少し今回はまとまりが悪いので、申し訳ありませんが、先日、慈恵大学の外科学教授の大木先生の講演を聞いてきました。
東京大学元教授の黒川清先生(http://www.kiyoshikurokawa.com/about.html)が代表理事をされているNPO法人の日本医療政策機構が時々、朝食会を開催しています。
当日は会場がまた大手財閥系のビルの中で、緊張しましたが、最初あらわれた大木先生は普通のお医者さんという感じでしたが、話しだすとすごく熱い先生だとわかりました。
タイトルは・・・
「これからの外科医、これからの日本の医療」
これについて、先生のメモを元に、当日の講演をメモ書き程度にしておこしてみました。
☆欧米の医療の良い所取りはダメ
これからの日本の医療については、欧米とくにアメリカのマネをすればいいという風潮にNoという形で、訴訟、サービス、医師患者関係、インフォームドコンセント、医療安全では、医療費、人的資源が違いすぎる。
症例数を競う仕組み、インセンティブ
セコンドオピニオンも医療不信がある。医療訴訟や医療警察、専門医制度の確立(質の担保)
☆アメリカの医療を反面教師にする
資本主義、競争原理の導入(あくなき利益の追求):相互不信感、悪循環をもたらした
特に医療保険のシステムについて全員に向けて言われたのが、アメリカは国民のうち2割が対象のメディケア(65歳以上)・メディケイド(貧困層向け)以外には公的医療保険がないため、この日の講演に参加しているような若くて元気な人は全員加入できません。
そして、医療保険に加入していない人は全員、保険会社から生命保険を買うように、自分でたくさん払わなければなりません。アメリカの医療費のうち3割(200兆円です)が間接経費(保険会社など)に消えるという形で、おそろしく効率が悪い。
しかも、医師が患者さんを一人診察して必要な検査があるとなれば、「私は、○×さんのこれこれの検査をしていいでしょうか?」と保険会社に事前に申請しないとダメ。
アメリカの医療は、医師にとっては極楽で、看護師が5倍病棟にいる。しかしそのコストはすべて保険料に含まれる。アメリカ人はそういう保険料を支払っている。
日本人は、エコノミークラスの料金しかもらっていないのにアメリカ並みのサービスを求めるというのがそもそも間違い。(注:アメリカ人の1年間の医療費75万円、日本人25万円です)
また、日本で言われているような、医師間での技術料に格差はありません。専門医の数を完全にコントロールしており、心臓外科医130人、血管外科110人、脳神経外科医60人と全米で1年間にこれだけしか育てていない。
逆にいうと、この人たちになるために相当競争していて、その人たちのところに患者さんが集まるから、専門医の収入が多く見えるのである。
☆日本の医療のあるべきカタチ
反省すべき点
密室医療、隠ぺい体質、専門医の質の担保
医療事故についても、ニューヨークならOPMCという機構があって、医師が医師を取り締まるようになっており、投書や内部告発をもとに調査を行い、「注意・けん責・免許取り消し」などのアクションを行うようになっている。
アメリカでは医師側もお互いに相互監視が働いている。日本ではアメリカのような仕組みが備わっていないので難しい上にそういう働きがまったくなされていない。
☆医療崩壊の根本原因
医師の使命感がそがれたこと
医療バッシング、権利意識の肥大化、事務作業アップ
医師の使命感や志を原動力とすべき
お医者様、感謝の気持ち、パターナリズム
☆医師不足に関して
勤務医不足、やりがいの喪失、雑務の増加
穴のあいたバケツ
・これからの外科医
産婦人科、小児科は総数は減っていない
外科医の総数は減っている
とくに外科医は開業したらメスをにぎらなくなる。産科医も不足はしているが開業してお産をまったくとらないことはないが、外科医は開業すると内科になるしかなく、危険。
・なぜ?
3K、訴訟リスク、委縮医療と疲弊している先輩
外科医療は労働か、生きがいか?
☆外科医増員計画
お金と水
過分なお金は人を幸せにしない
お金、モノ、地位、権力は飽きる
今の日本と戦後の日本、どっちが幸せか?(昔のサラリーマンの方が幸せであったのでは?)
人間の普遍的な喜びは「人に喜ばれること」「本拠地があること」(永久就職)
☆外科医療本来のトキメキを若手に示す
己の技術でひとの命を生きながらえさせる喜びを伝える、研究開発
外科医の仕事は労働か、生きがいか?
