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「白い巨塔」であった頃
医師会員の大部分は,大学の医局に所属した経験を持つであろう.一昔前の教授を頂点とする医局制度には,良い点もあったにしても,よその世界から見れば,前近代的な組織というほかはなく,その影で泣いた医局員も多かったに違いない.
その実情は,誇張した姿ではあったが,山崎豊子の『白い巨塔』(一九六五年)によって,日本中に知られることになった.つい最近も,「白い巨塔」はテレビドラマとして,全国に放送され,大学病院について新たな誤解を生んだのではなかろうか.例えば,教授選考にしても,教授回診にしても,『白い巨塔』時代の話であり,合理化され,近代化された現在とは混同して欲しくない.困ったものだと言いながらも,私自身,あの番組をおもしろく見た一人である.
大学病院は,一昔前の『白い巨塔』の時代を経て,今は,最も良心的な病院に生まれ変わった.しかし,大学病院は,今,「白い廃墟」になりかねないところまで追いつめられている.
現実となった「破綻のスパイラル」
法人化して一年も経たない時,私は内閣府の総合科学技術会議からヒアリングを受けた.研修医,医師不足,負債償還,経営改善係数,医療費削減などの問題が相互に働き,大学病院は「破綻のスパイラル」に入って行くであろうという模式図をつくった.「破綻のスパイラル」は,大学病院関係者の不安を端的に示したこともあり,いくつもの大学の教授会が,資料として配布したと聞く.
残念なことに,それからわずか二年の間に,「破綻のスパイラル」は現実のものになってきた.国立大学協会の調査によると,いわゆる赤字病院は増え続け,平成十八年度には,四十一病院中八病院,二〇%が赤字となった.三年後に赤字になると予測している病院は十九病院(五三%)を数える.
赤字になったらどうするか.法人化したのだから,自己責任ということで,文部科学省は救いの手を差し伸べる様子はないようだ.とすると,大学本体の予算を削ってでも,病院に回さざるを得ない.しかし,億単位の病院の赤字にお金を注ぎ込むと,他の学部,例えば,文系の学部は吹っ飛んでしまうであろう.病院原発の赤字病巣が,全学に転移し,大学を破綻させるところまで来ている.
大学病院は単なる大きな病院ではない
大学病院は,単なる大きな病院ではない.医師,看護師など医療人の養成に加えて,最先端の医学研究をするのも大学病院の使命である.それが,今,怪しくなってきた.
国立大学協会の調査によると,臨床医学の論文数は,ピーク時(二〇〇〇年前後)に比べて,二〇〇五年には一〇%も減少している.特に,地方国立大学での減少が目立つ.この間に,世界の論文数は七%増加している.このままでは,日本の医学研究は世界から取り残されていくことになるだろう.
その最大の理由は,病院の財政状況の悪化である.医師は診療科長から,診療科長は病院長から,病院長は学長から,収入を上げるよう圧力を受け,その結果,研究に使える時間がなくなってしまったのである.
その診療さえも,大学らしい診療はできなくなってきている.高価な薬は使わないよう,なるべくジェネリック医薬品を使うようにしなければ,負債を返せない.最高の,そして時には最後の治療を求めて大学病院に来る患者さんの期待に対して,もはや大学は,それに応えることができなくなってしまった.
大学病院は,診療,それも市中の病院ではできないような高度医療と,これからの医療を開くための研究と,次代を担う医療人への教育を任務としている.そのような大学病院の役割を,文部科学省と財務省は正確に理解して欲しい.
「白い廃墟」となる大学病院
大学病院の今の状況は,ローンで車を買った人に似ている.大学病院の再開発のために負債のある病院は,一生懸命ローンを返しているが,あと数年のうちにローンが返せなくなり,自己破産するほかなくなるであろう.古くなったので新車を買おうとしている人(再開発しようとしている病院)は,財政基盤がないためローンを組むことができず,今の車(病院)が走れなくなるまで乗りつぶすほかない.
このままでは,大学附属病院はその役割を果たすことができず,財政的に破綻に追い込まれ,「白い廃墟」になってしまうだろう.財前五郎が知ったら何と言うであろうか.
