< 前のページ

 千葉県知事は医療は結構熱心だったようですね。『堂本暁子と考える医療革命・性差医療が日本を変える』(堂本暁子・天野恵子共著 中央法規)というご本があるそうです。知らなかったけど・・・女性外来の導入とか熱心だったのは確かですが、地域医療はちょっとどころかあちこちほころんでしまいました。

 千葉県知事選挙は結局、堂本氏のあとは有名なタレント候補がなられました。いえ、これからに大いに期待したいところですが。

 

 さて、彼のミッションはこちらでしょうかね?これ↓どうするんでしょうか?

-------------------------------

 

自治体病院 広がる危機 銚子市長リコール成立 他病院 患者殺到で『もう限界』
東京新聞 2009年3月30日

 リコール成立を喜び涙ぐむ市民ら=銚子市で

 二十九日に投開票された銚子市の岡野俊昭市長(63)に対するリコール(解職請求)の是非を問う住民投票は、市立総合病院休止への市民の怒りが原動力となった。リコール運動は全国の注目を集め、住民にとって自治体病院がいかに大きな存在であるかを再認識させた。しかし、自治体病院の経営難や診療科の休止は同市にとどまらず、県内各地で表面化し、一部の病院には患者が殺到。現場では「もう限界」との声が強まっている。

 「どこを見ても“焼け野原”だ」。国保旭中央病院(九百五十六床)の伊良部徳次副院長(59)は周辺の医療状況をそう表現した。

 旭中央病院は、三次救急など県北東部で中心的な役割を担う。昨年九月末の銚子市立総合病院の休止後は、行き場を失った患者の受け入れ先の一つとなってきた。

 伊良部副院長によると、状況が目に見えて変わったのは医師不足の原因といわれる医師臨床研修制度が始まった二〇〇四年度から。周辺の病院の機能が低下し、旭中央病院に患者が殺到し始めた。

 病床利用率は95-98%と、常にベッドに空きがない状態。入院日数を平均十二日ほどに短縮して回転を早めているものの、限界がある。入院が必要と診断した救急患者を入院させられず、別の病院に移送するケースも増えているという。

 現状を打開しようと、周辺病院に常勤医や外来応援として延べ約四十人の医師も派遣。だが、根本的な解決にはならない。伊良部副院長は「病院の体力はさらに落ちて、もっと悪くなるだろう」と指摘し、国の早急な対策を切望している。 (宮崎仁美)
------------------

 いやぁ・・・どうなるんでしょうかね?新知事のご活躍乞うご期待と。

気が向いたらお願いします→   なかのひと

 

『周産期医療の崩壊をくい止める会』のワンクリック募金もよろしくです

http://lohasmedical.jp/fund/

固定リンク | コメント (1) | トラックバック (1)


 「地域医療の未来を考える懇話会」



<概要> 
 医療危機が叫ばれる中、どうやって地域の医療を変えていくのか?この春、MJLネット、LMネットの有志がお送りする特別企画です。


 日頃、地域で活躍されている先生がたとメディアの方がたに集まっていただき、これからの地域医療のあり方を考えるために開催したいと思います。


日 程:     2009年04月11日(土)
時 間:       午後1時~午後4時半過ぎ

場所:TKP東京駅丸の内会議室:帝国劇場 地下1F カンファレンスルーム3
http://tkpteigeki.net/conference/conf1.shtml

人数   先着 50名
(申込方法:右のフォームをご利用ください、氏名とメールアドレスを書きSubmitをクリック!)

<会費> 2000円

<プログラム>

 
第一部(午後 1時~3時)
 
沖縄県の公立病院の現状について
  大城真理子さん(沖縄県立北部病院)

「橋を架けよう-住民と医療・福祉関係者と行政に-
  藤本晴枝さん( NPO法人地域医療を育てる会理事長)

「ジャーナリズムの現場における“医局制度の崩壊”」
  とりいよしきさん(テレビ・ディレクター)

「丹波の医療再生の物語(第2章)
  足立智和さん(丹波新聞社)

第二部(午後 3時~5時)

地域医療の現場から 自治体病院とVHJの経営比較


   近森正昭さん(近森病院)

みんなで議論するワークショップ(予定)

   伊関友伸さん(城西大経営学部准教授)

主催:MJL&LMネット特別企画「地域医療の未来を考える会」

 

--------------------------------

 

 北朝鮮がミサイルで・・・とかやっているようですが、はたしてかの国にそんな余裕があるのでしょうか?謎。日本の医療や福祉もちょうどこんな感じに思えます(人も金も足りないのに国は立派な医療だと自慢する・・・)。

 

 以前は立派だった旧体制の維持のために北朝鮮がかなり苦戦を強いられているのが見て取れるようです。 日本もCTやMRIの大国ですが、肝心の国の医療全体のためには、現場に投入される看護師も医師も不足しており少ない配給制で、現場の努力に頼って維持しています。

 

 日本の医師教育制度が旧ソビエト連邦の時代のように医局や直属上司のコネの世界に戻るなんてありえないですね。いったん市場開放(解禁)になったら元に戻せない・・・そういう動きの中で病院や医療制度は動いているのです。

 

気が向いたらお願いします→   なかのひと

 

『周産期医療の崩壊をくい止める会』のワンクリック募金もよろしくです

http://lohasmedical.jp/fund/

 

固定リンク | コメント (1) | トラックバック (1)

 今回のような「病院側を一方的に攻撃」する見出しをつける産経新聞。

 

 だから一部の読者を除いて、読者の「信頼」を損ねるし、クオリティが低いといわれるのだ。受け入れ困難な状態を「拒否」というのは簡単です。手を縛っておいて、抵抗しない状態にしておいて「言論の力」で封殺する。

 

 引き受けられない病院の状況をすべて怠けていたのなら「拒否」というのは正しい報道です。

 

 本当にそうだったのか?現実を調べていないのに、さも「病院=怠慢」と決め付けて書きちらして喜ぶんじゃないよ。奈良県で同じような事件が繰り返されるには「理由」があるはずです。

 

 そのことを知らないまま書いて喜ぶ・・・もっと「取材」すればわかるはず。例の「奈良県大淀病院」事件で社説にて筆禍を起こしている産経さん(【主張】妊婦たらい回し また義務忘れた医師たち).

 

 だから信頼を回復などできない。

 

 産経新聞は「粗悪」で、メディアとして「信頼性」が劣ると医療界で言われ続けている。産経新聞のリストラ・・・は自分たちの報道に問題があるということを見直さないから、ますますひどくなるでしょう。早晩倒産するか身売りがまっていますよ。たぶんね。

 

----------------------------

 

6病院受け入れ拒否、男性死亡 生駒市
産経新聞 2009/03/28

 奈良県生駒市で今月21日、意識を失って救急搬送された男性が、近隣の6つの医療機関に受け入れを拒否され、大阪府内の病院に搬送された後に死亡したことがわかった。

 生駒市消防本部によると、死亡したのは同市の新聞販売所従業員の男性(62)。21日午後1時40分ごろ、同販売所の119番で救急隊が駆けつけたとこ ろ、男性は意識不明で、搬送中に心肺停止状態になった。救急隊は蘇生(そせい)措置を行いながら搬送先を探したが、「処置が難しい」「ベッドが満床」とし て同市や奈良市内などの6医療機関に受け入れを断られたという。

 通報から約1時間後の午後2時40分ごろ、大阪府大東市内の病院に運んだが、到着から約30分後に死亡が確認された。死因は不明という。

 

-------------------------------

「たらいまわし報道」二周年@産経新聞の魔女狩り&捏造報道を検証する

 

気が向いたらお願いします→   なかのひと

 

『周産期医療の崩壊をくい止める会』のワンクリック募金もよろしくです

http://lohasmedical.jp/fund/

 

