厚生労働省は、病院などの医療機能情報を公表する新たな制度の実施要領を決めた。患者の病院選びを支援するのが狙いだ。(社会保障部 阿部文彦)
公表制度は、今春に成立した改正医療法に、来年4月施行が盛り込まれた。これを受け、厚労省の検討会が31日、公表する情報の範囲と実施要領をまとめた。
要領では、病院、診療所などの医療機関と薬局に対し、医療機能に関する情報の提出を義務化した。都道府県が情報を集約し、インターネットなどでわかりやすく公開する。病院の場合、予約診療、差額ベッド料金、専門医の数、地域連携の体制など基本情報だけで56項目に上る。
厚労省が、都道府県を主体にした医療情報公表制度の整備に乗り出した背景には、病院を選ぶ情報が乏しいといった患者や国民の不満がある。
患者を対象にした厚労省の受療行動調査によると、入院先の病院を選ぶ理由の上位を、「かかりつけ医だから」「医師に紹介されたから」が占め、「専門性が高いから」「インターネットなどで紹介されていたから」を大きく上回る。かかりつけ医の助言抜きに、適切な医療機関を探すのは容易ではない。
公表制度は、厚労省が2008年度にスタートさせる新しい医療計画の柱でもある。医療計画は地域医療のあり方を定めているが、今春の医療制度改革で抜本的に見直され、脳卒中や救急医療などの分野ごとに、医療機関の連携を重視した体制に移行する。「公表制度によって、患者の選択が促されるため、医療機関の機能分化が進む。結果として、医療提供体制は効率化し、連携も円滑になる」と、九州大大学院医学研究院の尾形裕也教授は指摘する。
ホームページを使った医療機関の無料検索サービスは、東京、大阪、福岡などの一部の都府県のほか、独立行政法人「福祉医療機構」などの公的な機関がすでに実施している。東京の医療機関案内サービス「ひまわり」は、自宅や勤務先近く、女性医師が診療しているかなど様々な条件で選ぶことができ、利用者は年間延べ130万人に上る。
しかし、ほとんどの自治体は、夜間や救急医療のみに限定している上、すべての医療機関を網羅していない。東京でさえ、すべての病院、診療所の3分の2に当たる1万6000件しか登録していない。義務化により、全医療機関が報告する意義は大きい。
公表制度は患者中心の医療を実現する大きな一歩となるが、課題も残る。
一つは、情報の信頼性だ。都道府県は医療機関から報告された情報をそのまま公表するため、事前チェックは一切行われない。虚偽の情報とわかった場合は、医療機関に再報告を求めるが、中規模の県でも数千を数える医療機関の情報を確認するのは不可能だ。
このため、検討会でも、「いかに信用性を担保するかが都道府県の責任だが、事務量が多く、どこまで責任を持てるのか不安」といった懸念が、都道府県の担当者からもれた。報告される情報は、医療機関が各都道府県の地方社会保険事務局に届け出る施設基準と重なるものも多い。社会保険事務局の情報を活用する仕組みを作り、都道府県の負担を軽減すべきだろう。
患者が真に望む情報に近づける取り組みも欠かせない。ランキング本などで紹介される手術件数は項目に入ったものの、死亡率や再入院率など、医療レベルの指標として一般の関心が最も高い治療成績は、義務化が見送られた。重症度の調整などが必要で、現段階では客観的なデータとして示す方法が確立していないためだが、適正な評価手法を構築し、公表項目に追加するべきだ。
さらに、病気になりやすい高齢者など、すべての国民がインターネットの恩恵に浴しているわけではない。情報格差を生じさせない工夫も必要だ。
来年4月の施行時は一部の基幹情報のみで、本格運用は2008年度以降になる。各都道府県は、地域の実情を踏まえた、わかりやすいホームページの作成を競うとともに、可能な限り早期に、すべての情報を公表する体制を築いてほしい。
医療情報の例
▽診療科目▽診療時間▽入院食▽外国語対応▽車いす利用者への配慮▽クレジット払いの可否▽対応可能な在宅医療▽安全管理部門の設置の有無▽治療結果に関する分析の有無(分析結果提供の有無)▽外来患者数▽平均在院日数▽患者満足度調査の実施の有無(調査結果提供の有無)
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