昨日は、ふと「週刊AERA 3/15号」の巻頭エッセイ養老孟司先生が「もう過去しか見ない時代」という文章を寄せていたのを発見しました。
曰く、『はやりのツイッターしかり2ちゃんねるしかり、若い人が1日に何時間もインターネット漬けになっている減少はもはや論じるに値しないのかも知れない(中略)私がインターネットによって若い人が「過去」しか見なくなったということである。
インターネットの中にあるものは全部過去である。誰かのつぶやきは過ぎ去ったことへの感想だし、たとえ未来の予測を建てたとして も、それを述べた時点で「過去にそんな意見があった」に過ぎない。ウェブを検索するのは完全なる前例主義に則った行為だ(中略)若い人には「未来」がない という。当たり前である。インターネットには過去しかないのだから。これだけ大勢の人が過去に浸りきっているのは、有史以来初ではないか。
新しいものは真っ暗闇の先にある。いまやそんなものに誰も見向きもしない時代になった。それこそが情報か社会の本質である。』
短いですが、いろいろと考えさせられます。科学者は論文を書くときに過去の文献を調べ、前に同じような実験や考察がなされていないか調べますし、教科書やガイドラインといったものを基礎に教えてもらい、さらに情報を調べながら新しい治療法などを学びます。
もちろん、「過去」を学ぶなということではないと思いますが、ネットの生活に慣れると検索に依存し、懐古主義に浸りきって、新しいことに挑戦しなくなってしまう可能性を秘めているかもしれません。
さて、ここからはちょっとまじめなお話。
いろいろと多忙なのもあり、めったに学会雑誌を読まない元勤務医ですが、なぜか2月号の内科学会雑誌の巻頭の「会告」にふと目に留まりました。(普段は絶対に読まないところです・・・汗)
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臨床研究に係る利益相反 (COI)指針の策定について
「臨床研究に係る利益相反指針」策定ワーキンググループ委員長 曽根三郎
我が国では,科 学技術創造立国を目指して1995年に科学技術基本法を制定、1996年に「科学技術基本計画」が策定され、国家戦略として産学の連携活動が強化されて きたが、20世紀後半から21世紀にかけての医学、医療の進歩はめざましく医学における研究対象も、個体から臓器、細胞、分子へと移り、さらに遺伝子異常と疾病との関連、再生医学への展開などと、それらを基に未知の病態の解明 とともに、創薬への応用、そしてまった新しい概念に基づく治療法、予防法の開発にも応用されている。
医学研究における成果を社会、患者に適切に還元していくことは、我が国の国民が安心 ・安全 ・快適な生活を享受するうえで極めて重要であると同時に、教育・研究の活性化や経済の活性化を図るうえでも大きな意義を持つことは言うまでもない。
日本内科学会 (以下、本学会)および関連13学会が主催する学術講演会や刊行物などで発表される研究成果には、各種の疾患 を対象とした診断・治療 ・予防法開発 のための臨床研究や、新規の医薬品・医療機器 ・医療技術 を用いた臨床研究が数多 く含まれており、その推進には製薬企業、ベ ンチャー企業な どとの産学連携活動 (共 同研究、受託研究、技術移転 ・指導、奨学寄付金、寄付講座など)が大きな基盤となっている。
産学連携 による臨床研究が盛んになればなるほど、公 的な存在である大学や研究機関、その結果,教 育,研 究 と学術団体などが特定の企業の活動に深く関与す ることにな りいう学術機関、学術団体 としての責任と、産学連携活動 に伴い生じる個人が得る利益と衝突 ・相反する状態が必然的・不可避的 に発生する。
こうした状態が「利益相反 (conflict of interest:COI)」と呼ばれるものであり、この利益相反状態を学術機関 ・ 団体が組織として適切に管理していくことが、産学連携活動を適切に推進するうえで乗りえていかなければならない重要な課題となっている。
また他の領域の産学連携研究とは異なり、臨床研究の対象 ・被験者 として健常人,患者などの参加が不可欠 である。臨床研究に携わる者 にとって、資 金および利益提供者となる企業組織 、団体などとの利益相反状態が深刻になればなるほど,被 験者の人権や生命の安全 ・安心が損なわれる ことが起こりうるし、研究の方法、デ ータの解析、結果の解釈が歪められるおそれも生じる。
また適切な研究成果であるにもかか わらず、公正な評価や発表がなされないこ とも起こりうる。しかし、過去の集積事例の多くは、産学連携に伴う利益相反状態そのものに問題があったのではなく、それを適切にマネージメ ン トしていなかったことに問題があるとの指摘がなされている。
近年、国内外にお いて、多くの医学系の施設や学術団体は臨床研究の公正・公平さの維持、学会発表での透明性、かつ社会的信頼性を保持しつつ産学連携による臨床研究の適正な推進を図るために、臨床研究 にかかる利益相反指針を策定しており、適切なCOIマ ネー ジメン トによって正当な研究成果 を社会へ還元するための努力 を重ねている。
本学会においても会員などに本学会事業での発表 な どで利益相反状態にあるスポ ンサーとの経済的な関係を一定要件 の もとに開示 させ ることにより、会員な どの利益相反状態を適正にマネージメントし、社会に対する説明責任を果たすために本学会 の利益相反指針を策定する。
詳細につきましては、次号 (第 99巻 第 3号 :3月 号)に 掲載 いた します。
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今月号3月号に掲載された下記の3つの文章はタイトルのみで、原文掲載はしません。
・臨床研究に係る利益相反 (COl)申 告 ・開示とその管理
・臨床研究の利益相反 (COl)に 関する共通 指針
・社団法人 日本内科学会 「臨床研究の利 益相反に関する共通指針」の細則 (第6版)
というか、10P近い文章はすべての医学研究者が今後、学会発表や論文を発表する時に開示すべき情報、万が一の利益相反の時の処分の規定まで、書いてあります。
もちろん、まだ今年の4月12日の試行期間です。そうです、今年の内科学会の総会では適応されなかったりします(間に合わないよね・・・そりゃさすがに汗)。
もっとも、臨 床腫瘍学会をはじめとしてがん関連の学会では利益相反の開示については2年ほど前より実施しており、この流れは国際的な医学雑誌が掲載にあたって開示を求 めてくるため、これらに対応できない場合は、いくら内容が医学的に優れていても、公開する場を失うから、必然的に対応せざるおえないのが海外の流れであっ たりするからです。
産学連携というのは、以前であれば、特定企業との「癒着」と言われたものだと、薬害オブズパースンの事務長水口弁護士が言ってましたが、科学技術開発のためには資金や技術を産官学で連携しながら集中的に投下しないと、新しいイノベーションは難しいのが現状です。
また、日本の基礎研究が優れた業績を残している一方、日本発の臨床研究が立ち後れ、中国に抜かれていたりする現実を変えて行くためにも、この内科 学会の指針は時代の要請に応えようとするものであり、臨床試験に参加していただく患者さんの保護や、研究資金の用途や寄付金の透明性を高める努力は必要な のだと思います。
<関連ブログ記事>
今後の医療は、しっかりと情報発信や開示をしないでいると、埋没してしまいます。
<ツイッター特集>
2010/3/23放送のワールドビジネスサテライト(WBS)のtwitter特集。公式サイトに、動画がアップされています。見逃した方は必見/[動画]屋台でツイッター その効果は・・・ http://bit.ly/9vGYi7
これを読むと確かに「つぶやき」にも可能性はありますが、実際に医療で成功させるには、それなりに信頼性を担保できるシステムでない限り、偽 医師やそれ以外のニセ医療の跋扈する可能性を秘めているので、注意する必要がありそうです。
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