-------------------------------

6病院に搬送断られた男性、1時間後に病院に運ばれ死亡

朝日新聞 2009年3月28日
    
 奈良県生駒市で21日、勤め先で突然意識を失って倒れた新聞販売所従業員の男性(62)が、県内の6病院・医療施設に受け入れを断られ、通報から約1時間後に大阪府内の病院に搬送後、死亡していたことがわかった。

 生駒市消防本部などによると、21日午後1時40分ごろ、新聞販売所から「男性従業員が急に倒れた。意識がない」と119番通報があった。約5分後に救 急隊が現場に着いたとき男性は呼吸も脈もあったが、救急車に乗せてから心肺停止状態になった。隊員は電話で救急専門医の指導を受けながら蘇生措置を続ける と同時に搬送先を探したが、「ベッドが満床」「処置が難しい」などの理由で同市や隣の奈良市などの6施設に断られた。

 男性は午後2時40分ごろ、大阪府大東市の病院に運び込まれたが、約30分後に死亡が確認された。死因は不明という。受け入れを断った病院には、当日の2次救急の当番病院や救命救急センターを持つ病院もあったという。

 奈良県内では06年8月、入院中に意識不明になった妊婦が奈良、大阪の19病院に受け入れを断られて8日後に死亡。07年8月にも、かかりつけ医のいない妊婦が下腹部の痛みを訴えたが、11病院に断られて死産している。

 生駒市は、196床の総合病院が05年3月に廃院になったのを受け、救急医療に重点を置く新病院の建設計画を進めているが、地元医師会からは「計画は既存の医療機関の崩壊を招く」「現在の態勢を強化すれば対応できる」といった意見が出ている。(下司佳代子)

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (1)

 

 いつもBioToday.comを読んでいると、古き良き時代のアメリカもかわりつある部分もあれば、そうでないところもあるなと思います。

 薬屋のMRさん(昔はプロパーさん)がさまざまな形で便宜供与をサービスでしてくれていたのですが、それが自社製品の処方の安全性や正しい使い方の啓蒙の一環なんです、といっても自分もそんなアカデミックな話をしてくれたMRさんは極めてまれ。

 

 むしろ、一緒に勉強会とかちょっとしたモノをくれたりするので、それに付き合っていただけという感じがしないでもないのです。

 

 今の時代、情報はネットが早く、それに合わせて医師もだんだん、海外のニュースや他の施設での使用についてお互いに知ることが可能です。単にセールトークだけならばお断りという時代になってきた・・・と気づいてくれるといいのですが。大学の場合、企業から講座開設の寄付金をもらっていたりなかなか難しいのでしょうかね。

 

 

気が向いたらお願いします→   なかのひと

 

『周産期医療の崩壊をくい止める会』のワンクリック募金もよろしくです

http://lohasmedical.jp/fund/

 

-------------------------------


営業が近づきにくい医師が増え、企業は別の方法を探し始めている
BioToday.com 2009-03-26

 AMNewsによると、製薬会社の営業担当者と会うのはアポイントメントした時だけというアメリカの医師は増えており、製薬会社はそのような動向への対応として営業人員を減らし、オンラインマーケティングに力を入れています。

 American Medical Student Assnによると、今では医大の1/3以上が営業担当者と医師の面会にアポイントメントを義務付けています。

 また4人の1人の医師は営業担当者に会うのを避けています。会うことを厭わない医師でもそのおよそ40%はアポイントした時にのみ営業担当と面会しています。

 コンサルタントファームのZS Associatesによると、2007年のピーク時にはアメリカ製薬会社の営業人員は102,000人いました。

 それ以降製薬会社の営業人員は減って92,000人となりました。2012年までに米国製薬会社営業担当者は75,000人に減るとZS
Associatesは予想しています。

 営業担当者への投資の見返りも少なくなっています。PricewaterhouseCoopersのレポートによると、営業担当者の1回の訪問あたりの利益は2004年から2005年に23%低下しました。

 オンライン医薬品マーケット企業・Compass Healthcare Communicationsの長・Peter H.
Nalen氏は次のように言っています。「古い販売モデルが壊れつつある。嫌がっている医師のドアに営業担当者を突撃させる以外に医師にアプローチする他の方法があることを製薬会社は気付き始めている。」

‥> 関連ニュース
Doctors increasingly close doors to drug reps, while pharma cuts ranks / AMNews

-------------------------------

 

アメリカ精神医学会(APA:American Psychiatric Association)は製薬企業に提供されたセミナーや食事に別れを告げた
FirstWord.com 2009/03/25

 アメリカ精神医学会は3/25に、年次総会において製薬企業から提供された食事とならんで、製薬産業の支援を受けたシンポジウムを「段階的に」減らすと発表しました。精神医学会のNada Stotland会長は「我々は専門的な教育は、精神医学に関与している製薬産業とは完全に峻別されるべきだと決定しました」と説明しました。
 Stotland会長は「我々のシンポジウムすべてで偏った報告を避けるために多大な注意を払ってきましたが、我々は潜在的な資金に関する利益相反のリスクを完全に消滅する方法は、学会単独で行うことしかないと結論づけました」と語りました。Stotland会長はさらに「私たちは何もかもを製薬会社のせいにするつもりはありません、また製薬企業とのすべての関係を断ち切ろうというわけではありません。」と語りました。アメリカ精神医学会は学会での営利的な展示や学会雑誌の医薬品の宣伝、製薬企業の医師への研究奨学金を禁止しようというのではありません。

 製薬企業による食事の提供については、アメリカ精神医学会の医学部長のJames Scully最高経営責任者はこう語りました「製薬企業によって提供された食事を受け取ることは、医師の処方行動に微妙な影響を与えるかもしれないという感覚があります」。彼はさらに医学的な会合では、食事代を製薬企業に支払わせることが、かつて一般によく見られた習慣となって、許されてきましたが、「われわれが製薬企業との関係をどういう風に管理するか」について変化があり、5年前は許されてきたことが、今日必ずしも許容されるとは限りません
と述べました。

 学会の現在の規則はすでに、旅行のような高価な贈り物を禁止しています。また、製薬企業に対して、学会での医学教育をする場合、専門領域外で行うことを要求しています。

------------------------------
参考記事

NYTimes にも掲載されていますた。

The American Psychiatric Association phases out industry-supported symposia
fiercebiotech.com

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (1)

 医療訴訟と言うと、かなり「医療サイド」のミスを厳しく問われたりして、非常に多くの医療事故が生じ、訴訟で次々と医師が敗訴しているかのように報道がなされていますが、下記の記事をよんでみたところ、非常に数は少ないのです。

 

 民事訴訟は年間15万件程度、医療裁判はその1%以下の1000件くらいです。

しかし、そのことについてはよくわかっていない部分も多いですし、患者さんもそして医療者側も、医療訴訟の概要を知りません。

 

 ある製薬会社のサイトにこんな記事がありました。本来ならば医師向け専用ということでしょうが、もっと世間全体に知られてもいいと思います。常識的には毎日医療訴訟の結果、医師が断罪されているかのように勘違いしていましたが、実際はこんなものでした。

 

 

気が向いたらお願いします→   なかのひと

 

『周産期医療の崩壊をくい止める会』のワンクリック募金もよろしくです

http://lohasmedical.jp/fund/


------------------------------------

 



医療現場のリスクマネジメント


第1回 日本の医療事故の現状と問題点


第1回 日本の医療事故の現状と問題点
 日本大学医学部社会医学系 法医学分野 教授(研究所) 押田 茂實 先生

1 医療事故をどう捉えるか?

■医師と患者さん・ご家族との間にはギャップがある
  医師は医療について教育を受けているわけですが、患者さんやご家族は病気や医療について系統だった知識がなく、両者にギャップがあることをまず認識する必 要があります。患者さんやご家族は、実際に自分の身に降りかかっている病気が今後どのように変わっていくかということに大きな恐怖をもっていますが、正確 な知識や対応方法については理解できていません。
 そのため医師は最初の段階でこの部分のギャップをしっかりと説明して埋めておくことが非常に重要なのです。 

■患者さん・ご家族に信頼してもらうことを一つの目標とする
  これは言うのは簡単ですが現実には難しいものです。いくら医師が説明しても、医療について素人である患者さんとご家族が医療従事者と詳細な部分に関して同 程度に理解できるわけではありません。まず大筋を分かっていただいて、あとは信頼してもらうということを一つの目標にしなければなりません。
 実際悪い結果や予想外の結果が出た時、やはり患者さんやご家族が反発することがあるので、同席したご家族の理解を得ておくことが大切です。 


2. 医療事故イコール医療過誤ではない! 