村社会の形成(ゲゼルシャフトではなくゲマインシャフト、友愛)
運動部、アマチュアリズムが基本
慮る、喜び、悲しみを分かち合う、研究開発の切磋琢磨
永久就職、非業績主義、組織の存在は構成員のため(株主のためではない)
「トキメキと安らぎのある村社会の形成」。いずれは慈恵全体、日本全体
☆慈恵医科大外科での実績
従来の入局者数は3-5人/年、来年は25名、労働条件、給与は据え置き
事務的雑用は極力減らす。医療クラークを導入し、外科医は本病に徹する環境設定。
医師の使命感を極力引き出す
給与アップでひとを勧誘したら、外資系証券マンみたいな人が集まり、弊害が大きい
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約40分にわたってお話されていました。もちろん、前日は外来日で朝9時から午前2時まで仕事をされ、原稿を2時間余りで完成させ、プリンタがないので 医局に連絡してその時間に医局に残っていた若手の先生(3人もみえた・・・汗)に印刷してもらって、朝8時からの講演に間に合わせたとのことですが。
猛烈な仕事をこなしつつ、熱心に大学医局を変える新しい力のある先生の出現
です。
また、慈恵大学の外科の医局員205名を率いながら、1億円近かった年収を捨て、母校の危機のために現れ、大学病院での全ての科で一番低いとされていた血管外科の売上を最高の収入源に引き上げるのにわずか3年で達成されているなど。まったく目を見張るような先生でした。
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某じゃみっくじゃーなる(医師転職会社、リクルートの子会社)さんの方が来て「今時、そういうの若手にはやりますか?」って突っ込んでましたが、「医師 の使命感は、そういうものです」と患者さんからの感謝の手紙の束を見せながら、「これ1通だけで1週間寝ないで働ける」とい熱く語られていました。
また、医療費については足りなさすぎる。しかし全員にまけばいいというものじゃない。とにかく、勤務医に・・・というご意見でした。
↓こちらが教室のウェブサイトです
http://www.jikeisurgery.jp/
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コメント
コメント一覧
NYと日本のタクシーの運転手の話とか。
心臓外科のナブチ医師のことを「ミナミなんとかいうテレビに出ている()が」
もっとえらくなって欲しいものです。
>アメリカは国民のうち2割が対象のメディケア(貧困層向け)・メディケイド(65歳以上)以外には公的医療保険
些細な事ですがこれは、上記は逆です。それとこの数年に医療費があがったのは、医療過誤保険の増加と、医療訴訟の増加です。無保険のひとが増加したのは、企業がもう払えなくなったのと、個人の店をもっている人が高すぎて健康保険に、入れないからです。それとふたつ以上の既存症があると、入れないか、医療費が高くなります。医師の給料は下がっています。DRGのせいで入院の日がヘリ、看護師がひとりで、6人を診ています。どんどん病院数が減少しています。4千万人が健康保険がない状態です。人口の5人にひとりです。
コメントありがとうございます。確かに圧倒的に力強いです。タレント医師とはまた違って現場主義が徹底されていて、心強いです。
DAICHAN先生>
あ、間違い・・・汗。発見ありがとうございます。訂正しておきます。しかし、アメリカがいい医療制度なんてことは一切ないのに、アメリカ流を目指した経済財政諮問会議って・・・ですよねぇ。
給与アップでひとを勧誘したら、外資系証券マンみたいな人が集まり、弊害が大きい
いま、新人勧誘に四苦八苦してます。そうなんですよねえ。給与とか待遇で勧誘すると、あまりにもご利益だけを求めるタイプの人材が集まってしまうんですよね。ふかーく、うなづいてしまいました。参考になります。
経由で今年の労働経済白書から
「長期的に考えてみると、賃金や賃金制度を、労働者の動機付けに直結させることについて、根本から考え直す必要もあると思われる。(略)どのような仕事も一人の力だけで実現できるものはなく、多くの人の見えない手助けのもとに、その仕事の成功があることに深く思いを致す必要がある。(略)労働者の動機付けを、賃金の多寡だけではなく、仕事の内容そのものに求めていくことについて検討を深める必要もあるのではないだろうか。」
「働きがいのある職場、たとえば、それは、職場のリーダーが果たすべき使命を的確に構成員に伝え、働く一人ひとりは個性を生かし、また、互いに協力し合い、その使命の実現に向け積極的に取り組むとともに、そうした中から生まれる優れて人間的で魅力あふれる働きぶりが、若い人々にとっても人生の手本となるような、心から働きがいを感じることのできる職場を創り上げていくことが、今日、我が国に働く全ての人々の課題になっているように思われる。」
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