実は週の半ばにお仕事を半日お休みして長野まで行っていました。あんまり出歩いていると「わんこを放り出して何やってんだゴラァ!」って声があるかもしれません(知人に預けてます…汗)。
日付けは8月8日、ゾロ目の日。小布施ッションがついに7年目に入った、記念すべき第73回目?ついでにセーラ・マリ・カミングスさんが結婚して、初めての小布施ッションでした。
テーマは、ソーシャルキャピタルやソーシャルソリューションといったテーマで、慶応大学政策・メディア研究科(SFCキャンパス)の金子郁容教授の講演会がであったので、出席しました。
金子教授の名前は実は、慶応幼稚舎の校長先生に就任した時に、小学校の入学願書の両親や祖父母の出身校の欄を消したことくらいしか知りませんでした(画期的な試みでしたが、一部の人たちから大反発があって、校長先生は今は辞任されているとAERAに載ってました…)。
「コミュニティ・ソリューション」って???ですよね、自分も同じでした。社会・経済問題の解決法における新しい考え方や方法問題を解決する方法として、今までは、政府による手法と市場による手法しかなかったのですが、新しい方法として小さなコミュニティによる解決について、その実例についていろんなお話をしてもらいました。
最初に東京のある空き地をめぐってコミュニティで共有されていた例を提示されました。その空き地では管理人もいないままに、朝は犬の散歩うやゲートボールに利用され、昼は保育園の散歩、土日は野球など公共の公園と違って、地域社会で共有できる広場としてみんなが利用してきました。
この広場は、自治体が管理に手を出すこともなく、みんなが共同で利用しており、そういうコミュニティの輪の中で実は大切なのは、お互いの相互理解とか譲り合いであって、これを市民の手から自治体の管理になると、午前9時から12時までは抽選で○×さんの所とかそういうわずらわしいこともなく、上手にリソースを共有できていたそうです。
こういうコミュニティでの共有というのは地域ごとに小さい中でだと上手にうまくいくということでした。もちろん、都心部ではそういう公園が一部の心ない人による落書きやゴミのために、利用者さんが気持ちよく利用できなくなってしまいがちですが、行政や市場が立ち入らない形で、地域ごとのコミュニティで解決する方法、つまりソーシャル・ソリューションの可能性を広げているという導入から話が始まりました。
社会や経済の問題について、従来は、「政府による解決(助成金・保護)」か「市場に任せる解決(自由競争)」しかなかった解決方法のほかに、ソーシャルソリューションというのがあります。
たとえば、起業。ミュージック・セキュリティーズという会社があります。もう7年目になるそうですが、大手レコード会社が採算のために見送ったアーティストの育成&デビューのための資金調達の仕組み、音楽ファンドを通して、アーティストの支援をしているようです。
実際に、地域のアーティストで東京のレコード会社では手を出せない、しかし、いい音楽を作っている人たちにとって、この音楽ファンドというのは、従来の市場原理では世に出ることができない人たちがデビューするきっかけになりますし、また投資した人には、年利14%の利回りで回収できるノウハウが集まっているため、今は映画の資金を調達するようになっているそうです。
教育現場でも、地域に小学校を残すために、コミュニティ・スクールの仕組みを利用して、小さな僻地の小学校(生徒数15人程度)に地域社会(人口100人程度の小さな村落)が参加して、都会の子供を田舎で育てるような仕組み(山村留学)を作って、その小学校では地元の小学生は1人しかいないのに、都市部から10人以上集まって、地域のへそとして活動している具体例が紹介されました。
そして、都市部から生徒だけでなく、教師も見学してもらった上でその地で勤務を希望した人をコミュニティが県の教育委員会を通して 小学校で採用する仕組みなどを通して、お互いに希望する先生を小学校に来てもらうような仕組みになっています(僻地の医師を集める仕組みもこういうのだといいですね)。
↓
伊座利ねっと「おいでよ海の学校へ」
また、医療の実例では、横浜の300世帯くらいの家庭が3人の医師と一緒になり、全ての家庭と定額制の年間契約を行い、各世帯と医師はいつでも24時間のホットライン結ばれており、定額制のため、いつでも医師が電話対応を行い、緊急時は契約している住民の安心を得るとともに、在宅診療が継続されている様子を教えてもらいました。
このライフケアシステムという仕組みでは、在宅療養を3人の医師で25年も継続できているということでした。
その効果としては、通常の担がん患者さんの在宅死の割合が6%に対して、このライフケアシステムでは、64%が在宅死を迎える(これは驚くべき数字ですね)。一方、医療にかかる費用はというと、通常の担がん患者さんがターミナル医療に100万円かかるのに、このシステムを利用する人の場合、25万円程度ということで、費用は1/4、効果は10倍ということで非常に画期的です。
契約している家庭にはそれぞれ患者さんの困った時のために薬を配置してあり、何か困った症状がある時には、電話で問い合わせると、患者さんの症状にあわせて医師が薬を内服の指示を出すことで、極力、夜間の往診を必要としない、しかし電話でいつでもつながっているという…家族にとっては安心できるシステムつくりに成功しているようです。