年間100万人を超える人が病気で死亡
実 際、去年1年間で100万人を超える人が病気などで死亡しています。ガン(悪性腫瘍)で30数万人、心臓疾患で約16万人、さらに脳疾患で約14万5千人 が死亡しています。つまりどんなに最先端の治療、あるいは適切な治療を受けても年間に60万人以上の人がこの3種類の病気で死亡しています。
医療従事者が一般の方々に対してこの事実をどう説明するかが大きなテーマであり、医療従事者には両者の認識のギャップを埋める努力が求められています。

■過失によって生じた“医療事故”のみが“医療過誤”
 “医療事故”と“医療過誤”はどこが違うのでしょうか?医療事故というのは医療に関連して生じた予想外の事故を言い、予期したことは副作用なのです。
たとえば、腹部の手術で腸が癒着するというのは予期したことです。ですから“医療事故”イコール“医療過誤”ではありません。
  “医療過誤”は過失によって生じた“医療事故”のみを言います。“医療事故”と“医療過誤”を混同している人が多いのですが、患者さんとご家族と医療従事 者との話し合いは決してうまくいきません。そのため医療従事者は一般の方々に対して“医療事故”と“医療過誤”を混同しないような啓発活動を行う努力が必 要です。

■“医療事故”と“医療過誤”と混同している!
 医療の特徴を理解せずに、“医療過誤訴訟”という言葉を不用意に使ってしまっている場合があります。“交通事故裁判”とは言いますが、“交通過誤裁判“とは決して言わないことからもこの違いは明らかです。

3. 医療紛争はどれだけ起きている?

■国内で約1万件の医療紛争が起きている!
 “医療訴訟”は、2004年がピークで1年間に約1000件起こっていました。現在は少し減って900件台です。
 もし100件の医療紛争が起こったとすると、患者さんやご家族がクレームをつけただけで終わるのが約30件、数万円程度のお見舞金で済むケースが約40件、弁護士を立てて大金の示談金が成立するのが約20件、残りの10件が医療裁判になります。
つまり日本全体で、“医療訴訟”の約10倍の約1万件の医療紛争が起きていると推測されます。

■100件の“医療紛争”のうち、裁判に持ち込まれるのが10件、
患者さん側が勝訴するのは1件

 もし100件の“医療紛争”があったとすると、裁判に持ち込まれるのが10件で、そのうち和解が5~6件、裁判の中止が1件、実際に判決までたどり着くのが3件しかありません。
  判決が出た3件のうち、患者さん側が勝訴して損害賠償金が認められるのが1件です。実際に裁判を起こすとなると、裁判には弁護士費用など、多額の費用が必 要であるにもかかわらず、患者さん側が判決で勝てるのは医療紛争の100分の1というのが悲しい現実だとマスコミは報道しています。
 しかし、よく分析してみると、100件の医療紛争のうち、見舞金(40)・示談金(20)と和解(5~6)も金額は別にして医療側がお金を支払っています。

4. 実際に医療事故が発生した時、法的にどうなるか?

■医療事故の詳細な検討
 実際に重大な医療事故死亡例が発生した時に、刑法で問題となるようなケースは24時間以内に警察署に届け出て、司法解剖を行う、あるいは専門家である臨床医に詳細に検討してもらう、場合によっては専門家が鑑定を行います。
医療訴訟は、最終的には民事裁判として裁判官が判決を下す、あるいはその前に和解するということになりますが、その時には専門家が鑑定する場合もあります。
 この辺については現在流動的であり、大きな裁判所では医療裁判専門の民事裁判のための専門的な裁判官が担当するというシステムが動き始めています。

■医療過誤が発生した場合に問われる法的な責任とは?
  医療過誤が疑われるような医療事故が発生した場合、法的な責任として、刑法の業務上過失致死傷罪に問われるかどうか、損害賠償の訴訟が起こるかどうかが、 争点となります。さらに刑法で有罪になると、医師法に基づいた行政処分として、医師の業務停止、あるいは医療職の業務停止などが検討されています。

第2回 医療事故の真相究明は意外に難しい

■医療の特性と医療統計的事実をよく踏まえた議論も必要
  医療において発生する死亡・後遺症・合併症などの悪しき結果は、患者さん側の方から見ると、突然自分の身に起こった不幸だと思うわけです。日本の医療統計 では、1年間で100万人以上の人が病気で死亡しており、団塊の世代が60歳を迎えたことを考慮すると、20年後には今の1.5倍、160万人ほどの人が 1年間に死亡することが予測されます。我々は医療の特性とこのような医療統計的事実をよく踏まえた上で医療事故に関して議論しなければなりません。 

■医療事故の真相究明には難しい点がある
  殺人事件の真相究明と医療事故の真相究明とは全く異なります。殺人事件では強制捜査をして、例えば、被疑者が殺人を否認している場合には、解剖結果を含め て科学的な証拠で真相究明をしますが、医療事故の場合には、まだ生きている人を切り開いて調べることはできないわけですから、真相究明を難しくしていま す。

 も う1つの真相究明の難しい点は、病気を持っている人が亡くなるということです。例えば、ガン末期で亡くなる患者さんの最後の様子は、一般の方が思い描いて いるような様子とは異なり、吐血して亡くなるようなたいへん辛い場合もあります。一般の方がこのような医療現場の真の姿について知る機会がほとんどないの が現状です。
  実際には事故が起こった後に、原因を調査しても全ての原因が分かるわけではありません。それはなぜかというと、患者さんが存命している場合には、生体解剖 をすることはできませんし、亡くなった後にご遺体を解剖しても形態学的な変化はわかりますが、機能的な現象は解剖しても解明することが難しいのです。医療 の場合には診療記録、カルテや処方せんなどの診療に関する記録がありますが、これらを調べても直ぐに原因が解明できない場合もあります。 


■「真相」が医療従事者側と第三者で食い違う場合がよくある
  真相究明の場合には、我々の経験では、臨床医が考える事故の真相と第三者が調査した真相が食い違うことがよくあります。やはり臨床医には、医療従事者側に とっても患者さんとご家族の側にとっても起こって欲しくないと思う気持ちがあるからでしょう。医療事故の真相究明は、第三者が種々の可能性を考えて実証し ていく作業ですから、そう簡単ではありません。一目見ればすぐにわかるものではなく、1年、2年かかかって真相が究明される場合もあります。

■全ての医療行為において事故が発生する可能性がある
- ニアミスが発生した時に予防対策を見直す - 
  医療の全てのプロセスにおいて事故が発生する可能性があります。つまり注射を1本するだけでも、予想外の反応が患者さんに起こり得るのです。そういう点 で、事故の結果の分析も大切ですが、全ての医療行為において事故が発生する可能性があるので、ニアミスが発生した時に予防対策を見直すことが重要です。

このページのトップへ
■患者・家族と医療関係者・医療従事者の意識のズレが紛争の原因の1つ

  実際に予想外の出来事が起こった時の一つの大きな問題は、その予想外の出来事が本当に予想できないことなのか、ある程度起こるかもしれないがその可能性が 非常に低いものなのか、あるいは元々病気なのだから仕方がなく我慢してもらうことなのか、これらに関する医学知識の違い、あるいはそれを予測できてている かどうかに患者さんやご家族と医療従事者の間にズレが生じていることです。このズレが紛争の原因の1つとなっています。 
  自分の家族に何か予想外のことが起こると、医療従事者が何かミスをしたとまず疑う傾向がみられます。人はどう生き、最後にどのように死んでいくかというこ とについてもっと深く議論する必要がありますし、医療従事者は、一般の人に現場で起こっていることをもっと理解してもらうように啓発活動を行う必要があり ます。

