜ理念が必要か。
 これまでの日本の医療政策は、財政対策中心で、しかも時の政治情勢によって少なからず左右されてきたといわれる。ここ20年、頻繁に行われた制度改革は、日本の医療保障制度が抱えている問題を、根本から解決するものではなかった。
 厚生労働省を非難するのは簡単であるが、厚生労働省も時々の政治情勢や世論を見極めながら、利益集団間の交渉・利害調整・合意形成を通じて、実務レベルで制度をなんとか改変しているというのが実態であろう。
 しかし、私たちの生命を左右する医療保障のあり方が、政治情勢や利害調整によって歪められていいのか、絶対に守るべき何かが医療保障にはあるのではないか。
 本書では、経済的な身の丈に合わない高福祉をやみくもに叫ぶのでもなく、市場万能主義で全てを解決しようとするのでもなく、「理念に基づく政策」を提案する。本書では、医療保障の根本的な理念が何かを考察し、その理念に沿った制度改革の方向を示すことである。
 医療が社会的に提供される場合の根本的な目的は、まず、国民一人ひとりが主体的な人生設計を通じて幸福追求するための究極の前提である「生命」を保持し、次に、幸福追求の基盤としての身体的、精神的、経済的自立を支援することにある(二段階理念)。
 この二段階の目的のために、医療保障制度が存在するのであるから、医療保障制度はこの二段階理念をできるだけ忠実に実現する必要がある。机上の空論ではなく、制度改革に活かせる理念を追求したのが本書である。

 

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