今週はなぜか医療や介護ネタを取り上げた雑誌が多いですね。新聞のように、カラーが決まっているわけではないし、色んな切り口があっていいんですが、やはり
「いまの保険医療制度は実情に即さず、患者第一の治療が進められないのです」
という勤務歯科医のコメント(“医療難民”が発生のワケ)が心にひびきます。
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連載「医療貧困」最終回 看護師


日本は長寿、0歳児死亡率の低さで世界トップ級なのは改めて書く必要はない。なのに、幼児(1~4歳)の死亡率が主要先進国で事実上「最悪」であることはあまり知られていない。小児医療専門家の研究班が、死亡原因・場所などを初めて全国追跡調査したところ、重症の子どもの搬送や受け入れ体制などでの問題点が浮かんだ。
重症の子どもの救命に威力を発揮する小児集中治療室(ICU)は欧州諸国の5分の1しかない。1年前に整備されて抜群の救命実績をあげている静岡県のような例もあるが、都道府県ごとの普及格差は大きい。「崩壊」が叫ばれる小児医療でいま何が必要なのか。乳幼児を持つお母さん917人のアンケートでわかった現場の窮状も紹介する。
東京医科歯科大の歯学部附属病院で、治療を中断される患者が相次いでいる。例えば、抜歯後、インプラント治療で人工の歯を入れるには3か月待たなければならないというのだ。日本一の歯科病院でいったい何が――。
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東洋経済 2008年8月2日特大号
(2008年7月28日発売)/特別定価670円(税込)
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経営コンサルタント 大前 研一氏
2008年7月16日
IMF(国際通貨基金)がまとめた調査によると、2007年のシンガポールの一人あたりのGDP(国内総生産)が日本を抜くことが明らかになった。シンガポールは3万5000ドルを超えたのに対して、日本は3万4300ドルにとどまっている。これまで半世紀にわたってアジアで1位をキープしていた我が日本だが、ついに2位に転落してしまったわけだ。
世界で見れば1994年には一人あたりGDPで日本は世界一であったが、一昨年に17位に、そしてついに昨年の実績で22位に転落してしまった。もちろん為替の影響もあるが、日本の国民所得、すなわち国民のつくる付加価値の総和がこのところほとんど増加していないのだから、この数字は実態を表しているモノと見なくてはいけない。
日本では、このことはほとんどニュースにもなっていないし、危機感がまるでない。政府の方も都合が悪いのであえて危機感をあおることはしたくないのだろう。しかしシンガポールに抜かれたということはやはり画期的なことなのだ。
(中略)
日本の課題を指摘する前に、まず各国の一人あたりのGDPを下の図で比較しておこう。

先に断っておくが、1位(ルクセンブルク)、2位(ノルウェー)については除外して考えたほうがいい。1位のルクセンブルクは統計上のあやもあって、実際よりも高い値が出ている。2位のノルウェーは人口が少ないのにもかかわらず北海油田があるために、高い値になっている。だから、現実に即したリアルな値が出るのは、3位以降だ。そのあたりから実際の国の経済とGDPの値が対応していると見てほしい。
さて、3位以降の国を見ると、小さい国ではあるが、アイスランド、アイルランド、スイス、デンマークと北欧勢が強いことが見て取れる。米国でさえ4万5000ドルなのだが、これらの国が高いのは、通貨の関連もあることを指摘しておこう。
ここで重要なのはシンガポールと日本より下だ。シンガポールのすぐ下に日本が来ている。アジアで日本が2位になるのは、40数年ぶりのこと。さらに3位の香港にも急迫されている状況だ。このままでは香港に抜かれるのも時間の問題であろう。香港は人口の急速な流れ込みや、比較的所得の低い新界などを抱えているので、香港島・九龍部分をみれば既に日本を超えているだろう。
それどころかウカウカしていたら、4位の韓国にも抜かれる可能性がある。今のところ韓国との差は1万5000ドル程度あるが、ウォン高が進んだらその差は半分くらい埋まってしまう。実質の差が7500ドルとなると、韓国から見たら「日本の背中が見えてきた」というところだろう。日本も1979年に一人あたりGDPが1万ドルを超えたが、それ以降はほとんど円高の影響でランキングを伸ばしていった。だから円で見たときの国民所得はそれ以降、実はかなり遅いペースでしか伸びていなかったのである。
かつて第二次世界大戦直後の日本は貧しく、フィリピンにすら負けていた。しかしその後のめざましい経済成長があり、1960年代からは長いこと1位を保ってきたのだ。むろん、ブルネイのように人口が極端に少ないにもかかわらず石油・ガスが出るような国は除外して考えているが。
しかし、もはや日本はアジアで最も豊かな国ではなくなってしまったのだ。
実際にシンガポールに行ってみると、人々が豊かな生活を送っていることに驚かされる。みなさんも現地に行ってみれば、一人あたりのGDPが追い抜かれたことを実感できるだろう。
例えば住環境。シンガポールの課長クラスの住むアパートを見ると「欧米のようだ」という感想を抱く。広くて豪華で、建物の下の階層には当然のようにスイミングプールがある。日本の同クラスの人が住むアパートと比べると、かなり違う。マンションの8割近くを政府機関であるHDB(Housing & Development Board)が供給しているので値段もリーズナブルである。今でも120平方メートルクラスの住宅が2000万円しないで手に入る。
ほぼ唯一、日本が勝っていると思われるのは自動車だ。シンガポールには自動車の環境が悪い。自動車価格が懲罰的なくらいに高く設定されていて、日本よりも購入しにくいのだ。しかし、公共の交通機関が発達しているし、国土が狭いということも関係しているので、大きな不満にはなっていない。
