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今週号のAERAから「医療貧困」というのがはじまりました。あと3号で、今や話題の人、山本モナのあなたを知りたいという対談の連載もなくなりますが(今週号は漫画家、一条ゆかりさんでした)。それはおいといて、この医療貧困」という連載はなかな読み応えがありそうです。







連載「医療貧困」① 薬剤師


10年後は「3割失業」


国家資格のお墨付きを得ても、もはや「安定」は約束されない。格差社会のひずみは、医療の世界にも押し寄せている。



 薬剤師の資格手当込みで手取 り19万8000円-。

昨年4月、東北地方の民間病 院に就職したヨシオさん(37)は、 薬剤師として初めて受け取った 給料の額に少し落ち込んだ。

 「国家資格を持っているのだから25万円ぐらいはいくかな」と想像していた。そもそも、収入を安定させたい、と一念発起しての転職だったのだ。

転職1年目280万円

 1996年。都内の有名私大理工学部を卒業したヨシオさんは、Uターンして東北地方の半 導体メーカーに就職した。19万5000円だった基本給は1年 ごとに5000円上がり、2万~3万円の残業代もついた。だ が、その後業績が悪化。上司に は「残業するな」と命じられ、 月収は17万円にまで落ち込んだ。 そして31歳だった2002年9月、医療関係の仕事をしている親類の勧めもあり、薬剤師になろうと決意して退社した。猛烈に受験勉強をして、地元の私立薬 科大学に翌春合格した。

 会社員時代の貯金を取り崩し、親からの援助も受けて、4年間の学生生活をやり直した。学費だけで約700万円かかったが、無事卒業。薬剤師試験にも一発で合格した。

 就職先に病院を選んだのは、 専門的な技術や知識を身につけやすいからだ。職場では、同僚らと1日約350の処方箋をこ なす。ベテラン薬剤師の下で医 師や看護師と連携して患者に合う薬剤を考えるのは、病院薬剤 師ならではの仕事だ。入院患者 向けの調剤服薬指導をするので、 自分が作った薬の効果が日に見えるし、患者の生の声も聞ける。
 そんな仕事にやりがいを感じ るが、1年目の年収は結局、280万円。この4月に月3000円のベースアップがあったが、 将来への不安は膨らむ。

 ヨシオさんは昨年結婚し、数年後に子どもができたらもう少し給料のいい調剤薬局かドラッグストアに転職しようと考えていた。しかし、その人生設計が大きく狂いそうなのだ。

 「今度始まる『登録販売者』ですよ。これで薬剤師の転職の条件は相当厳しくなると思う」

 登録販売者とは、2006年に成立した改正薬事法に基づく新制度だ。医薬品には①医師の処方が必要な医療用医薬品②市販される一般用医薬品①販売規制がない 医薬部外品があり、現在は薬剤師が常駐していないと①と②は販売できない。新制度はこのうち②を三つに分類し、薬の効 き目が強い第1類以外は登録販 売者が店舗にいれば販売できる ようにする。
 今年8月以降、都道府県が資格試験を実施し、来生皮から現場に導入される。つまりドラッ グストアにとどまらず、コンビ ニやスーパーでも従業員がこの 資格を取得すると、薬剤師がいなくても大半の薬を販売できるようになるのだ。受験には1年以上の医薬品販売の実務経験などが必要だが、大卒でなくても構わ ない。すでに大勢の従業員に受験の準備をさせているドラッグストアやディスカウントストアも現れており、「手当」が高い薬剤師に取って代わる可能性もあ る。ヨシオさんの心配はもっともなのだ。

 薬学部は46から74に

 だが実は、「薬剤師余り」はす でに顕在化している。

 薬剤師の需要は年々増加し、 1990年の15万人から、2006年には25万人に膨らんだ。下のグラフは厚生労働省が行った試算で、試験合格率が現在の水準で続いた場合の薬剤師の需 要と供給の推移だ。育児などで一時的に職を 離れている「無職」のペーパー 薬剤師を需要に含めても、すで に供給過多で、10年後の総数は 36万人、20年後は40万人と予測 している。「受け皿」は新しい職 種などが増えない限り、27万~28万人レベルでほぼ横ばい。単純計算で、10年後は薬剤師全体の約27%が過剰になる。つまり、約3割の薬剤師が失業しか ねないのだ。