実際に電話での問い合わせは1週間に数件、実際の往診は1ヶ月に1~2回程度と、このコミュニティでは、上手にいっているようです。この仕組みを厚生労働省の辻事務次官が注目しており、いわゆる「辻説法」にも一部取り入れられているようです。この仕組みの収益の6割が年間契約料であり、5%くらいは寄付だそうで、その寄付の中でも3割は1年間に一度も利用されない人からの寄付もあるそうで、なかなかソーシャルキャピタル(社会関係資本)の高い仕組みだと思いました。
↓主催されていた佐藤先生が寄稿している雑誌です
今こそ在宅医療の真髄を具現するとき―「ライフケアシステム」25年の経験から :佐藤 智
在宅医療の経済を支えるのはCOMMUNITYである
―4分の1はそこからのCONTRIBUTIONで :佐藤 智(ライフケアシステム)
ただし、かつては他の都市でも同様の仕組みがありましたが、医師のうち一人でも離脱するとすぐに終わってしまったため、25年も続いたのは、このコミュニティだけだそうです。
この他にも、医療の場合、インターネット禁煙マラソンが紹介されましたが、この場合はインターネットを通して、喫煙者の禁煙をすでにこの禁煙マラソンで成功させた先輩たちが、後輩にあたる喫煙者をメールでサポートしながら、禁煙を成功させる仕組みも確かにソーシャルソリューションで、この仕組みでの中長期の禁煙成功率は60%と、いわゆる医師による禁煙外来に比べても非常に優れた仕組みだといえます。
そして特徴としては、喫煙者が禁煙にトライをして、挫折しそうな時には、メールでのサポートは、そういう人にたくさん支援の声が届くような仕組みになっており(要は簡単に禁煙できる人にはサポートは少なめ、離脱が困難な人ほどたくさん支援のメールが届く)、効果も高い。実際に福祉の現場でも、本当に必要な人にサポートが届いているのか判断が難しいことがありますが、この仕組みですと、確かに「困難」なハードルに挑戦している人(弱者)に、しっかりサポートが行くという素敵な仕組みだなと思いました。そして、その支える人たちもボランティアベースで、元喫煙者という経験者たち。こういう枠組みを作ったのは奈良県の高橋先生ですが、そのあとはコミュ二ティの人が運営に関与することで長く継続可能になっています。
実例としてはいくらもありましたが、こういう仕組みでなんとなく思ったのは「夕張」ですね。
かの夕張は財政は破綻、市役所もコアの人材がどんどん辞めてしまい、まったく機能しない状態ですが、村上医師というリーダーのもとに、人材が着実に集まり、この7月からは3名の医師の体制となり、夏休みということで、在宅医療を見学したい医学生さんが全国から集まっているようです。
医療の場合、従来の手厚い福祉というのも理想ですが、政府や地方自治体の財政が厳しい中(公務員の怠慢や能力不足はあるので、それは指摘しておきますが)、こういう住民がコミュニティを作り、その中でみんなが利用できる仕組みというのは、持続できる仕組みをつくって、その中でやっていくにはいい解決方法かもしれません。
従来の公的医療保障の仕組みだと、全員が平等で加入しても、その中で、一部の人が医師を独り占めしてしまえば機能しません。そして税金の投入もこれ以上は難しいです。
また「医療保険」のような市場原理の仕組みだと、病気がちとか既往歴がある人にとって、「不利」に作用し、加入できなかったり、割り増しされた保険料を支払う羽目になるなどあります。
コミュニティの場合、できる範囲が明確なので、納得がいく。そして弱者である夕張市民にとって、病院を通して在宅医療が浸透していくことはまさに時代の最先端なのかもしれません。
もっと、教育と家庭、地域社会の結びつきについて、いろんな話がありましたが、こういう「市場」でも「政府」でもない、新しい解決の仕組みとしてコミュニティの力は、お役所任せのやり方とは違い、地域のお年寄りや仲間といったボランティが、単に「介護される立場」として扱われがちな高齢者も、お互いに出来ることを提供し、支えあう仕組みで、政府が出来ないから、「お役所」や「市場原理」にゆだねるやり方よりも、利用者との対話により可能性があり、ひとつのソリューションとなりうることを示していると思いました。
金子郁容教授の「ソーシャル・イノベーション概論」
http://gp.sfc.keio.ac.jp/lecture/lecture2-1.php
ボランティア―もうひとつの情報社会 (岩波新書)
金子 郁容 (著)
内容(「BOOK」データベースより)
単に収入を得る手段としてだけでなく、自己実現のために、そして環境・人権などの課題に使命感をもつ―このような価値観をもって働く社会起業家がいま注目されている。社会責任投資の高まり、企業とNPOのパートナーシップといった新しい動向を明らかにしながら、アメリカ・日本の社会起業家の生き方を紹介し、その意義を考える。
コミュニティビジネスの時代―NPOが変える産業・社会、そして個人―
本間 正明 (著), 金子 郁容(著), 山内 直人 (著), 大沢 真知子 (著), 玄田 有史 (著)
出版社/著者からの内容紹介
高齢少子化,リストラ,地域社会の疲弊…閉塞感が漂う中,新しい社会や経済のインフラとして急速に台頭してきているのが,NPOを軸としたコミュニティビジネスだ.介護サポート,子育てサポート,地域産業支援,まちづくりなど新産業と雇用を生み出している.豊富な事例とデータをもとに,その可能性を探ってゆく.
