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厚生労働省は、出産前後の周産期医療の実態を調査するため、都道府県に対し、管内に設置された総合周産期母子医療センターの「新生児集中治療室」(NICU)の充足状況や他県との連携などについて確認するよう通知した。ベッド満床などを理由に、妊婦が病院に受け付けられないケースが多いとされ、実態把握を進め、対策に生かす方針だ。
NICUの運営については、日本産婦人科医会や研究者の調査はあるが、厚労省が本格的に調べるのは初めて。
同センターは、リスクの高い出産に対応できる医療施設で、昨年7月現在、39都道府県に計61施設ある。NICUの病床数は原則9床以上で、周産期医療ネットワークの中核に位置付けられている。実態調査は(1)受け入れや他県とのネットワーク状況(2)NICUの後方支援などについて--の2種類。
管内のNICUの充足状況について、不足している場合、具体的な不足数の回答を求める。また▽搬送を受け入れられなかった件数と理由▽センターの空床状況などを提供するコンピューターシステムの設置の有無▽県外への搬送者数--など、救急体制の機能状況なども調べる。
さらに、ベッド満床の背景とされる長期入院の重症児との関連で、NICU(05年度実績)の平均入院期間、最大入院期間、病床利用率、年間利用者数なども確認する。【玉木達也】
毎日新聞 2007年1月28日 3時00分
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「平成の大合併」で10町村が一つとなった栗原市。宮城県で最も広い市の産科医療は、たった一人の開業医が支えている。
旧築館町で、ささき産婦人科クリニック(16床)を開業する佐々木裕之さん(50)。「志願したわけじゃない。気付いたらアラモ砦(とりで)に一人立てこもってしまった」。冗談めかした言い回しで窮状を説明する。
父の跡を継いだのは1995年。当時、10町村には出産できる医療施設が公的病院と民間診療所で計5カ所あった。少子化や医師不足、医師の急死。次々に休診、閉鎖へと追い込まれた。
「栗原、そして登米、気仙沼・本吉。宮城県北の産科医療は、がけっぷちに立たされている」。表情を険しくする佐々木さん。「見落とされている危機的な事実もある」と、こう付け加えた。
「産科開業医の循環が途切れつつある」
2005年に誕生した子どもの出生場所は、小規模施設の診療所(19床以下)が47.4%を占めた。日本のお産の半分は開業医が背負う。
栗原、登米、気仙沼・本吉の3広域圏でお産を扱う開業医は今や4人。ベテランの域に入る佐々木さんが最も若い。「東北のいわゆる郡部は、ほとんどの開業医に後継者がいない。新規参入もない。絶滅寸前です」
佐々木さんはこの10年、家族旅行も学会も行けなかった。年400件を扱っていた分娩は、2年前から350件前後に抑えている。あまりの忙しさと、求められる医療レベルが年々高まっているためだ。
「産科開業医はとてもやりがいのある仕事。でも、苦境がやりがいを超えてしまった」。子どもが医師を志望しても跡を継がせたいとは思わない。「わたし自身、あと何年やれるか」。笑みを絶やさない大柄な体には、どこか疲労感が漂う。

産む場を求め、栗原では市境・県境を超える妊婦も増えている。宮城県北の拠点病院、大崎市民病院も受け皿の一つ。第一産婦人科長の我妻理重さん(41)は言う。「もし佐々木先生がいなくなったら、栗原どころか、県北の産科医療に重大な影響が出る。ここにも、もっと大勢の患者が押し寄せる」
地域のお産を支え合う開業医と病院。産科医療は、両輪がそろってこそうまく回る。
「このまま開業医の世代交代が滞れば、地方の診療所から『出産難民』があふれ出す。あと5年で、未曾有の事態が起きますよ」。佐々木さんの危惧(きぐ)が現実味を帯びる。
連載「お産SOS―東北の現場から」に医療関係者らから寄せられた声は、厳しい勤務環境への悲痛な叫び、産科医療崩壊を招いた要因への糾弾が目立っている。
「厚生労働省は増大する医療費を抑制するあまり、産科を筆頭にして始まった医療崩壊を困ったことと認識していない」。こう指摘する静岡県の内科勤務医(50)は「現場の声を聞き、実効ある対策を立てるべきだ」と迫る。
分娩(ぶんべん)の扱いをやめる病院や開業医が相次ぐ原因としては、医療費抑制を進める国の施策、医療行為に対する厳しい司法判断、国民の権利意識の高まり、大学病院の医局体制などを挙げる意見が多い。
東北の病院で働くという医師は「医者だから寝る間も惜しんで患者を診るのは当たり前だと思っていませんか」と率直に問いかけ、「医師の現状を少しでも理解してほしい」と訴える。
連載の第1部では、産科医の道に進む学生が激減している現状を紹介した。研修医になる直前という大阪府の学生(25)は、生命の誕生を助ける産科の素晴らしさを認めながらも、進路には選べないと告白する。「激務を強制させられる上、ミスを絶対に許さない。『犯罪者』になりたくない」
窮状の打開策に関しては「都市部への医師集約化は仕方ない」(埼玉県の男性)「医師の絶対数が足りない」(宮城県の女性ら)という声が圧倒的。医師不足に不安を抱く住民の署名活動に対し、「医師が来たいと思うような招聘(しょうへい)策を自治体や地域は考えるべきだ」という提起もあった。
福岡県の男性医師(39)は、勤務医を守れるのは地域住民しかいないと断言する。「医師の待遇を改善し、不当な訴訟のリスクから回避できる仕組みや精神的なサポートを自治体に働き掛けるべきだ」と呼び掛ける。
山形県の開業医は助産師の資格問題が医師不足に深くかかわっていると分析。助産師が大病院に偏在し、内診行為を医師か助産師に限るという厚労省の通知が開業医を苦境に陥れているとして「これでは少子化対策ではなく、少子化政策。分娩開始から娩出期の内診は、医師の指導の下に看護師もできるよう変更すべきだ」と主張する。
茨城県の産婦人科勤務医(45)は「ここの掲示板を一人でも多くの人に読んでほしい」と河北新報社がインターネット上に開設した専用掲示板に書き込んだ。
一方で、マスコミの報道の在り方に異議も相次ぐ。「本来、患者と医師は病気に対してともに闘う仲間なのに、マスコミの横やりでしっくりいかない」(東京都の男性)「マスコミは面白おかしく医者たたきをしてきた」(北海道の男性)などだ。
宮城県の整形外科勤務医は「産科と同じことが内科、整形外科などでも起きている」と警鐘を鳴らす。地域医療の危機を象徴するお産の現場を通して、批判への答えも連載で示していきたい。(反響特集は随時掲載します)
【写真説明】病棟を回診する南会津病院産婦人科の安部宏医師。生命と笑顔の輝きが過酷な医療現場に踏みとどまらせている=福島県南会津町
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