3月15日の日本経済新聞は「医療」特集でした。1面左上に記事、2面社説も医療。そして6-7面も全面「医療」。
分量も見事です。いや、それはいいことなのかもしれません。ただ、どうも・・・違うように思います。
質のいい医療を効率よく配分するには相応な医療資源(人/モノ/金)の投資が欠かせません。ただ、財源については医療費の抑制の魔法は自費、つまり「患者の自己負担」の増大です。日本のユニバーサルな国民皆保険のカバー範囲を小さくする、そして患者さんに支払わせることで、何とかできるなんて裏付けがあるのでしょうか?
日本経済新聞は「経済」がご専門なので、いろんな方面に取材されたり、専門家の方と一緒になって考えたとは思います。
ただ現在の医療については「適正」な配分以前に、全体として不足が目立つこと、そしてキチンと評価方法が確立してないこと。それを認識しましょう。
東京でも、救急医療を巡って、かなり厳しい状況です。また、地方では医師不足による「病院」の閉鎖や「診療所」になるなどのリストラが進んでいます。
今後、急増する医療/介護の質を求める前に、十分に「投資」が必要です。そうでなければ、医療従事者の「地域偏在」と同じように「質」の偏りが出ます。
国民は、「安心できる医療や福祉」を求めているとは思いますが、「お金をさらに余分に払ってまで「もっといい医療を・・・」というのはごく例外で、自己負担増大など、思いもよりません。
コンビニのようにお金を出して、いつでも病院に受診したいとはあまり感じていないはずです。病院での長期入院のかわりの「在宅医療」も専門医こそ増えてきていますが、福祉との連携が弱いように見えます。また「セルフメディケーション」ひとつとっても、まだ規制が厳しく夜間の薬の入手は困難です。
そして、医療は最近はDPCでクリニカルインディケーターという指標がみえていますが、介護の場面では質的な評価まで問われていません。アメリカのように医療の標準化だけでなく、介護施設についても全米にある18000の介護施設ごとにランク付けされるなどをするためには、介護もそういう判断材料がないと、国民は選べません。
金科玉条のように混合診療反対ではありませんが、まともに医療資源の投下を行わないと、結果として「フリーアクセス」の抑制、「医療の質の低下」を招くことになるような気がしました。
今後は医療については様々な規制を徐々に緩和していくでしょうが、厚生労働省は動けるかは謎です。(彼らも責任は取りたくない)。
そして、利用者の不満は確かにあるのだが、評価するシステムがないのに、「質」を問題視する前に、何が足りないのか?それとも何が原因なのかを調べないと難しいと思います。
地方の病院の医師不足はまだ「不足」です。今年の春も厳しそうです。医師増員は「質」を担保するために必須でしょうが、国として目標を建てるためには指標が必要でしょう。
今後、医療や介護の効率化を計るための指標がもっと必要かと思います。DPCは確かに道具の一つですが、あれに出ない部分のアウトカムなどを評価するために集積する必要性を感じます。
そして、「合格点」を達成するなどを求める事で、医療費の適正化ならわかりますが、そうでなく最初から「医療費抑制」が大前提だと、見事に失敗する可能性が高いです。
高齢化が進むなかで医療や介護をめぐる利用者の不満が高まってきている。地方で医師が足りない、急患を受け入れてくれる病院がない、外科医や小児科医へのなり手が少ない——などの問題が起きている。
その一方で満足な効果が期待できないサービスに多額の費用をかけている部分がある。適切でない長期入院、いわゆる社会的入院や、高齢患者の機能回復に疑問が残るような「寝かせきり」の病床などだ。
時代の変化で制度疲労
医療・介護へのニーズと現実のサービスが合っていない。これは心臓病、脳卒中、がんの増加など病気の種類の変化や、高齢化、医療技術の進歩などに、制度が追い付けなくなったからだ。
時代の要請に応じて制度を抜本から変える必要がある。制度の組み替えでサービスの充実とコスト増の抑制は両立できる。また両立させないと、先進国で最悪の財政状況を回復不能なまでに傷めてしまう。
本社医療・介護制度改革研究会はそうした考えから、医療の提供体制、高齢者の医療と介護、保険財政の改革などを提言した。
第1のポイントは医師らが本領を発揮できる体制づくりである。たとえば心臓外科医は2700人もいて多くの病院に散在しているため、1人当たりの年間手術件数は平均20件と、数百件もこなすドイツなどに比べ少ない。これでは高度な現代医療を身に付ける機会が足りない。
心臓手術など難しい治療は大きな病院に集約し、専門医が多くの手術を手掛けるようにすれば、技量も高まる。その代わり、病院は手術や高度の入院治療などに専念し、軽い病気や外来の患者は原則として診療所医師(開業医)に任せる。
病院と開業医の役割を明確に分けるとともに双方の連携をとれば、患者は密度が高い医療を受けられる。患者の二重受診や医療機関側の二重検査が減るなど財政面の効率化も期待でき、その分、医療や介護の質の充実に振り向けられる。