■患者・家族に対して分かりやすく説明することが大切

 多 くの臨床経験をもち、臨床データを科学的に分析している医療従事者は、この患者さんにはこういうことが起こるかもしれないということをあらかじめ予測でき ます。できるだけ医療のリスクを事前に予測し、そのリスクに関して患者さんのみならずご家族にもきちんと説明をしておくことが大切です。

  予想外の出来事が起こった時に、患者さんやご家族はまず、真実を知りたいという想いから、その原因は何かという疑問を持ちます。医療従事者がその疑問に答 える過程において不誠実であると感じられる対応をすれば、「真実を述べていない、何か隠している」と疑いを持ち、紛争に発展しかねません。まず医療従事者 は、患者さんとご家族に対して、正確に事実を隠さずに、起こっていることについて分かりやすく説明することが大切です。 

医療過誤による損害賠償額について

 人身損害の場合の損害賠償額の算定は、交通事故を中心に裁判所で基準化されてきました。交通事故の場合は、元々病気を持った人が事故にあうことは少ないため、計算は比較的簡単です。

 一方、医療過誤による損害賠償額算定は交通事故基準に準じて認定されることが多くなっていますが、元々の病気のために何歳まで生きられるか、そして今回の事故のためにそれが何歳早まったかを判定するのは、交通事故に比べると遥かに難しい問題です。

 裁判官は健康な人、例えば会社員とか公務員は何歳まで給料がもらえると考えているかというと、67歳まで給料がもらえると昔から考えています。

 しかし、重篤な脳や心臓疾患の場合には手術がその時に成功しても何歳まで生存するか予測できない場合には、裁判官は現実的には1/2に考えることが多いのです。

■RとLの話し
  例えば右左を間違えて手術をしたケースがありました。患者さんを診察する時も、手術をするときも患者さんと向かい合わせになって、患者さんの右側は医療者 側からみると左側になります。向かい合っていることで思い違いが起こることがあります。実際に右左ということで起こる問題としては、まずレントゲン写真で 右手を撮影して欲しいと頼んで、そのレントゲン写真を見ると反対側の左手が写っているということがあり得るわけです。

 そ の理由としては、結局右、左という漢字は形が似ているので、早くスラスラと書くと右という字と左という字を区別できない場合があり、それを間違ってそれを 読み取ることが一つの原因です。もう一つは思い込みで右左を確認しないでレントゲンを撮る場合も考えられます。場合によっては、レントゲン写真は指示通り 左を撮っていても、写真には右と表示が出ている場合もあります。 
  実際に医療の世界で右左という字を漢字で書くと大きな事故につながることから、今の医学教育では、右の方を“R”、左の方を“L”で表示をするように教え ています。しかし、看護関係の会議でその話をした時に、挙手した看護師さんが「先生!Rは右ですか、左ですか」と聞かれ絶句したことがありました。

固定リンク | コメント (2) | トラックバック (1)

 

 日経新聞の【蘇れ医療】【ザ厚労省】の連載が楽しみです。また、日経ネットPLUSには様々な方に対するインタビュー記事など非常に充実しています。

 

 さまざまな国民の期待に応えていかねばならないのは、医師も厚生労働省も同じだと思います。国民の期待にこたえるため規範が求められます。また、 その結果について説明責任があります。年金問題、医療費抑制、医学部定員数削減の結果、このような形になった・・・あわてて医療費を増やすよりも「行政 府」としての責任をきちんと果たす必要があると思います。

 

 さて、メディアとて「国民の期待」にこたえねばなりません。

 

 最近は地球の裏側からでも日本の情報が一瞬のうちに手に入ります。問題は多様な情報源を探すとき、非常に危険なのは「ニセ情報」をつかまされることもある。そしてそれがメディアの方でも騙されてしまいかねないということです。

 

 先日、M3.comのイッシー31先生のブログ「下界の外科医」の記事が、そのまま別の方のブログに転載されており、「ニセ医師」騒ぎ(「悲しいっす」あるいはうろうろドクター先生の「Dr.ゆうじとやら、他人の記事をパクる奴は医師の風上にもおけねえぜ!」参照)があったばかりです。幸い、削除されましたが、偽物はまだ他にもいるようです。

 

 ネットで医師として発言していると、一般の方にはそういう情報の判別をつける力がないため、本物の医者だと思って騙されやすいという点で、非常に 気をつけねばなりません。m3.comは医師の方しかブログを開設できないようなので比較的安全なようですが、一般の方のブログが多いサイトではいろんな 形で「ニセモノ」を平気で詐称する方があとを絶ちません。

 

 2chのような匿名でも書き込みが可能な掲示板などに流れる情報には公の情報以外に、通常のメディアでは扱っていない情報もありますが、これとて「嘘」が混じっている可能性があります。

 

 新聞社やテレビ局の報道内容については、報道のプロである限り、特段の信頼性が求められます。

 

 我々医療サイドでも医療ミスがあれば謝罪が必要ですが、メディア側も時間が限られた中で、一生懸命取材し、記事を書かれているのですが、裏付けを 取りきれないのに、「特ダネ」にしたいがために、一方的な意見だけを掲載したり、きちんとした客観的な報道ではなく、一方的な「メディアバッシング」を行 い、社会的な制裁を時に行うこともあります。

 

 国民がマスコミに対して期待しているのは、「情報の正しさ」だと思います。このあたりで、社長が謝罪したり、統括した方の個人責任よりも、再発防止策を考えてほしいものです。

 

 奈良県の「たらいまわし報道」もそうですが、メディアがきちんと病院側のコメントを得たうえで、報道していれば、あとで「6時間放置」だとかをこっそり削除したり、「新聞社に対して抗議が殺到」するような事もなかったと思います。

 

 「公正さ」「たしかさ」が医療もそうですがメディア側にも基本として求められていると思います。営業上、信頼を失ったメディアが学習しなければ再び事件はおきるでしょう。

 

 メディア側には新聞やテレビが果たす社会的な役割と使命、そして2chなどより優れた利点や存在意義をもう少し考えてほしいところです。ま、それでもつまらなくて売れないと潰れちゃうってのはありだけど汗。

 

気が向いたらお願いします→   なかのひと

 

『周産期医療の崩壊をくい止める会』のワンクリック募金もよろしくです

http://lohasmedical.jp/fund/

 

--------------------------------
日テレ虚偽報道、ネット依存の情報収集が裏目に
産経新聞 2009/03/24 19:51更新


日 本テレビの報道番組「真相報道バンキシャ!」が虚偽の証言に基づいて岐阜県に裏金があると報じた問題で24日、日テレの社内調査による中間報告書が公表さ れ、虚偽証言をした元建設会社役員、蒲(がま)保広容疑者(58)=偽計業務妨害の疑いで逮捕=が4年前にも別のテーマで同番組に出演していたことが分 かった。2回ともインターネットの取材協力者募集サイトを通じて出演していたが、番組スタッフは過去の応募歴を確認しておらず、ずさんな取材過程が浮き彫 りになった。

報告書や同局によると、蒲容疑者は平成17年3月の同番組で、バイアグラ購入者の1人として座談会形式で出演し、日テレ側は出演費1万円(税別)と交通費を支払った。報告書は「過去の応募歴を確認していれば、証言の信用性を判断する材料になった」と指摘した。

今回の報道では、番組スタッフがインターネットのサイトに不正経理の情報提供を書き込んでいた。久保伸太郎相談役=社長を引責辞任=は同日の会見で、「裏 金作りにかかわった人をネットで募集しており、情報ツールの使い方を明らかに誤った」「2回目と分かっていたら、どういう人物か確認できた。情報の蓄積と 活用がなっていなかった」と苦渋をにじませた。

