高速道路を利用した救急医療の拡充するという素晴らしいプランがあるようです。さすが土建国家とその宣伝機関「産経新聞」です。この事業を完成させ ようと思ったら、高速道路の通った町のすべてから「医師」を貸しはがしして、三次救急病院に集めてしまえばいいんです。ま、その通りの記事です。
個人的には高速道路は日本のものは豪華に作りすぎで、これから国土にまんべんなく広げるよりも「必要性が高くて経済的にも効果が高い」路線だけ作ることに専念した方がいいと思っていますが。むしろつくりすぎるとあとでメンテナンス費用がかかって回収不能な不良資産だらけになる可能性を考えたら「豪華版」ではなく、人口集積地同士を結ぶ「国道」の再整備くらいでいいと考えています。
北関東道がどれくらいインパクトがあるかは知りませんが・・・医療と高速道路というやや「木に竹」をくっつけたくらい無理がある記事なので紹介しますね。
ちなみに北関東自動車道の結ぶ所は下記の通り。経済圏として交流があったのかは謎ですな。
-----------------------------
「建設中の北関東道沿いに緊急医療通信網の開発を考えています」
平成18年3月14日、栃木県壬生 町の独協医科大で開かれたシンポジウム。宇都宮大工学部の酒井直隆教授は、自ら提唱する「北関東メディカルハイウエイ構想」をぶちあげた。高速道路を走行 中の救急車から携帯端末を使い、心電図や患者の映像などの情報を搬送先の病院に送信するシステムは画期的だった。
旧道路公団の関係者は「国内産業の空洞化と、主要な輸出先が北米から中国などアジアにシフトしたため、常陸那珂港より新潟港の方が便利との声もあった。北関東道建設の説得力がなくなっており、だからこそ救急医療という役割は魅力的だった」と振り返る。
しかし、構想はその後、進んでいない。酒井教授は「一般的に救急医療は病院経営にとって金にならないから積極的ではない。道路公団も民営化したばかりで話が進まなかった」と嘆く。
◇
高速道路を利用した救急医療の拡充を図ろうと、壬生町では18年度から、独協医科大付属病院と北関東道壬生インターチェンジ(IC)を直結する道路の整備 に着手している。延長1・2キロで、用地買収は一部を除いて終わっている。総事業費は約6億円。直結道路の完成により、搬送時間が2、3分短縮されるとい う。
同大救命救急センター長の崎尾秀彰教授によると、心停止した救急患者の処置に1分遅れると、蘇生(そせい)率は7~8%落ちる。崎尾教授は「患者の救命には1、2分を争うこともあり、時間短縮で命が助かる人もいるのでは」と期待する。
東日本高速道路によると、真岡-桜川筑西IC間の整備効果として、24時間体制の救命救急センターまで30分以内に搬送できるエリアが約45平方キロ拡 大。新たに約1万5000人の医療環境が向上する計算になる。県境をまたいでの救急患者の搬送が増えることも想定される。
しかし、整備効 果はすぐには表れることはなさそうだ。栃木県真岡市や益子町、二宮町などを管轄する芳賀地区消防本部によると、北関東道を利用して茨城県内に搬送する患者 は年間10件程度にとどまると想定。筑西消防署(筑西市)も「桜川筑西ICの周辺で救急搬送があっても、水戸市内の病院に向かうことが多く、利用が増える ことはないのでは」と指摘する。
◇
効果は救急医療だけにとどまらない。酒井教授は 「将来の全線開通で、群馬、茨城県境から高速道路を利用して、独協医科大病院、自治医科大病院(栃木県下野市)を訪れる外来患者は確実に増える」と予想す る。さらに、3県で得意な治療を分担する医療連携の必要が高まると考えている。崎尾教授も「災害時の医師派遣に高速道路が役に立つのでは」と考える。北関 東道が3県にとって生命線となる日も近い。(鈴木正行)=おわり
------------------------------
上記の記事のように救急患者を搬送する先の病院の集約化を高速道路、主軸に徹底してやる。そうすると高速道路ぞいの町からぞろぞろと患者さんが大 きい病院に足を運び、スムーズにいきます?え、救急病院の医師は?そりゃ増やすしかないでしょうね・・・どこから?もちろん貸しはがしですよ。
去年行ったスウェーデンの医療などはこれに近く、さらにヘリコプターを運用すれば完璧です。ちなみにスウェーデンの人口:, 約908万人. 面積:, 約45 万平方キロメートル(日本の約1.2倍)ですから、ストックホルムに大きい病院(カロリンスカ大学などを中心とする)が複数ありますが、北部の方は超過疎地です。
したがって、医療資源も集中しています。
詳しいことはこちらへ。なお、スウェーデンでは医療訴訟は基本的にゼロだそうです。医師の給与が「1000万円以下」で訴訟が多発しちゃったらそれこそ技術者の流出でとんでもないことになるから、しっかり医療による後遺症などは福祉でサポートするそうです。
神戸大学教授:中園直樹先生のホームページより
スウェーデン国内の医師数は26,100で、うち35%が女性であり、近年は医師総数も女性医師数も増えている。従って、昨年は600名の医師が 失業(?: NOT GET JOBと示されている)との資料あり。国内には6医科大学(Umea、Stockholm、Uppsala、Linkoping、Goteborg、 Lund)があり、年間の医学生定員は1045名である。現在学生定員数の調整を検討中で、徐々にトータルの医師数は削減している。
ちなみに医師数ではスウェーデン国民340人に医師1名で、わが国は国民600人に医師1名である。医学生定員はスウェーデンは国民 1万対1.2人に対し、わが国は国民1万対0.6人と医師数も医学生数もスウェーデンが国民1人当たりでは多くて、後述の収入の面でも医師は必ずしも恵ま れた職業とは考えられていない。
教育年限は5.5年間で、その後に病院臨床研修が1.75年間が義務づけられている。その後に最低5年以上の専門医修練を行い、専門 医種へすすむ道が開かれている。医学部への入学は原則的にはGYMN(高校教育課程)での成績で志望医科大学の定員以内であれば入学が可能であるが、要求 されるGYMN時代のポイント(単位とその成績で、わが国の内申点に相当するのでは)は最上級とされている。
●医師、看護婦等の年収について
(税込み手取り):民間保険会社資料による
新人医師 200,000 Kr.