そのためには、様々な病気をひと通り診られる「家庭医」を医学教育の段階から育てる必要がある。過渡期には、一定地域内で既存の開業医同士が連携をとって対応する形が考えられる。そうすれば患者は重大な病気が疑われる場合を除いて、まず家庭医に行く仕組みにできる。
第2に、高齢者の医療と介護を本人に満足のいくように見直すこと。療養病床では脳卒中などの回復が遅いことも多い。費用がかかる割に生活の質も高くない。また回復の見込みが薄い人には「病気を治す医療」より「苦痛を和らげ、生活を支える医療・介護」が大事だ。
そうであれば療養病床の患者や一般病棟にいる社会的入院の高齢患者を、より暮らしやすくケアも充実した施設や自宅での介護に誘導するのが望ましい。高齢 者については医療保険と介護保険を一体運用し、ニーズにきめ細かく対応する。診療報酬の「定額制」普及を含め、高齢者医療費の増加に歯止めをかけられれば 介護を充実させても全体の負担増をある程度は抑えられるはず。
3番目に、これらの改革を進めても、高齢化により医療や介護の負担感が増す恐れがあるので、公的に提供する医療・介護の規模を国内総生産(GDP)の10%を目安に抑える。それを大きく上回るなら再び制度を改めて効率化を進める。
超党派で議論を始めよ
第4のポイントは、医療や介護を社会の負担とだけとらえずに、高い医療技術を生かして医療・介護産業を育てる政策だ。そのためには医薬品の臨床試験や審 査に関する規制の緩和や、外国人患者の受け入れ拡大、保険診療と保険外診療の組み合わせ(混合診療)の原則解禁——などが欠かせない。
私費で混合診療を受ける人が増えれば、公的負担がほぼそのままでも医療機関の収入は増える。それは医療産業の成長だけでなく、保険料引き上げの抑制にもつながる。
これら一連の改革を実行するには医療関係者や一部患者に努力や負担を求めざるを得ない。カルテの電子化や診療報酬請求のオンライン化は治療の適否の判断や、病院と開業医との連携に役立つ。医療や介護の質を高めるには看護師や介護士の仕事の範囲を広げる必要がある。
また市販薬と同様な薬は全額、患者負担にするなど軽症の患者に負担を求めるのはやむを得ない。
これまで医療・介護制度の改革があまり進まなかったのは、こうした問題で関係者間の利害調整が進展しなかったからだ。政治家は超党派で問題に取り組むべ きである。同時に地域の実情に合わせて医療や介護の体制を整えられるよう都道府県に可能な限り権限を移し、その自主性を尊重することが大切だ。
改革は一朝一夕には進まない。だからこそ早めに着手してほしい。
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「家庭医」を育て 病院は高度医療・本社研究会提言
日経Net Plus 2010/3/15
http://netplus.nikkei.co.jp/nikkei/news/iryo/iryo/iry100315.html
提言のポイント
<医療提供体制>
・ 初期診療は家庭医、病院は高度医療に
・ 県当局が診療科ごとの専門医を計画配置
・ IT活用で重複検査など解消
<高齢者医療と介護>
・ 療養病床を減らし、有料ホームを拡大
・ 介護職と看護職の基礎教育を共通に
・ 海外の人材受け入れを拡大
<保険財政>
・ 公的な医療・介護費がGDPの10%を大きく超えないように管理
・ 混合診療を原則解禁
・ 後発医薬品の使用促進、市販類似薬は保険適用外に
研究会のメンバー
主幹・岡部直明、論説委員長・平田育夫、論説副委員長・西田睦美、論説委員・岩田三代、編集委員・木村彰、編集委員兼論説委員・大林尚、同・菅野幹雄、編集局次長兼政治部長・宮本明彦、同兼経済金融部長・実哲也、経済金融部次長・小栗太
専門家として井伊雅子・一橋大教授、印南一路・慶応大教授、川渕孝一・東京医科歯科大教授、土屋了介・国立がんセンター中央病院院長、西沢和彦・日本総合研究所主任研究員、林良造・東京大教授、堀田聡子・東京大特任准教授、南和友・日本大教授、渡辺俊介・東京女子医大教授(元本社論説委員)から意見を聞きました。
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医療・介護改革、本社研究会提言―「家庭医」を育て、
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小職は欧米、アジアの医療環境をある程度承知していますが、それぞれの国のシステムに優れた面と不足する面が、当然のことながらあります。一つの国の内にとどまっていると、足りない面に焦点があてられる傾向がありますが、日本の医療が著しく問題があるようには思われません(もちろん、改善されるべき個所がないということではない)。国際的に見た場合、平均としてはかなり良い水準を維持していると感じます。
「足りない病」とは、これがない、あれが遅れていると指摘して、予算を獲得しようとする姿勢のことを指します。
世の中の大部分の方は、足りない病にかかっていますので、別の観点から主張されないと、物事は前に進まないと思われます。
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