証言者への出演費について久保相談役は「テレビでは全身を映すリスクを負わせる側面もある」と説明し、一定の理解を求めた。ただ、同局はサイトで情報を募 集する際、謝礼を「応相談」としており、報告書は「謝礼の可能性を示した取材は、報道倫理の観点から大きな問題」とした。

一方、同番組では、山口県でも裏金で元県職員にテレビを贈ったなどとする別の男性の証言に対し、1万円のインタビュー料を支払った。テレビを受け取ったとされた元県職員は日テレの内部調査に、受け取りを否定したという。

同報告書は同日の日テレ番組審議会でも示され、半田正夫委員長(青山学院常務理事)は会見で「最近の報道番組はバラエティーとの垣根が極めて低くなり、担当者もバラエティー出身者が多く、詰めの甘さにつながったのではないか」と指摘した。
--------------------------

 

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (1)

 4/11(土曜日)の夕方、ちょうど日本内科学会総会の開催にあわせて開かれます。
 会場である一ツ橋のホールは、総会の会場である国際フォーラムと離れていません(徒歩を入れても15分、地下鉄三田線「日比谷」→「神保町」で4分の距離です)、お時間がある方はぜひご参加を。

気が向いたらお願いします→   なかのひと

-------------------------------------

 

◆イベントのお知らせ◆


 医療志民の会は、閉塞的な医療の現状を打破するため発足されます。

 医師、患者、政治家など、様々な立場の人々が議論し、協力できる開かれた「場」をつくり出します。
当日は、パネルディスカッションに加え、現在動きつつある新しい運動を紹介し、交流できるブースを設ける予定です。

新しい時代の幕開けに、是非お越し下さい。

・日時 2009年4月11日(土)

・会場 学術総合センター 一橋記念講堂

・プログラム(予定)

司会:黒岩祐冶 発起人
17:00‐17:30 開場
17:30‐17:45 開会の辞(佐藤 章 発起人)
17:45‐18:00 来賓の挨拶
18:00‐18:50 パネルディスカッション
18:50‐19:20 フリーディスカッション
19:20‐19:30 閉会の辞(大谷貴子 発起人)
19:40‐20:30 ブースでの交流
・会費 2000円

・参加方法 ご参加いただける方は以下のURLから事前にご登録いただけますよう、宜しくお願い致します。
http://iryoushimin.cocolog-nifty.com/blog/symposium-apply.html

詳細に関しては、
http://iryoushimin.cocolog-nifty.com/blog/symposium.html
のシンポジウムページにて決定次第更新させていただきますので、少々お待ちください。

■パネリスト公募のお知らせ

 パネルディスカッションは、現在の医療を変えようと活動を始めようとしている人々がパネリストとして活動を報告します。
 
 しかしながら、多様な意見を主張できる場を提供するという本会の趣旨に則り、医療志民の会ではパネリストを募集しております。
 
 自薦・他薦は問いません。医療界に問題意識があり、関心のある方は3月27日金曜日までに以下のフォームよりご応募下さい。

http://iryoushimin.cocolog-nifty.com/blog/panelist-apply.html

■医療志民の会事務局スタッフ募集のお知らせ

 医療志民の会事務局では現在スタッフを募集しています。仕事は経理から事務処理まで多岐にわたりますが、当会の活動趣旨に共感いただき、ボランティアで協力していただける方は
http://iryoushimin.cocolog-nifty.com/blog/staff-apply.html
よりご応募下さい。
 
 また、医療志民の会の詳細につきましては、ホームページをご覧ください。

※当メールは転送自由です。
 当日は多数の方々にご参加いただきたいので、幅広く周知していただけると幸甚です。

******************************
医療志民の会 事務局
e-mail:iryoushimin@umin.ac.jp
ホームページ http://iryoushimin.cocolog-nifty.com/
******************************

http://iryoushimin.cocolog-nifty.com/blog/

【設立趣旨】

 日本の医療は危機的状況にあります。危機は地方の疲弊にとどまりません。大都市でも救急患者の受け入れに支障が出てきています。
 
 一方で、明るいきざしも見えています。さまざまな地域で、住民が立ち上がり、医療を守るために医療提供者と手を携えて活動をはじめました。全国の病院で医療の質を高めるための改革が進んでいます。公益法人制度改革によって、日本医師会は真の公益団体への転換を迫られています。

 元来、日本社会は弱者にやさしい社会でした。日本の医療提供者は能力が高いのみならず、その献身ぶりでも世界に知られています。日本の科学技術は人との接点が細やかです。日本は良質の医療を実現するための有利な条件に恵まれているのです。なにより、医療や介護は無駄な浪費ではなく、人生の中で誰もがいつか必要とする価値です。しかも多くの安定的な雇用を生み出します。

 日本社会は今、大きな変動期にあります。我々は、現在の危機をチャンスととらえます。我々は、医療を必要とする人々に良質なサービスを遍く提供できるよう努力いたします。医療のあり方を見直して大いに発展させるべく、活動を開始いたします。

基本方針:6つの協働
 
1)国民と医療提供者の協働:政府の持つ情報の開示を求め、医療政策の検証を可能にするとともに、政策決定過程の透明化と合理化を図る。責任の大きさや難易度を考慮して診療報酬体系を見直す。無駄を排除し、必要な資源を投入する。
2)コミュニティと医療提供者の協働:地域ごとの特性を考慮した医療提供体制を住民と共に構築する(救急、産科救急、小児医療)。
3)患者と医療提供者の協働:患者と医療提供者で情報を共有し、ともに疾病に立ち向かう。徹底した患者理解支援。
4)医療提供者間の協働:病院内でのチーム医療。地域での情報の共有。医療機関の役割分担。医療機関の間での患者に優しい受け渡し。
5)国際社会との協働:新薬・医療機器の開発の円滑化。外国の患者の受け入れ。医師教育への協力。
6)時代との協働:静的な完成型を目指さず、医療内容や提供体制を時代にふさわしいものに常に変革していく。

発起人一同

【理事会】
共同代表 大谷貴子 発起人
佐藤 章 発起人

【事務局】
事務局長 海野信也 発起人

------------------------------
 

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (1)

 「◎×だから無謀だった・・・」といった批判はなしに、このことは自分の健康を考える大切なきっかけです。

 

 考えていただきたいのは、急性心筋梗塞の原因は「肥満」だけではなく、「喫煙」「高血圧」「糖尿病」「ストレス」といった現代人にとっては非常にごくありふれた原因が重なり引き起こすことがわかっています。

 

 日本人のトップ3の死因は「がん」「心臓病」「脳卒中」の順番ですが、2007年だけで、17.5万人が亡くなっています(ちなみに悪性腫瘍で33.6万人、脳血管疾患で12.6万人が死亡)[厚生労働省 平成19年人口動態統計月報年計数(概数)]。日本人のうち、15.8%が心疾患で死亡することを考えると、これは大きい数字です。

 

  「がん」は早期発見で完治することも可能になりつつあります。しかし、心臓病は早期の治療が遅れれば、命を落とすことがあります(実際に筆者の祖父は愛煙 家でして、急性心筋梗塞で運ばれましたが、当時は血管治療が受けられる時代ではなく亡くなっています・・・故大平総理と同じころです)。

 

 幸い、今回の芸能人の方は、AEDにより危険な状況から脱し、病院で治療を受けられて現在は命に別状はないとのことでよかったと思います。

 

 ちなみに自分が診察していた方で、最年少の心筋梗塞は30歳の方でした。別に肥満でも何でもなかったこの方は実は「喫煙者」でした。それ以外は糖尿病も家族歴も一切ありませんでした(もっと調べればあったかもしれませんが・・・再発はなくお元気に退院されました)。

 

 「心筋梗塞」は発病を防止できる、予防可能な疾患です。今年の4月からJR東日本の駅構内での喫煙は禁止されるようになります。

 

 心臓病は各自が生活習慣で防げうる病気です。太り過ぎや喫煙の生活習慣を見直すチャンスだと思えば、非常に大切なことだと思います。

 

