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医療制度改革と漂流する厚生労働省

SkyTeam / 2008.06.23 22:00 / 推薦数 : 3


[医療改革のキーパーソン]や[辻事務次官の語る「医療構造改革」]などで取り上げてきましたが、辻哲夫さん、覚えてみえるでしょうか?

 

 辻 哲夫(元厚生労働次官)

経歴:東京大学法学部卒業。厚生省大臣官房政策課長
同省大臣官房審議官、厚生労働省年金局長
同省大臣官房長、同省保険局長等を経て
2004年厚生労働審議官、2006年より2007年厚生労働次官。

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  社会保険庁ために、安倍政権の末期に責任を取って職を辞されました。

 理念や辻説法などを読むと非常に優秀な方だったと思いますが、その経歴からみても、次官にふさわしい方だったとは思います。最近、このような本を出版されていました。

 もちろん、今後のことを考えるためには、また読んでみたいものです。医療や福祉は国民にとって最大の関心事だと思います。そして彼が解決できなかった課題はそのまま我々に残されたままです。

 

  なかのひと

 

 

 日本の医療制度改革がめざすもの

 

社保庁長官を更迭 後任に坂野氏 厚労次官も 年金問題

朝日新聞 2007年08月24日23時32分

 政府は24日、年金記録のずさんな管理問題の責任が問われていた社会保険庁の村瀬清司長官(60)を退任させ、後任に総務省出身の坂野泰治・日本放送協 会監事(60)を充てる人事を決めた。厚生労働省の辻哲夫事務次官(60)も退任し、後任には旧厚生省出身で、前内閣府事務次官の江利川毅・日興フィナン シャル・インテリジェンス理事長(60)を起用する。年金記録問題に伴う事実上の更迭といえる。同日開いた首相官邸の人事検討会議で了承した。31日付。

 安倍首相は24日夜、訪問先のクアラルンプールで記者団に「一刻も早く、新しい体制で国民の不信を払拭(ふっ・しょく)して前進していかなければならないという観点から、けじめとして現在の内閣において人事を行った」とした。

 柳沢厚労相は今回の人事の発表会見で、「年金記録問題では国民に不安や心配をおかけしたことを反省し、単純に内部昇格するのではなく、新しい目で課題に 取り組むのが適当と考えた」と述べた。同省の幹部人事は例年7月ごろ行われるが、年金記録問題による混乱を受け、人事は凍結されていた。

 ある府省の事務次官経験者が他省の次官に、総務省出身者が社会保険庁のトップに就くという人事は、「霞が関の論理」では異例だ。内閣改造や臨時国会を控え、刷新色を出そうとしたとみられる。

 政府関係者は今回の起用について「役人としてのキャリアを終えた人に、もう一度、厳しい役割を果たしてほしいと頼んだわけだから、調整は難航した」と明かす。

 社保庁長官の後任選びで柳沢氏は民間からの起用も模索した。だが、年金問題の逆風下で適任者が見つからず、日本放送協会監事として現業部門も経験した坂野氏を最終的に選んだ。

 坂野氏は総務省行政管理局長などを経て、道路公団民営化推進委員会の事務局長として行政改革を進めた。社保庁は10年1月に解体され、日本年金機構が発足するが、組織再編の陣頭指揮をとることになる。

 現在の村瀬長官は、年金記録ののぞき見などの不祥事を受け、04年に損保ジャパン副社長から民間出身として初めて就任。だが、相次ぐ不祥事の対応に追われ、社保庁の立て直しは果たせなかった。

 事務次官の後任についても、旧厚生省出身とはいえ、民間企業に再就職していた江利川氏を起用する。柳沢氏は「内閣府事務次官を経験した力のある方で、外の見方も十分に身につけている」と述べた。

 民間などに籍を置いていたとはいえ、官僚出身者という「霞が関の身内」の顔ももつ坂野、江利川氏は、まずは臨時国会で、民主党など勢いづく野党からの攻勢と向き合うことになる。

 

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読む政治:士気低下…漂流する厚労官僚 今や「負担増の伝道者」

毎日新聞 2008/06/23

 

 ◇「大学教授に」転身願望広がる

 年金記録漏れ問題に続き、後期高齢者医療制度でも厳しい批判を浴びた厚生労働省の官僚たち。今後は国家プロジェクトと言うべき医療、年金、介護 の総合的な社会保障政策の立案を担わねばならない。ところが官僚たちは社会保障も聖域としない小泉改革の継承と、少子高齢化による必然的な負担増のはざま で方向性がつかめず、漂流している。省内には早めに退職して大学教授になろうという転身願望も広がる。厚労官僚の今を報告する。
 ◇「与党批判」に喝采