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↓ついでに小布施ッションのことやセーラさんについてはこの本を参照。
セーラが町にやってきた
清野 由美:著
asahi.com 2007年08月11日06時13分
75歳以上の後期高齢者を対象にした新しい医療保険制度が08年4月から始まるのに伴い、新たに保険料を負担しなければならないお年寄りが約200万人にのぼることが10日、厚生労働省の調べで明らかになった。これまでは、サラリーマンをしている子供や配偶者の被扶養者として保険料を支払う必要がなかったが、新制度の発足により、年金収入などに応じて保険料負担が課されるようになるためだ。
75歳以上の高齢者は約1300万人。新制度により、このうちの約15%に新たな保険料支払いという負担増が生じることになる。残りの大半の人はこれまでも国民健康保険(国保)などに加入して保険料を払ってきている。
厚労省の05年時点の試算によると、新制度の1人あたりの平均保険料は月額6200円、年額では約7万4000円の負担となる。このため、経過措置として、新たに保険料を負担する高齢者に対しては、2年間、半額以下に引き下げる方針だ。
現行の医療保険制度では、保険料を世帯単位で負担する仕組みとなっており、高齢者の多くは市町村の国保に加入。一方、子供や配偶者が会社員や公務員で、その被扶養家族として健康保険組合や共済組合などを利用している高齢者は、これまで保険料を負担せず窓口負担だけで公的医療を受けることができた。
だが、新しい後期高齢者医療制度では、介護保険と同様に、世帯単位でなく高齢者一人ひとりから公的年金の天引きで保険料を徴収することになり、被扶養者だった高齢者も保険料支払いの対象になった。
ただ、新制度は高齢者の1人あたりの医療費の格差に応じて都道府県単位で保険料を決めるため、すでに国保に加入して保険料負担をしている高齢者世帯にとっては、新制度で負担が増えるのか、減るのかは明確ではない。都道府県別の保険料水準は11月ごろに示される見通し。
さらに、08年度からは、70~74歳の窓口での患者負担も原則1割から2割に引き上げられる。
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こんなことが表に出るのが「選挙後」だってのが大事ですね・・・もっとも、これは厚生労働省がひたかくしにしてきたことではなく、大手新聞社は情報を入手していながら、まともに報道してこなかったからだと思います。自分は少なくともこのブログではできるだけ注意してお知らせしてきました。
「[イギリス型医療への突破口?]」3/5
「[総合医と高齢者診療報酬]」4/12
「後期高齢者医療の逆進性」5/14
「[未来日記]日医も反対する近未来」6/21
今後、医療制度、福祉制度の費用をめぐって老人の自己負担が増え続けます。問題は、こういうことについては「国会」でもきちんと討論されるのはこれからですし、与党は予算のことがあるので、野党と取引になります。
だいたい、予想すると、来年の4月からでは「周知徹底に時間がかかりすぎる」とか「急増は困る」ということで、半年くらい導入が先送りになります。しかし、大枠はこのままだと思います。
これについて、国民は次の衆議院選挙まで「意思表示」が出来ません。おしいことをしましたね。自民党+財務省による「福祉縮小」政策に歯止めをかけそびれました・・・。マスコミ諸氏は、大事なことを伝えるための「社会の木鐸」だと自認しているのなら、きちんと報道して欲しいですね。
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