↓非常にわかりやすい解説です

■あなたが心筋梗塞になる危険度を知る■ 

 まえだ循環器内科のホームページより


↓国立循環器病センター
心筋梗塞、狭心症とその治療

 

気が向いたらお願いします→   なかのひと

 

『周産期医療の崩壊をくい止める会』のワンクリック募金もよろしくです

http://lohasmedical.jp/fund/

 

--------------------------------

 

松村邦洋さん、原因は急性心筋梗塞だった
産経新聞2009/03/23 14:27

 22日に行われた東京マラソンに参加し、一時意識不明の状態になったタレントの松村邦洋さん(41)は、急性心筋梗塞による心室細動が原因だったことを23日、所属事務所が明らかにした。

 松村さんは病院搬送中に意識を取り戻しているが、心疾患の検査処置には安静が必要なため、医師による鎮静処置を施されているという。

 また、合併症を伴う危険があるため、確定した病状を現時点で公表することができず、近日中に医師を伴って報告したいとしている。

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

 「セレブになりたい」「利益を出さなければ」 などと語りながら、患者の安全を無視し、営利に走り続けた医師・・・。

 

 こういう「非常識」な医師が、医療従事者の信頼性を落とします。できれば、こういう人を警察よりも真っ先に医道審議会や眼科学会などで「査問」に かけていただいて、「免許停止」などの行政処分の勧告、全国の医学部に巡回させて悪い見本として「こんな医者のマネをしてはいけません」と引き回しとかで きませんかねぇ。

 

 いえ、もちろん最後のは冗談ですが。社会的制裁はある程度こたえたと思いますが、営利目的で患者さんを食い物にしてはなりませぬ。きちんとした謝罪も必要ですし、医療事故です。

 医師は国から与えられた資格によって、他人にメスを入れたりする許可がなされている特別な職業です。

 

 それにふさわしくない行為をした場合、医療界にとっては自浄作用が求められます。こういう医師を再び出さないためにもきちんと「検証」し。同じ事故を再発させないため、全国の同様の手術をする自由診療を行うクリニックに対して警告がなされるべきでしょうね。

 

気が向いたらお願いします→   なかのひと

 

『周産期医療の崩壊をくい止める会』のワンクリック募金もよろしくです

http://lohasmedical.jp/fund/

 

 

【衝撃事件の核心】人気のレーシック手術…「薄利多売」に走った眼科、ずさんな衛生管理
産経MSN 2009.3.22 17:00


近視を矯正するレーシック手術を受けた患者が角膜炎などに集団感染した東京・銀座の診療所「銀座眼科」。保健所がこれまでに確認した被害患者の数は75人 にのぼり拡大の一途をたどっている。4年ほど前から急速に広がった人気の手術だが、自由診療のため価格競争が激化。同眼科の溝口朝雄(ともお)院長は安い 価格設定で多くの患者を集めていた。「薄利多売」を求めた結果、衛生管理がおざなりになったことが被害拡大の原因とみられる。その実態とは…。

滅菌装置の不具合、消毒なし…考えられない被害

《他のクリニックに比べてかなり安いために不安に感じる方もいらっしゃると思いますが、機械や手術内容は最高のものと自負しております》《皆様の見える世界が少しでも快適になるお手伝いができれば、この上なくうれしく思います》

2月25日に集団感染が発覚するまで開設されていた銀座眼科のホームページ(HP)にはこんなうたい文句が並んでいた。

手術費用は両眼で9万5000円~10万5000円。両目の手術で約10万円~50万円といわれる市場の相場で、最も低い価格帯は眼鏡やコンタクトレンズ の煩わしさを嫌う20~30代の若い世代には魅力的な価格だ。高級感漂う銀座という立地も、患者に安心感を与えていたのかもしれない。

しかし、後遺症に苦しむ患者からしてみれば、「快適な世界」からはほど遠かった。

中央区保健所が銀座眼科から提出されたリストを基に把握している被害患者数は、昨年9月から今年1月に手術を受けた約639人のうち75人(17日現在)。

保健所が医療機関を通じて39人の病状調査を実施したところ、20人が重症と診断されていた。このうち1人は、進行すると失明する可能性がある網膜剥離(はくり)。4人が角膜移植を検討しているという。

「ブラジルやアメリカで同じような集団感染が発生したことがあったが、日本ではありえない被害。衛生管理に相当な問題があったはずだ」

日本眼内レンズ屈折手術学会の常任理事で東京歯科大水道橋病院眼科のビッセン宮島弘子教授は驚きを隠さない。

銀座眼科をめぐっては、保健所の立ち入り調査で、手術器具の滅菌装置の不具合▽手術時に手をアルコール消毒しない▽手術室に手洗い場がない-などずさんな衛生管理が明らかになっている。

「被害の発生は昨年9月23日から今年1月27日に手術した患者で発生した」。溝口院長は保健所の調査にこう説明した。

溝口院長によると、昨年9月23日に手術した患者が角膜炎を発症したことで初めて感染症の発生に気づいたという。当初は非感染性の角膜炎と考えていたが、その後も発症する患者が相次いだため、感染性を疑い始め、独自に感染源を調べ始めたのだという。

「自分で医療器具の洗浄など試行錯誤し、改善できるものと思っていた」

今年1月中旬に手術器具の滅菌装置を交換したところ、1月17日に手術した患者を最後に感染症の発生が止まったとしている。

しかし、感染源を特定しないまま、4カ月にわたり手術を続けたことが、被害を拡大させた最大の理由だ。

「値段を下げて手術数をこなす『薄利多売』で、衛生面についておろそかになっていたのではないか」。都内の別のクリニックの医師はこう指摘する。

手術翌日に目の痛み…訴訟沙汰のケースも

「銀座眼科では、昨年9月以前から感染者の存在を認識しながら、隠していた可能性が考えられる」。被害患者救済のため、無料電話相談を実施している弁護士グループ「医療問題弁護団」幹事長の石川順子弁護士は、こうみる。

同弁護団が3月9日から実施している電話相談には、昨年9月以前にも、緑膿菌による角膜潰瘍(かいよう)などを発症した患者25人から相談が寄せられているのだ。1月27日以降に手術を受けた6人からの相談もあった。

これまでの相談件数は計108件(18日現在)。このうち、溝口院長の手術を受けた患者とみられる75人から聞き取り調査を行った結果、銀座眼科で手術を受けた後、他の病院で受診している患者は87%を占めた。また、何らかの後遺症の診断を受けた人は56%に上った。

19年7月の手術で感染症を発症した東京都内の自営業の男性(34)は今月9日、溝口院長を相手取り、約2000万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。

男性によると、レーシック手術翌日から目が痛くなり、2日後に別の病院で角膜潰瘍(かいよう)と診断されて18日間入院。手術を受けたが、視力が低下する被害に遭った。

「溝口院長は手術に対するリスクを一切、説明しなかった。医師としての責任が軽すぎると思った」

男性は怒りを込め、提訴理由を話した。現在も左右の視力の差が大きく、遠近感が取りづらい状態で、仕事にも支障をきたしているという。

池袋でも健康被害…「消毒簡単で不安だった」

東京都中央区6丁目。銀座眼科は「シャネル」や「ルイ・ヴィトン」など海外高級ブランドショップが軒を連ねる並木通り沿いの好立地に位置している。

別の医師から設備を引き継ぐ形で開設し、「物件の賃貸料や設備の維持費だけでも300万円以上はかかっている」とある関係者は明かす。

銀座眼科のパンフレットや関係者によると、溝口院長は埼玉県出身。平成元年に産業医科大卒業後、自治医科大眼科教室に入局、東京医科大眼科助手を経て16年5月、さいたま市内で医療法人社団アイサージョンを設立。17年4月に埼玉・浦和に「溝口眼科北浦和」を開設した。

