歌手の松原のぶえさんが、実弟の方から臓器の提供を受けて透析から離脱することに成功しました(松原のぶえが生体腎移植、肉親から提供 朝日新聞 2009/05/15)。
また、透析医療に欠かせないシャントのスペシャリストの方について報道が夕刊フジに掲載されていました(ブラックジャックを探せ・・・というタイトルがすごいんですが)。
問題は透析医療は非常にお金がかかる治療です。2004年に東京女子医科大学の腎臓病総合医療センター血液浄化療法科の秋葉教授がこちらに書かれていますが、30兆円のうち1兆円が透析に投じられています。しかも高齢者の人口の増大とともに年々増えています。
医療費抑制のことを考えると、医師の再配分や高齢者の医療費抑制だけではどうにもなりません。
医療費を抑制すれば国の財政や経済界は確かに助かるかもしれません。しかし、医療を受けることで得られる患者さんの幸福などは形を変えざる負えなくなるかもしれません。
もっとも、アメリカのように移植先進国では、費用のかさむ透析でひっぱらずに「腎移植」+「免疫抑制剤」の方が医療費が安くて済むからとそっちに行く国もありますが、日本の場合、「臓器移植法案」の問題もあり、腎移植はアメリカなどと比較して増えていません(腎臓移植数(1980-2008)[欧米・日本])。難しい問題です。
ちなみに腎移植と透析医療のコストについてはトランスプラントコミュニケーションのホームページ、「6. 移植と透析」によれば
「移植手術を含む最初の1年で400万円、2年目で年間150万円です。移植後、時間がたつほど減っていきます。」とのことで、医療費はかなり安くなることは確実ですし、週に3度の通院が不要になり月に1度~2度へと患者さんの負担が激減し社会復帰も高くなります。(ただし、免疫抑制剤の長期の投与による発がんのリスクは別にありますけど・・・)
まぁ、簡単じゃありません。80歳を超えても透析導入して長生きできる日本・・・いずれ行政も考える時期に入ったと思います。
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MediSafe.net 2004/03
日本の総医療費30兆円のうち1兆円が透析に費やされている。一方日本の総人口1億2千万人に対し、透析患者は23万人である。透析患者はひとりで十数人 分の医療費を使っている。だからこれを抑制しなければいけない、これ以上パイを大きくしたくない、という考えがあると聞きます。
しかし透析をしなければ死んでしまう人が、月々約40万円の医療費で、普通に生活したり、仕事をして社会に貢献したりしているのです。決して医療費抑制の対象にしてはいけません。
厚労省は、総額規制があるから、どうしても額の大きいところに目を向けます。そして、質を良くするために投資をするという方向ではなく、パイを小さくしようとするのです。
透析医療の場合、基本的に患者さんの自己負担がありません。患者側にお金をたくさんはらって質の良い医療を求めるというモチベーションはないのです。質 の高いより安全な医療提供を求めるなら、医療側のモチベーションを上げなければなりません。良い診療に対するきちんとした評価がなければ、質を担保できま せん。つまり、透析医療の質の向上は、行政側である程度コントロールできる領域なのです。行政側は、医療費抑制だけのためにいろいろ手直しをしています が、自分たちが医療の質のカギを握っていることをもっと自覚してもらいたいと思います。
ブラックジャックを探せ 腎移植と透析の長短知る
夕刊フジ 2009/06/05
■代々木山下医院(東京・渋谷区) 山下賀正院長(61)
現在国内で人工透析を受けている腎疾患患者の数は約27万人。このうち糖尿病性腎症から透析に移行した人が4割以上を占め、増え続ける糖尿病患者とともに、今後透析を必要とする人の数も増加が見込まれる。
代々木山下医院の山下賀正院長は、透析患者にとっての生命線ともいえる“シャント”の造設、修復手術のスペシャリストだ。
人工透析とは、機能が低下した腎臓の代わりに、血液を体外の機械で浄化する治療法。この時、1分間に200ミリリットルの血液を体外に出す必要がある が、単に静脈から血液を採っただけでは、その血量は確保できない。そこで、動脈と静脈を直結して、静脈の血量を増やす処置がとられる。この短絡路がシャン トだ。
元は大学病院で腎移植、副甲状腺摘出等の手術を行っていた山下医師。多くの腎疾患患者を診る中で、夜間に透析を行う施設の必要性を痛感し、37歳で透析クリニックを開業した。
「仕事のある透析患者の社会復帰が目的だったので、最初は夜間のみの診療でした。当時は日中は別の病院で診療があったので、早朝から深夜までの連続勤務。でも若かったから疲れなかったなぁ…(笑)」
患者の増加で早朝の透析も始めると、シャント手術の件数も上昇。患者同士のクチコミから手術を希望者が全国から集まり、今では年間のべ5000人以上を診る忙しさだ。
「透析治療のクオリティー維持には定期的なシャントのチェックが不可欠」と語る山下医師は、腎不全からおきる副甲状腺機能亢進症の治療も得意とし、こち らはこれまでに1500を超える症例数を持つ。現在、透析は併設のクリニックで行い、山下医師は手術を伴う治療に専念している。
腎移植と透析-それぞれの長短を知り尽くし、国内有数の症例数を持つ山下医師の診療を求めて、今日も全国から患者がやって来る。
■やました・のりまさ 1948年京都市生まれ。72年京都府立医科大学卒業。同大第一外科、東京女子医科大学勤務を経て、85年に代々木山下医院を開業し院長。趣味はドライブ。
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個人的には透析の年間医療費はあくまで透析単体の医療費だと思います。むしろ透析の長期患者の心筋梗塞、脳梗塞などの合併症の激増ぶり、再発の可能性などを考えると、頭の痛い問題だと思います(心臓カテーテル検査などすると再狭窄率の高さ、合併症の多さなどご理解いただけるかと思います)。
透析のダイアライザーの価格引き下げにもそろそろ限界が来ています。今の医療費抑制の中では相対的に抑える方向になります。無尽蔵にないリソース(医療費)の中で、パイの取り合いをどういう風にしていくか?透析だけではなく、腎移植による治療も含めて見直しの時期に来ていると思います。また、移植法案については医療界だけが先走ることは危険かなと思います。ある程度は社会的な支持がないと、和田心臓移植のように国民にまた疑念を抱かれてしまいます(6/7の自称「科学ジャーナリスト」さんの移植法案に対する慎重論をいかが思われますか?)。
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