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地方大学の医学部の状況は、ほぼ同時に兵糧攻め(科研費の割り当て削減)と転進&玉砕(医局員入局ゼッロ!に派遣先からの撤退)という名の非常事態発生が続いています。
「国会答弁的」には、医師が偏在し、余っているはずの大学医局でさえ、この数年の入局する医師数の減少ぶりに慌てていると思います。
サブプライムローンショックと同じです。どこも少人数の医師を派遣先に出しても状況が悪く、派遣が続くとは思えないから、各地方自治体からの医師の派遣要請には応えられません(イージーに対応して1~2年で撤退など無責任の極みだと思います)。また、大都市の周辺の病院ならまだしも、一旦県外など遠方の病院に出されたら次の交代人事は送られてくるのか・・・と医局員の医師の先生も及び腰です。
新研修制度の導入で、若手勤務医と医局のかわりの仕組みが、だいぶ破壊されました。都市部の病院はともかく、地方大学が人事交流の大切な場であったものを、徹底的に破壊したのですから、再生を考える必要があります。
厚生労働省はその役目を地方自治体にオ・マ・カ・セですが、昨日の兵庫県のお役人の「無策」ぶりが目立つのですが、彼らが医師を「公務員になりたくて仕方がない」と見ている限り無理です。
医師は職人(技術職)ですから、その経験を積むには医局制度が崩壊した今、初期研修や後期研修では施設が選ばれるのは仕方ありません。
ただ、医師は公共財なので、ある程度の間は「シェア」されてしかるべきだと僕は思います。本田先生にお聞きしましたが、アメリカの医学部の場合、地域枠は65%くらいだという話でした(都市部は違うのかもしれませんが)。
そういう中で、地方の大学に進んだ医学部生にとって「それは不公平だ!」というかもしれませんが、自分も地方大学に居たので知っています。
自分は出身大学医局には所属しませんでしたが、同級生の中から若手研修医の間に、1年から2年の国内留学をしていた友人が何人もいます。
天理よろず相談所、国立循環器病センター、三井記念病院、豊橋ハートセンター、聖隷浜松病院、倉敷記念病院・・・など、こういう優れた研修病院の狭き門を通って研修を受ける権利を地方の若手医師に提供していたのも事実です。
医局のシステムを古い因習だという先生も確かに見えます。しかし、学会とはまた違った意味で、医局制度を見直すと、「良い点」もなかった訳ではない・・・というと新しい先生がたには、違和感を感じるかな?でも、いまだに愛着があるのは何とか学会じゃなくて、所属医局なんです(古いかな?)。
自分は医局人事からはずれながらも、毎年、医局の同門会でお世話になったオーベンの先生や同期や後輩、先輩の先生に会うのはとても楽しいと思って参加しています。
逆に、研修指定病院時代の同期は、各科ごとに専門分野が違うため、もう会わなくなって10年以上、彼らは今、何をしているのかなぁ?4つ5つと派遣病院を動いたから動向がまったくわかりません。
いずれにせよ、医局人事制度は確かに古い側面(医学博士号のためにお礼奉公や報復人事など)があったのも事実ですが、良い点もなかったわけではありません。
それは医局人事は、医師のキャリアパスを提供してきたのです。今や、研修している医師の関心事はそういう未来が描けにくいことじゃないでしょうか?希望通りに、大都市の病院で研修しても、戻るべきホームベースは?専門医を取るために身を粉にして働いても、常勤職員になれる保障は?(ま、なくても若い内はいいでしょうが・・・)。研究がしたい?医学研究をするにしても大学の方が設備もあるし、色々と相談にのってもらえます。留学にしても、経験した医師が複数いますが、市中病院ではちょっと難しいかな?
また大学医局が治療成績のいい施設に優秀な部長先生を配置しているのは確かなことですし、そこにはやはり従来と同じで医局の派遣が中心だったりします。
そんな感じで、ぼちぼちと医局人事と新しい研修システムについて考えました。簡単に言えば、医師が不足しているのに充足させよという無理難題です。
厚生労働省の考え「研修必修化」は僕は間違いじゃないと思いますが、「医局制度」と弱いながらも結びついた形が、地域医療の崩壊のある程度の歯止めにならないか?と僕は思っています。
いろいろご意見ありがとうございました。
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