20年3月には、東京・池袋に「池袋東口アイクリニック」と「池袋アイハートクリニック」を開設した(いずれも20年6月閉鎖)。池袋の2つのクリニックはレーシック手術と手術前の検査をそれぞれが分担し、1つのクリニックとして機能していた。

いずれも開設者は、溝口院長とは別の医師の名前で届け出されていたが、クリニックの賃貸契約が溝口院長名義で結ばれるなど、事実上の経営者とみられる。

人通りの多い、駅に近い好立地を選び、クリニックを宣伝するHPの作成にも力を入れていたという溝口院長。「経営のセンスは結構あったのでは」と周囲は語る。

関係者によれば、アイクリニックはレーシック手術専門で、すべての手術を溝口院長が1人で行っていた。緑内障などを専門とする溝口眼科でも、クリニックの窓にはレーシック手術の広告を張り出し、客集めをしていたという。

昨年6月にアイクリニックで手術を受け、角膜炎を発症した会社員の女性(35)は溝口眼科の広告をきっかけに、アイクリニックで手術を受けた。

「狭い雑居ビルの中にあって驚いた。手術の時には患者用の手術着もなかったし、目などの消毒も簡単で不安に思った」と女性は振り返る。

アイクリニックは、20年3月の診療開始から約1カ月間、保健所に開設届を提出しておらず、医療法違反の疑いも持たれており、池袋保健所が当時の患者に被害がなかったか調査に乗り出している。

「違法かどうかは分からない。取材は受けられない」。溝口院長は産経新聞の取材にこう答え、足早に立ち去った。

「セレブになりたい」…医療機器の維持費は年間800万

プロゴルフのタイガー・ウッズ選手ら有名スポーツ選手が受けたことで世界的に知られるようになったレーシック手術。

日本では平成17年ごろ、美容整形系のクリニックが取り入れ、キャンペーン展開したことで人気が高まった。

ビッセン宮島教授によると、手術件数は10年ほど前に2万件ほどだったが、現在は30万~40万件と推定され、手術可能な医療施設は200カ所程度。手術 にかかる時間は15~30分程度だ。自由診療のため価格競争が激化し、手術料が安くなったことなどが手術数の増加の背景とされる。 「適切な処理がなされ れば、手術は99・9%安全。感染症の発症リスクはまれです。国内に失明例は報告されていません」。ビッセン宮島教授はこう言い切る。

銀座眼科の集団感染については、「感染症が1件でも発生したら、原因を特定するまで手術を中止するべきだった。手術室の衛生管理は医療の基本」と語る。

「レーザーそのものが1台約5000万円と高額で、維持費だけでも年間800万円かかる。価格の安い医療機関は手術を相当こなさなければ利益がでないでしょう」とも。

実際、溝口院長は周囲に「セレブになりたい」「利益を出さなければ」と話していたという。

固定リンク | コメント (1) | トラックバック (1)

 

 タイトルには雲とありますが、要は今のところ空の上で、問題ははるかに遠いこと、あるいは今後はクラウドコンピューティングが進むであろうことからそうしました。

 

 昨日のブログのトピック「電子カルテにもSaaSとかないのかな?」
http://blog.m3.com/TL/20090318/_SaaS_

 と書いたら、どうも厚生労働省の通達で、ダメらしい。診療所や病院が独自でサーバを導入したり維持費用とかを考えたら、今後、そんな規制は意味ない。

 参入規制だし、病院や診療所ごとにIT加算がほとんど認められない上に、そのために個別の導入コストがあるため、やたら高くつくのである。

 電子政府とかも個人情報の保守も必要だけど、利便性を考えたら病院ごとに整備させるんじゃなくて、必要なデータをまとめて管理したらいいのに・・・です。

 そういえば、元上司が電子カルテを導入するにあたって、不慣れなPCの導入やデータ保存のために苦労していたなぁ・・・です。


 それにしても、くだらない「通達行政」。官僚によって、電子カルテが不便なままなのは厳しいことです。

 

 病院から離れた医師にとっては、世界中どこからでも必要な患者情報が取り出せること、看護師やスタッフから患者さんの容体報告を聞き、データやレントゲンをチェックし、指示を自宅からでも行えるのが理想です。

 

 外来のカルテや病棟のカルテ画面は、自分の好みに「セット」が可能で、どこの病院でも、自分が利用するPCが、自分の好みの画面で立ち上がるこ とが必須です。いわゆる表側は自分用にカスタマイズできること(一般画面はあるにせよ、ブログのスキンと同じで多種多様なデザインが可能)、共通PCでの アクセスについてはアクセス履歴がすべて残ること。そして個人データを保存するのは患者の利点とバランスを考えて、サーバを院外におくことで利用が促進さ れること(2次医療圏ごとにサーバをおくなり、もと県単位で必要なものを一個とそのバックアップを一個他の場所におけばいい)。

 

 

 そんなのは夢かもしれませんが、そういう夢もまたあっていいでしょう。何せ、いまの電子カルテ業者さんにとって、その方がいいサービスが可能でしょうから。


----------------------------
http://www.meducation.jp/seminar/index2292.html

■2■ 医療現場へのSaaS導入のロードマップ 【14:00~15:25】
(財)医療情報システム開発センター 町田 悦  氏

最近は、SaaS(Software as a Service)を導入し、そのメリットを享受する企業が増えてきた。一方、医療分野では、サーバーを医療機関等に置くことが厚生労働省の通知で決められ ており、現状では医療分野にSaaSを導入することは非常に困難である。しかし、厚生労働省においては、SaaS解禁に向けた検討が進んでいる。そこで、 本講演では、SaaS解禁を念頭に置いて、
SaaS導入に向けた医療分野に特有な課題を洗い出し、解決法を探る。その上で、医療分野にSaaSを導入するメリットとデメリットを整理する。更に、SaaSによってもたらされる医療の新たな展開に言及したい。

1.医療現場へのSaaS導入の前提条件
(通知・ガイドライン等)
2.医療現場へのSaaS導入の要因
3.乗り越えなければならない課題
4.SaaS導入のメリット
5.SaaS導入のデメリット
6.SaaS導入による医療の新たな展開

--------------------------------------

 

 あんまり電子カルテの利点については「利用」されたことがない人には関係ないかもしれませんが、急病になった時、かかりつけ医の先生以外の診察を 受けたり、処方の情報を「お薬手帳」を忘れたりしても、危険な飲み合わせを防止したり、過量投与や誤投与を防げる、ついでに過去のデータと比較することが できるなどあります。

 

 まぁ、入力する側になりかねない医師サイドにとっては診療に集中できない、あるいは手書きの方が楽といったこともあるかもしれませんが、逆に電子化を急ぐ「必要」を感じない点としては、患者さんの個人情報を守る立場だからかもしれません。

 

 医療費の無駄遣いは他の病院でのデータ利用ができないための「検査」の繰り返し以外にも、無駄な薬の投与もあると思います。いずれにせよ電子化による負担を削減することで、医師が医療に専念できるようにするといいですね。

 

 医師の労働生産性を高めるためには、くだらない電子カルテのお守や、サーバ管理などは、アウトソースは必要でしょう。

 

 そして、大切な電子カルテの入力など入力のプロの採用が可能となり、最終的に医師が確認、承認後に治療や処方行為がなされるように変更して、医療と事務はそれぞれ分業を進めるべきでしょうね。

 

 というか、データ保守とか入力のために医師がいるんじゃなくて、医師は患者さんのためのもの・・・電子カルテでさらに医師不足が加速するようなら、意味ないね。


気が向いたらお願いします→   なかのひと

 

『周産期医療の崩壊をくい止める会』のワンクリック募金もよろしくです

http://lohasmedical.jp/fund/


 

↓この先生も投稿されていました。

----------------------------------

 

臨時 vol 60 「医療のIT化について考える」

MRIC 2009年3月19日発行

       ―代務医招聘および医療経済的な観点から―

                  久美愛厚生病院 産婦人科 野村麻実


■はじめに

 

