自民党の有力支持団体である日本医師会の政治団体「日本医師連盟」(日医連)が揺れている。今夏の参院選をめぐり、茨城県医師連盟が1月30日、本部方針に反して国民新党公認の自見庄三郎元郵政相(61)の推薦を決めたのがきっかけだ。自見氏は、一昨年の郵政解散選挙で郵政民営化に反対して自民党を離れ落選した“造反組”。同様の動きは他地域に波及する可能性がある。同県では、ほかにも支持団体分裂の動きが出ており、保守王国の動揺に自民党には危機感が広がっている。(水内茂幸、村上新太郎)
会長選のしこり
「弱者切り捨ての今の自民党の医療政策に警告のメッセージを出さなければならないとの声が強かった」。
茨城県医連の原中勝征委員長は、自見氏の推薦理由をこう説明した。
同県医連は、日医連本部が昨年8月に参院選比例代表候補として、自民党現職の武見敬三厚生労働副大臣(55)の推薦を決めたあとも、自見氏単独推薦を模索した。
しかし、「自見氏だけを推薦すれば日医連を脱退しなければならない」との懸念が広まり、結局武見、自見両氏を同時推薦する形をとった。
ただ、日本医師会内部では「武見氏も推薦といっているが、事実上の自見氏の単独推薦だ」(関係者)との受け止めが広がっている。
同県医連が本部に反旗を翻した背景には、昨年の日本医師会会長選がある。小泉政権と距離を置く前会長と、自民党との関係改善を主張した現在の唐沢祥人会長とが激しく争い、武見氏が唐沢陣営の支持に回ったのだ。
そのしこりはなおも残り、日医連本部の武見氏推薦の際も、前会長派の近畿6府県の医師連盟が席を立って反対する場面があったほどだ。
引き締めも…
日医連本部も座視しているわけではない。茨城県医連が両氏推薦を決めた翌1月31日、「日医連の規約に違反し選挙活動の妨害だ」との声明を発表。日本医師会の唐沢会長も産経新聞の取材に対し、「政権与党の自民党に医療現場の声をきちんと伝えるには、信頼関係を築いてこそ、はっきりものが言える」と痛烈に批判。「会長選のしこりと、政権への影響力があまり期待できない国民新党の候補を推薦するのは全く次元が違う」と突き放している。
日医連本部は、近く同県医連から事情聴取を行う予定だ。ただ、原中氏は「近畿を中心に同様の動き(自見氏推薦)が広がると予測している」とみている。武見氏推薦を決めていない医師連盟は全国で10程度ある。近畿地方の医師連盟には自見氏に接近を図る動きも出ており、造反拡大の可能性は否定できない。
想像超える弱体化
日医連の分裂劇に、自民党執行部は「医師会会長選をめぐるゴタゴタが理由で、自民党離れではない」(参院幹部)と平静を装う。
しかし、党内には危機感を持って茨城県の動きを注視している向きは多い。全国で最も人口あたり自民党員数(5万7500人)が多い保守王国での出来事だからだ。
同県では、自民党の支持団体である日本歯科医師会の地方組織・県歯科医師会員が昨年6月に民主党職域支部を設立した経緯もある。これは全国で初めてのことで、自民党県連は「全く屈辱的だ。医師連盟と連動した動きであるのは間違いない」(幹部)とショックを隠しきれない。
県連は郵政解散選挙のしこりで、特定郵便局長OBで組織する「大樹」メンバーが平成16年末の約2700人から、17年末には約220人に激減し、比例票の底上げのため党本部から求められた参院選挙区での2候補擁立を事実上断念した。「統一地方選や参院選を前に、支援団体の立て直しを急ぎたい」(別の幹部)と焦りの色を濃くするが、特効薬が見つからないのが実情だ。
医師会以外の支持団体でも自民党離れの動きが目立っている。日本看護協会の元常任理事や日本青年会議所(JC)の前会頭が民主党公認候補として参院選への立候補を決めているのだ。
こうした事態に、自民党では「小泉構造改革で進んだ自民党支持基盤の弱体化は、われわれの想像以上に深刻だ」(参院中堅)との声も漏れ、全国的な自民党離れへの警戒感が広がっている。
(2007/02/04 02:12)