勤務医医長 400-450,000 Kr.
勤務医部長 500,000 Kr.
大学教授臨床医(著名な) 550-600,000 Kr.
歯科看護婦 160,000 Kr.
医科看護婦 180,000 Kr.
看護助手 150,000 Kr.
●ちなみに一般工場労働者 160-190,000 Kr.参考までに為替レートは1 Kr.=12-13円であるが、購買力平価は1 Kr.=18-20円と経済学資料では一般にみなされているようである。
注意:現在の為替レートでは、1Kr=11.07円という感じですが、そうすると、部長医師が550万程度になってしましますが。これは昨今のヨーロッパの不景気で相対的に円高になっているせいです。昨年の9月に訪問した時は15円。チャートをつけるといかにスウェーデンクローナの暴落がひどいかわかりますが・・・(汗)
↓スウェーデンクローナの推移(単位:1Kr=>円です)
実際の購買力平価ではかなり高いのです。
スウェーデンの医療、介護、医療従事者の訴訟免責というのは、単に医療から見ただけでは無く、医療経済、税金の使い道、雇用確保、内需拡大という面からも、非常に合理的で、かつ、可能な限り人権に配慮した仕組みと思われる。
-------------------------------
かなり脱線しましたが、医療を再編するということはそういうことです。余分な枝葉を剪定し、根幹にだけ集中するということほかなりません。
お看取りや介護は地域社会に根ざすものなので、残るでしょうが、高度な急性期医療などは人的資源を分散させず集約するべきです。そういうのがわかって記事を産経の記者の方は書いているのかは謎ですが。タイトルを見ると単に「土建屋国家万歳」記事のつもりなんでしょうなぁ・・・。
『周産期医療の崩壊をくい止める会』のワンクリック募金もよろしくです
固定リンク | コメント (2) | トラックバック (1)
| 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | |||
| 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
| 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
| 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
コメント
コメント一覧
スウェーデンで医師の給与はこれでもかなり恵まれています。職種における賃金格差が少ないのです。それでもしっかり労働時間厳守し、長期休暇付与があるので、時給は日本の過酷な勤務医と同じくらいじゃないでしょうか。複数病院勤務の容認、当直売買容認などで、稼ぎたい人はもう少し頑張ります。ちなみに非常に少ないながら開業医はあり、給与は倍近く上がります。ただし、こちらも4年に1度の診療報酬(医療資源配分)見直しがあり、かなり振り回されるようです。
生活の質を何より大事にするお国柄ですから、このくらいの給与でそんなに文句も出ません。金がたくさんあったって、家族と過ごせず、訴訟におびえ、お金を使える休みも無いんじゃ、なんのための人生かと悩みます。患者の笑顔が大きな喜びではありますが、訴訟リスクの高まった今、それだけでは続かない人が大多数じゃないでしょうか。
給与が高くとも医師人生に絶望する医師が多発する日本とアメリカ。そんなに高くなくとも人材流出も非常に少なく、充実した医師人生を定年まで急性期病院であっても過ごせるスウェーデン。好対照ですね。 どちらが医療経済や安全保障的見地から見て国民に得かは火を見るより明らかだと思います。
コメントありがとうございました。引用した視察の記録、古いのかもしれません。スウェーデンで医師過剰はないだろうなぁ・・・と思っていましたが。やはり現場にいる先生からのコメント力強いものです。
医師人生に絶望はしたくないのですが、先行きがなかなか明るくないですよね。日本の医療が良くなるためには医師も患者さんもゆとりが必要ですね。そう心の・・・幸せでない医師や看護師が患者さんを幸せにできるはずなどないですね。また今後ともよろしくお願いします。
コメントを書く