とはいえ、シンガポールは豊かになった。以前は「貧乏な割には生活レベルが高く、良い暮らしをしているもんだ」と思う程度であったが、実際に抜かれてみると、「これが日本とシンガポールの実力の差だった」と実感せざるを得ない。
わたしが皆さんに理解してほしいと思うのは、「このシンガポールの繁栄の源は、シンガポール自身にはない」ということだ。地下資源や原油が出るわけではなし、農産物が自国で出来るわけでもない。すべて世界で最も良くて安いモノを輸入して、生活の質を上げてもコストを抑えている。名目の一人あたりGDPが日本並みということは、実質の生活実感は日本よりはるかに高いということである。繁栄はほとんどすべてを海外から呼び込んできたものである。要するに開放経済なのだ。世界中から金、人、モノに来てもらう「貸席経済」なのである。そのために邪魔になる規制を撤廃して、世界中の力を借りられるようにしている。だからこそシンガポールの今の繁栄があるのだ。
世界には今、余剰資金があふれている。企業も金も魅力のある所に集まってくるというのがグローバル化した経済の本質なのである。
対して日本はどうなのか? まったく逆さまである。開放経済ではなく閉鎖経済である。世界から金、人、モノが来ない。だから足りない金を国民から借りる。それでも足りないから子ども、孫から借りてくる。
その例が国債だ。国家予算が足りないからと、どんどん国債を発行する。しかし、その国債は借金だから返済しなくてはいけない。では誰が返済するのか。そのめどは立っていない。少子高齢化ということを認識しているくせに、借金の先送りをしている。もちろん国民一人あたり1000万円近い借金を子孫が返還できるわけがない。つまり、世界に救済を求めないで子孫に付け届けをしている国の先は、思っている以上に暗いのである。
シンガポールではテマセックやGICという政府系金融機関が年金などの運用をしており、この30年近くにわたって年率10%近くで増えてきている。現役世代は安心して引退できるのである。このあたりもシンガポールの「集団IQ」の高さを示している。
こうしたすべての点において、日本はシンガポールから学ぶべき点が多い。今の日本は自ら墓穴を掘っていると言うしか表現の仕様がない。
開放経済に向かったシンガポールと、閉鎖経済に突入している日本。これは政策上の違いから起こっている。国家の世界経済に対する見方の違いなのだ。
その意味を、日本の官僚、役人はもちろんのこと、国民の一人一人が深く考えるべきだ。シンガポールに抜かれたことはどういう意味があるのかを。ボーダーレス経済論者のわたしとしては、そのことを改めて国民の頭の中にたたき込まないといけないと強く思っている。
本当ならシンガポールに抜かれたことで、日本全体にショックを受けてほしいところだ。しかし、「あれ、抜かれちゃってた」という感じで、ケロっとしている。これでは日本の未来が危ういというものではないか。
そもそも日本は、正しく国家を経営していたらシンガポールに抜かれる理由などないのである。ところが本コラムでも何回か指摘してきたように、今の日本は第2の経済鎖国に向かおうとしている。
日本が閉鎖経済から抜け出すためには、世界の現状を理解する必要がある。前述したとおりシンガポールは世界から金、人、モノを呼び込むために、積極的に制度変更を行い、政府部門も俊敏に動いている。しかし日本では、税源が不足してきたら消費税率をアップしようといった議論ばかりで、世界の力を借りるような話は一切出てこない。バブル崩壊のあとも金融機関の救済は国民に押しつけた。中国が国有銀行に外資を導入して乗り切ったのとは大きな違いである。外資アレルギーの日本と、ためらわず外資を救済に使う中国。世界経済の利用の仕方では、シンガポールどころか後発の中国にさえ追い越されてしまっているのである。
それは日本が、すべての問題を自分で解決しようとすることに原因がある。解決策を世界に求めるシンガポール(と中国、そして多くの途上国)、国民に求める日本。国民が反対すれば、今度は子孫に求める。少子化で子孫に負担能力があるのかどうか検証もしないで30年(いや道路公団の借金などは50年)先送りしてしまうのである。
では他の国ではどうしているのか。上述のように、中国では外資を入れることで解決した。米国は今、オイルマネーなどを入れて金融危機を乗り越えようとしている。国民より先に海外の援助を受ける。これが今の世界の常識なのである。つまり税金ではなく、他人の力で解決するのだ。その結果、今では中国の銀行にはほとんど一流の外資が経営に参加している。外資の資本は10~15%程度とさほど高くはないのだが、そうやってよその力、特に経営ノウハウをうまく取り込んでいる。
このように問題に対するアプローチの方法が、日本と世界ではまったく異なる。だが、これは今に始まったことではない。わたしは20数年、このことを指摘し続けている。しかし、まったく理解してくれないのが日本だ。
政治家ともいろいろ話をしているのだが、経済のグローバル化に伴って世界の国家がどうアプローチを変えてきているかを勉強しようという謙虚さを感じない。シンガポールはもちろん、アイスランド、アイルランド、デンマーク、フィンランドなどが、なぜ最近活躍しているのか。97年の中国返還以降、一時落ち込んだ経済を反転させた香港、その後に続くマカオがなぜ今、未曽有の好景気に沸いているのかなどを勉強すれば、日本に足りないものは何なのか、日本はいかに世界経済を取り込んで繁栄の軌道に戻ることができるのか、多くのヒントが得られる。日本の発展のために、そういう問題を絶えず考えるのが官僚であり政治家ではないか。
少なくともあと2年、日本は世界第2位の経済大国である。一人あたりのGDPが米国を抜いたのは10年以上前のことだ。そのときの上昇気流に乗ったイメージを、いまだに引きずっているのではないか。その後、世界の経済地図は激変した。「なぜシンガポールに抜かれたのか?」―― それを重く受け止め、真剣に考える過程で今日の日本の真の姿が見えてくるだろう。
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