 首相問責決議が可決された11日の夜、首相を囲む有志議員の会が開かれた。福田康夫首相の激励が目的だったが、実は首相にとっては極めて不愉快な出来事が起きていた。

 首相が会場に到着する前、松浪健太・厚労政務官は「後期高齢者医療制度 与党PT案の問題点」と題するA4判のペーパー2枚を出席者に配った。

 「将来世代の負担に歯止めをかけるために制度を導入しながら、今年だけで(負担軽減策で)560億円ものツケを(国民に)負わすのは本末転倒だ」

 そこには与党があわてて作った「低所得者の保険料9割軽減」を柱とする見直し案への批判が並んでいた。

 首相と親しい衛藤征士郎衆院議員が回収を求めた。松浪氏は渋々応じたものの、遅れてきた首相にはペーパーを直接、手渡した。

 首相は無表情に「読んでおきます」と言っただけだった。

 松浪氏の直訴に官僚たちは、自分たちの気持ちを代弁してくれた、と喝采(かっさい)を送った。

 今、省内では大学教師への転職願望が広がっている。04年以降、大学教師に移った幹部は少なくとも11人。局長手前の審議官クラスにあたる78 年入省組はキャリア組15人のうち、既に5人が大学教授に転じた。将来の次官候補と言われる若手官僚の中にも、「先生の職を探したい」と口にする人が複数 いる。

 医事評論家の水野肇氏は「かつて大学に行くのは将来的に組織の主力になる人ではなかった。今や、一番優秀なのが教授になりたがる」と憂える。
 ◇「弱者の味方」が…

 96年末に大物官僚と言われた岡光序治厚生事務次官(当時)による収賄事件が起きた。

 04年には年金などの保険料を、福祉施設から職員の練習用ゴルフボール代にいたるまで、約6兆円流用していた事実が発覚。その後も国民年金保険料の不正免除、年金記録漏れなどと信用を失墜させる不祥事が次々と明るみに出た。

 ただ近年の士気低下は、むしろ被害者意識に基づいている。それは消費税率引き上げを封印し、年間2200億円の社会保障費抑制を打ち出した小泉改革路線と無縁ではない。

 後期高齢者医療制度とセットで出されたのが、高齢者の長期入院施設、療養病床を6割減の15万床に減らす方針だ。厚労省は入院不要の患者もおり15万床まで減らすことが可能だと説明し、結果的に3000億円が圧縮できると試算した。

 ところが、当時保険局に財務省から課長補佐として出向していた村上正泰氏は、中央公論3月号で「医療費削減ありきだった」と暴露。3000億円削減のために療養病床をどれだけ減らすか、というつじつま合わせをしたというのだ。

 当時、保険局にいた幹部は「マイナスシーリングの予算を作るのが最優先。哲学はその次になった」とこぼす。

 04年の年金改革。厚労省は年金に「マクロ経済スライド」を導入した。従来は、物価が1%上がれば年金も1%増えた。だが、同スライドでは物価が1%増でも年金は0・1%しか増えない。

 改革に関与した元幹部は「物価がどんどん上がったらどうなるのか。弱者の側に立つ厚生官僚として、私はやってはならない政策に手を染めた」と話す。

 以前は族議員と組んで、増えるパイを利害が対立する関係者に配分するのが主な仕事だった。低成長の今、給付カットという我慢をだれに強いるか、その説得が中心となった。
 ◇「役所の殻」破れず 細りゆく現場感覚

 削減を強いられる中で、現場感覚がますます先細ってしまったのではないか。

 「こんなことを書いてだれが喜ぶか。当事者の身になってみろ」 4月9日、国会内で自民党の尾辻秀久参院議員会長は、保険局担当の官房審議官ら幹部に声を荒らげた。

 後期高齢者医療制度には、患者の病状急変時の治療方針を文書化すれば、医師に報酬が出る「終末期相談支援料」が新設された。

 厚労省が持参した説明文には、75歳以上の人に関して「避けることができない死を迎える」と書かれていた。尾辻氏が怒ったのは、3月末にその表現を削除するように注文したにもかかわらず、官僚が無視したためだ。

 関係した官僚は「高齢者とて、自らの死は直視できないという想像力に欠けていた」と反省の弁を口にする。しかし、その感覚の鈍さが保険料の年金天引きに如実に表れた。

 後期高齢者医療制度で保険局は「低所得者は保険料が下がり、高所得者は上がる」と説明。ところが、低所得者の方が負担増となった割合が多いと分かった。自治体に調査さえしなかったためだ。

 保険、年金両局は次官への登竜門となる部署だ。社会保険庁という現場の実動部隊を持ち、仕事の中心は制度設計。「現場を知らないのがエリート」という思い違いを生んだ。

 旧厚生省はエイズや肝炎などの薬害を引き起こした。その反省は省全体の共通認識になかなかならない。保険、年金両局の文系エリートは「薬は技官の世界の話だ」と対岸の火事を決め込む傾向があるからだ。
 ◇「昔のままの感覚」

 福田首相は17日、消費税増税の必要性をにじませた。一方、翌18日、津島雄二党税調会長は「首相は税制は頭に入れず、政策をどんどん打ち出すのがいい」と増税には否定的な見解を示した。選挙を控えた福田自民党政権の方向性も定まらない。

 70年度には国民所得の5・8%に過ぎなかった社会保障給付費は、25%近くに達した。旧厚生省の掌中にあった社会保障の制度設計は、税制論議を軸にした大きな政府か小さな政府かという、国家のあり方の議論なしに成り立たなくなった。

 「これだけ社会保障は大きくなったのに、感覚は昔のまま。みな、その溝を埋められずにいる」。あるOB官僚は漂流感が生まれるのは、役所だけで完結できない限界を感じているためだという。

    ◇

 「読む政治」は吉田啓志、堀井恵里子、佐藤丈一が担当しました。

毎日新聞 2008年6月23日 東京朝刊 

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