 こうした事態に至ったのは、小泉純一郎政権下で進められた大学設置基準の規制緩和でしている。2002年時点で46だった 薬学部は、現在74を数える。昨 年5月に聞かれた厚生労働省の 「薬剤師需給の将来動向に関する検討会」初会合で同省は、「新規の薬剤師が30%減っても、薬剤師不足が生じることはない」との見解を示した。医薬分業が 進み病院外の調剤薬局とともに薬剤師の需要が増えているが、それを上回る供給が続いていくのである。

 「甘い時代は終わった」


 大学関係者などによると、病 院勤務の薬剤師の平均初任給は年約350万円、30代でもおお むね400万円台という。人気 が高い大学病院や国公立病院で も似たり寄ったりだ。
 ある病院の関係者は、さらにこう指摘する。

 「医薬分業が進み、病院内の調剤業務が減ったこともあり、薬剤師の地位は決して高くない」

 薬剤師はおのずと、人件費削減の対象とみなされるようだ。
 もちろん病院以外の薬剤師も厳しい現実に直面している。

「国家資格を取得したからといって高収入を得られるなんて甘い時代は終わった」

 薬剤師として転職を繰り返し てきたトシオさん(35)も、薬剤 師に忍び寄る失業の危機を肌で感じている一人だ。
  都内の薬科大学を卒業後、ド ラッグストア2社での勤務を経て、給料が比較的いい調剤薬局 に転じた。年収は500万円に なった。だが、周囲では調剤薬局の撤退が続いていた。
 「病院と事実上提携している『門前薬局』でない限り、調剤薬局は撤退を余儀なくされる」と痛感。全国チェーンのドラッグストアなら庖舗経営が悪化しても失業はしないだろうと、ドラッグストア業界に戻った。
 薬剤師手当が月7万円で、年収は約450万円。都心の店舗に配属され、庖長を目指そうとしていた矢先、店長の給与額を 偶然知ってしまった。

 手取り月15万円。
 年収にして400万円。

 薬剤師手当のつく自分より低 かった。ドラッグストアで収入 増は望めないと悟った。

 思えば薬剤師といえどもドラ ッグストアでの仕事といえば、 朝から晩まで品出し、商品の補充、陳列、掃除、品発注などの繰り返し。顧客にポイントカードを作ってもらうノルマまで課せられた。同業社間の値引き合戦は 当然、利益を圧迫する。薬剤師には利益率の高い薬の販売ノルマも課せられ、達成できないと店長らから罵倒された。

 薬剤師らしい仕事が唯一あった。顧客に自分から声をかけ、薬の担談に乗ることだ。だがそ れもマニュアル化されており、 アルバイトでもある程度は相談に応じることができる。

 バイトと変わらぬ仕事

「薬剤師といっても、仕事の内容はアルバイトと変わらない。それなのに資格手当がつくので、かえって一肩身の狭い思いをしている」 とトシオさんは話す。半年前 に、都心から北関東の店舗への 異動を告げられた。通勤は電車で片道1時間半。従来は会社が 近くの住居を借り上げてくれたが、経費削減を理由に自宅通勤 を命じられた。上司から「断っ たらどうなるかわかるな」とも 言われたという。 「求人はたくさんあるように見えるけれど、条件は厳しい」

 大学の同級生には、職にあぶれている薬剤師が何人もいる。そこに登録販売者制度が追い打ちをかける。
 「資金をためて調剤薬局を開業したいと思っていたが、夢のまた夢。薬剤師として労働条件が良い職場があるなら、派遣社員でも構わない」 とトシオさんはあきらめ顔だ。

 一方、新しい動きもある。 昭和大学病院(東京都品川区) では、病院内の調剤業務が減っ たため、薬剤師の活躍の場を増 やす工夫をしている。

 「以前は看護師がやっていた入 院患者の栄養剤のセッティング をしたり、救急医療のチIムに 参加したりし始めています。薬 剤師の仕事は増えていますよ」
と、同大病院薬剤部長の村山純一郎さんは話す。

 また日本病院薬剤師会は、5年間の実務経験を持ち、書類審査や筆記試験をクリアした薬剤師を「専門薬剤師」と認定する制度を2年前に導入した。がんや感 染症の治療薬の効能や副作用などの知識を深めた薬剤師が、現在全国に約200人いる。ただ、その分の手当がつくわけで はなく、運用には課題も残る。