 山あいの小さな町にある当院でも、とうとう時代の波に抗いきれず電子カルテ化への第一歩を踏み出した。オーダリングシステムの導入に向けて日々研修が行われている。

 

 断っておくが、筆者は、研修医としての在籍病院ですでに紙カルテからオーダリングに移行した世代である。その後病院を点々とする中で、様々な病院 で電子カルテ導入への過渡期に勤務し続けてきた。大学院時代に多くの病院に代務に出向いた際も、すでに電子化されている病院が多く、コンピュータシステム 化ということそのものにアレルギー反応を持っているわけではない。電子カルテ化による多くの功罪も体験してきている。

 

 最初は慣れなかった電子カルテ化も、慣れてみれば便利と思えることも少なからずあった。同時にシステムダウン時など不便を感じる場面も少なからず あった。しかし最近の医師不足や一般病院の4割超が赤字(福祉医療機構:『病医院の経営分析参考指標(07年度決算分)』)という状況の中では、オーダリ ング・電子カルテ化といったIT化一連の動きは好ましいものとは思えなくなってきた。

 そういった観点から医療のIT化の現状について私見を述べたい。


■代務医招聘における問題点

 

 医療過疎化地域では常勤医の数が減りつつある。残された常勤医が少なくなればなるほど、日常業務の負担に加え、時間的・行動範囲の拘束が慢性的に 続く状態となり、医師不足に拍車をかける悪循環は、指摘するまでもない。このような地域では代務医の招聘が出来るかどうかが、常勤医の士気や体力・精神的 な支え、ひいては地域医療の存続の鍵となっている。ささやかな息抜きと休日がなければ、僻地での勤務は続けられない。

 

 ところが電子カルテやオーダリングは、この代務医招聘の観点からは好ましいことではないことに気づいた。

 

 現在、日本の多くの医療機関では、実に様々なコンピュータシステム会社によるそれぞれのオーダリング・電子カルテフォームを導入し、同じ「富士 通」であっても病院ごと、値段ごとにシステムが違うといった有様である。比較的簡単な採血指示でさえ、代務の立場になってみれば、「調べたい」項目を探し 出すのが大変で時間と手間がかかる。結果を見ることもおぼつかない。点滴指示ともなれば、筋肉注射なのか皮下注射なのかなどの投与方法をはじめ、時間当た りの滴下速度、何時から投与するのか、一日何度投与するのか、入力せねばならないことがたくさんあり、一体何が何だかわからない状態なのに、残念ながらこ ういったシステムは「入力しなければならない項目」のどれか一つでも抜けているとオーダーできないので、「何を入力していないのか」が判明するまで次の状 態に進めない。

 

 そのうえ通常の場合、オーダリング作業は普段「医師」のみが行っている。看護師さんに尋ねても、「私達にはわかりません」との返答しかかえってこ ない。代務医が「専門医」として常勤医と同じ能力を持っていたとしても、常勤医の代わりにはまったくなりえない。かくして外来は行き詰まり、四苦八苦の 末、大量の患者さんを待たせるという最悪の事態となる。また夜間の産科当直勤務のみであっても、産婦人科の場合は緊急帝王切開という一刻を争う状態が突発 する。速やかにオーダーがかけられないのは致命的ですらある。


■認識されていないIT化のストレス

 

 ところが多くの病院では、常勤医が固定されてしまっているために、独自のコンピュータシステムの弊害が認識されていない。「常勤医さえ慣れてしま えばいい」という観点しか持っていないせいであろう。コンピュータシステムは、巨大な「ローカル院内ルール」であるという観点が病院経営者・運営者には必 要なのではないだろうか。代務医招聘のためには、コンピュータシステムを説明でき、夜間緊急時であってもかわりに実行できる常勤医以外の誰かが必要なので ある。

 当院では幸いこのような観点から、オーダリングは(今のところ産婦人科に限って)看護師による入力となっている。今後医療過疎地域では代務医招聘の観点から、IT化に際して考える必要もあるのではないかと考えている。


■医療経済上のIT化問題

 ところで、病院の収益は「医師の指示」によって成り立っていることがようやく理解されてきた。もちろんコメディカルがいなければ院内業務は回らないが、診療報酬そのものは、外来であれ入院であれ、最初に「医師の指示」が必要なのである。

 

 つまり医師が単位時間に何人診ることができるかによって外来・入院収益は大きく変わる。入院・手術対象者も患者数に対して一定の割合でしか含まれ ていないから、よほど紹介率が高くない限り外来数に比例する。医師が数多くいてたくさんの外来患者を見ることが出来る恵まれた病院以外では、数多くの患者 を、できるだけその医師の能力に見合った時間でたくさん診断して指示を出していく以外に、利益を生み出す方法はない。医師一人一人の稼働率が病院全体の収 益を決めているのだ。

 

 しかし多くの病院ではコンピュータシステムによって逆の現象が起きている。オーダリングは医師が行わねばならないと規定され、採血から細菌培養、 次回受診予定まで医師が入力する。本来の診察行為に長く時間を取ることは患者さんにとっていい医療となるだろうが、コンピュータの入力のために医師が時間 を割くことは、あまり意味があることとは思えない。

 

 医療安全上、「医師の入力が必要」と言う人もいるだろう。しかし実際には、2008年の10月に徳島県で、新任のコンピュータ入力に慣れていない 医師が「サクシゾン」処方のつもりで、筋弛緩剤「サクシン」を入力してしまったという事件も報告されているし、筆者自身も「バイアスピリン」を入力しよう として「バイアグラ」を入力していた笑えない事件もあった。(産婦人科患者にバイアグラはありえないと薬剤師からの連絡で事なきを得た。)手書きよりも簡 単に間違った情報が入ってしまいやすいというコンピュータシステム自体の欠点についても、特に留意する必要がある。システムに慣れていたとしても、時間に せかされている状態では間違いはいつでも起こりうるのだ。誤投薬や誤指示は「誰が入力するか」よりも「二重チェック」や「三重チェック」という、まだるっ こしいが確実な方法で行うより他にないだろう。

 

 アメリカでは所見のカルテ記載は、医師の口述を医療秘書が筆記なり入力する方式で行われている。日本の医師がコンピュータ相手に格闘している姿は、医療経済的にも非常に非効率的であるといわざるをえない。


■終わりに

 

 2009年3月9日、日本経済新聞の社説に「レセプト完全電子化を後退させるな」という記事が掲載された。医療の電子化が、「請求事務の効率化や 人件費の圧縮を通じ、国民医療費の増大を抑えるのに役立つ」とし、電子化が普及しない理由として「専用のコンピューターシステムを導入するための投資負担 が重い、高齢の医師が経営する過疎地の診療所は電子請求の作業に十分に対応できない」とある。しかし人件費を減らせたとしても、医師が病名入力をしている 病院では(総合病院の多くでは現在そのような運用が多い)却って医療収入は減少してしまう。また電子化したとしても、そのソフトやフォームが全国統一され ているのであれば患者情報の受渡しで利点も感じられるだろうが、現在のところ上記のような状態で各病院同士での互換性はない。医療現場に負担ばかりが増え ている状態は、2009年3月11日日本医師会の定例記者会見のとおりである。
(http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20090311_1.pdf)

 

 厚生労働省は電子レセプトをなんとか普及させるために、「代行請求」の仕組みを構築すると共に、負担軽減策として、各医療施設に電子媒体への移行 のために従事者を雇用してもらい「ふるさと雇用再生特別交付金」を交付する案を提唱しているという。(日本医事新報 2009年3月7日号 p32)残念 ながら、現在の医療施設は度重なる診療報酬改悪のために、コンピュータ化できる余力も、余分の人件費を払うほどの体力もない。医療現場にはすでに他業種の 雇用まで支えるほどの体力はないということを、まだ厚生労働省が自覚していないのは残念なことである。

 

 

固定リンク | コメント (1) | トラックバック (2)

SkyTeam
More プロフィール

Search

Calendar

<< 2009/03 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

新着コメント

新着トラックバック