 「薬剤師は大過剰となる可能性 があるが、悲観はしていない」 と話すのは新潟薬科大学の山崎幹夫学長だ。活路について、こう提言する。

 地域住民の健康管理を

「薬剤をミスなく調剤し服薬指 導する薬剤師の仕事は、医師と 違って実績が認められない部分 があり、対価が賃金に跳ね返ら ないケIスがある。しかし質の 高い薬剤師を社会に送り込むこ とで、薬剤師が待遇面でも評価 されるような大学教育をしようと決意している。地域住民の健康管理や軽い疾病の治療という役割を担えば、薬剤師の働き口は十分確保できるはずです」
(文中カタカナ名は仮名)

 

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  もちろん、こんなに増やして・・・って意見は当時からありました。この深刻な雇用バランスの問題、これは国が医療費削減のために、病院やクリニックから薬の処方を調剤薬局へとシフトさせようとしたために、ドラッグストアが大量に薬剤師をほしがったという背景があり、その需要に応えるべく大学が増設に走ったともいえます。

 そのあおりをくらったのが、若い薬剤師の卵たち。この構図はどこかで見たことありませんか?そう、歯科医も介護士も同じです。 急増させなければならないという風になったが、いざフタを開けてみると、年収300万円前後のワーキングプアを生んでいます。

 気の毒ですが、官製不況の土建屋の「倒産」とかと一緒です。

 

 問題は、「医療費抑制」 のために、霞ヶ関が万難を排してもと人数だけ増やしても知らん顔。

 

 介護士や薬剤師が増えすぎてワーキングプアになっても・・・という構図が繰り返されているため、大枠で医師を増やしても人件費総額は増えず、その職域全体で引き下げ・・・では持続不可能になるだけです。

 今後、医師や看護師の増員が求められます。そうでないと医療崩壊が、医療サービスの低下を招きます。しかし、人件費カットをしながらですと、優秀な医師や看護師は海外へ逃人材流出を招き、患者さんも質の低い医療サービスに見切りをつけ国外まで手術をしに出かける・・・これは国富の流出に他なりません。

 そういう意味でも、医療費の抑制の呪縛をそろそろとくべきでしょう。もっとも・・・国民の理解が必要です。

 

  なかのひと

 

↓すでに「医師過剰論をぶっとばせ!」で、ご紹介していますが再掲します。

薬系大学の3割が"定員割れ"-全体でも入学定員を割り込む
薬事日報 2008/05/15

 

 

  2008年度の薬系大学・学部入学者数が定員を割り込んだ。入学時に教養学部として入学する東京大学(定員80人)を除く08年度の総定員数1万 3414人に対し、入学したのは1万3260人だった。入学者が定員の1.0倍を下回る"定員割れ"は、新設2校を含む全74校中22校と約3割に達し、 特に新設校に"定員割れ"が目立った。逆に、入学者が定員を超えていた薬系大学・学部も20校に及んでいた。小紙の調査で明らかになったもの。調査は今年 度新設の鈴鹿医療科学大学、立命館大学を含む全74校に対しメールおよび郵送、電話による聞き取り方式により行った。

 今年度の薬系大学・学部の定員は新設の2校(定員:200人)を加え1万3494人。これに対し入学者は、薬学部入学者が確定しない東大(80人)を除 いて、1万3260人だった。東大を除いた総定員1万3414人に対しする定員充足率は98.9%で、薬系大学・学部全体として"定員割れ"となった。

 4年制併設校は30校(4年制定員1324人)に及ぶが、国立系が中心となって「一括入試」を採用している11校を除く19校の4年制(定員847人) 入学者は902人で、106.5%と全体としては定員に達していたが、一部私立大学での大幅な"定員超過"と"定員割れ"が目立った。

 薬系大学・学部全体として"定員割れ"したのは、全74校中22校。このうち03年度以降の薬大新設ラッシュで誕生した新設校が、28校中17校と6割 にも及んだ。一方、伝統校でも、北陸大学、福山大学、徳島文理大学、第一薬科大学では、定員充足率が70%前後とかなり苦戦を強いられた格好だ。

 特に、入学定員が半数にも満たなかったのが、奥羽大学(定員200人、入学者55人、定員充足率27.5%)と青森大学(120人、47人、39.2%)。両校とも07年度の時点で43%、62%と定員割れしており、今年度はさらに厳しい状況となった。

 そのほか、定員割れが大きかった薬系大学・学部は、いわき明星大学(150人、85人、56.7%)、安田女子大学(130人、73人、56.2%)、 徳島文理大学香川薬学部(150人、87人、58%)、就実大学(150人、100人、66.7%)、第一薬科大学(173人、118人、68.2%)な どだった。

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10年後は「3割失業」
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