現場から:田沢湖病院の救急指定取り下げ 重労働が招く医師の「過疎」 /秋田
◇背景に新制度、観光産業への影響も
仙北市立田沢湖病院(佐々木英人院長)が8月、県に対して救急指定を取り下げた。常勤医師が7月に3人から2人に減り、病院で救急搬送患者に対応できなくなったためだ。田沢湖地区から救急指定病院が消え、角館地区への救急搬送に変わったことで、搬送時間は約15分延びた。取り下げの背景には、臨床研修医制度の導入による医師偏在がある。指定取り下げで観光産業への影響も懸念され、医師不足解消策が急がれている。【津村豊和】
「あのままだと他の診療にも影響するし、医師の方が倒れてしまう」。病院の千葉継太郎事務長は指定取り下げに踏み切った経緯を切々と語る。
7月に依願退職した内科の常勤医師(36)は、退職理由の一つに「救急対応による重労働」を挙げていた。病院と消防によると、05年度に搬送された救急患者は291人で1日平均0・8人。湯治温泉からの重症患者が多いのが特徴で、病院では手に負えず公立角館総合病院や盛岡市へ転送したケースが25%に上った。
転送する場合は医師と看護師が救急車に同乗し、夜間や休日に非常勤医師が転送に付き添う場合は、自宅待機していた常勤医師が急きょ当直に入ることになる。常勤医師は平日の外来に加え、地域の往診にも出る。入院患者約35人の主治医でもあり、容体が急変すれば、休日でも病院に駆けつける。「残った常勤医師2人に負担をかけない手だてとして、救急取り下げを選択せざるを得なかった。1人にまで減ると、閉院に追い込まれる」と千葉事務長は話す。新たな入院患者は断り、現在ベッド60床に対して患者は20人に満たない。
昨年8月までは秋田大などからの派遣で4、5人の常勤医師を確保していたが、退職する医師を昨年ごろから補えなくなった。背景にあるのは、04年度に始まった臨床研修医制度だ。医学部卒業生は研修先を自由に選択できるようになったが、若手医師を管理する医局制度が崩れ出し、指導医が充実する首都圏の病院に人材が流れ始めた。
仙北市は10月から県内初となる医師確保対策室を設置し、県内医療機関に医師派遣を要請している。市は常勤医師1人を確保した段階で救急指定の再申請に踏み切る方針だが、3人に増員したとしても1人当たりの負担は取り下げ前と変わらず、再取り下げを懸念する声もある。県も6月、地域医療を担う医師確保のため、ハローワークの医師版「ドクターバンク」を開設し、全国約80大学に県内24医療機関の求人情報を紹介している。現在医師3人の求職があるが、まだ契約実績はない。
観光産業に頼る地域という観点からも、救急病院の空白化は深刻な問題だ。田沢湖地区の温泉パック旅行の客足が鈍ることを懸念し、市に救急指定再申請を要請している旅行代理店もある。市対策室は「この事態が長引けば、地域全体の集客にも影響しかねない」と危機感を募らせる。
また、仙北市田沢湖地区の65歳以上人口は県全体の27・3%(7月)を上回る31・2%(9月)。高齢化社会の中で救急医療の存在感は大きい。田沢湖病院のある関係者が話す。「最近の若い先生(医師)は楽な医療現場に流れがちで、地方で難儀したくない人が増えた」。医師の選択の幅が広がった結果、医療の「過疎化」が進行している。財源が限られる公立病院は苦しい経営の中で医師を確保するという難局に直面している。=毎週金曜に掲載します
毎日新聞10月13日朝刊
金木病院医師補充なく救急休止も
年内に内科医二人が退職する公立金木病院(五所川原市)に対して、弘前大学医学部が、医師を補充派遣しない方針を正式決定したことが十三日分かった。県も派遣の予定はなく、金木病院が独自に医師を確保しない限り、来年一月にも救急体制を休止せざるを得ない厳しい状況となった。
金木病院の医師は、定員(八月現在)十三人に対して現在、嘱託医一人を含め六人。内科医三人のうち二人が年内に退職することが決まっているため、平山誠敏五所川原市長らが八月十八日、弘大と県へ内科医の補充派遣を要請していた。
弘大医学部は地域医療対策委員会(委員長・佐藤敬医学部長)で対応を協議。学部内の関連講座や付属病院診療科に協力を求めたが、派遣に同意する医師がいなかった。
県も「マンパワーに余力がなく、地域で医師を確保してほしい」と、既に医師派遣をしない方針を示している。
この結果、金木病院は来年一月から内科医一人体制となり、外来、救急、入院のすべてに対応することは事実上不可能な状態。独自で医師を確保しない限り、救急指定を取り下げざるを得なくなる恐れが出てきた。
金木病院は、年間約七百件以上の救急外来を引き受けており、救急を中止すれば、中泊町、旧市浦村地区の救急患者が西北中央病院(五所川原市)に集中。昨年度、約一万四千四百件の救急外来を受け付け、多忙を極めている西北中央病院の負担増大は避けられない。東奥日報2006/10/14
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2006/20061014095509.asp
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このような事態を太平洋戦争に置き換えると‥研修医の制度変更による補給の途絶は、ガダルカナル島や印パール作戦のように思えますし、これから起きていくことは‥ラバウルとかそのあたりの出来事がだんだん、サイパンとか沖縄戦になりそうな予感がしてきました‥。
東北地区でも医師の充足しているというのは本当に限られた都市部だけのようです(仙台市内は開業が相次いでいたりするので過当競争ですね)。都市部への集中であふれれば、地域にも目指す医師もいるでしょうが、若い研修医にとって必要な指導をしてくれる中堅層がいる病院はその前になくなってしまっているような気がします。
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「新」石巻赤十字病院 患者急増、外来「紹介」に限定
宮城県石巻市蛇田地区に5月に新築移転した石巻赤十字病院(22診療科、388床)が、急増した外来患者の診療に追われ、「本来の役割である救急・高度医療に専念できない」と、医師らが危機感を抱いている。打開策として、病院は外来診療を原則的に紹介患者に限定する対策を打ち出し、周辺の医療機関との「すみ分け」を目指す方針。大病院に対する高いニーズがある中で、うまく役割分担ができるか注目される。
(石巻総局・越中谷郁子)
同病院の外来患者は現在、移転前より100人増えて一日平均約850人。県石巻保健福祉事務所の6月の調査によると、石巻地方(石巻市、東松島市、女川町)の六つの公的病院と、病床を持つ四つの民間病院を合わせた1カ月間の外来患者数は約5万7400人。その35%が石巻赤十字病院に集中している。
<アクセス便利に>
新病院は三陸自動車道石巻河南インターチェンジの近くにあり、石巻市吉野町にあった移転前に比べ周辺からのアクセスが良くなった。金田巌副院長は「患者が石巻地方2市1町を超えて周辺自治体に広がった。南三陸町や登米地方から来院する患者が増えた」と指摘する。
これに対し、医師75人の体制は移転前とほぼ同じ。医師たちの間から「患者一人一人の診察時間が減り、高度医療を必要としている人の治療ができない」という声が漏れる。患者の待ち時間も長くなり、苦情も相次いでいる。
この状況を受け、同病院は新規患者を地域の診療所などからの紹介患者に限定する方針を打ち出した。原則的に、周辺の医療機関からの紹介患者に限定する「完全予約制」を、移転当初から実施していた整形外科に続き、16日には内科、眼科、皮膚科など計8科に拡大する。
金田副院長は「三陸自動車道が延びれば、患者数は間違いなく増える。緊急性の高い患者に対応するため、一般の患者にはまず近くの診療所で受診してもらいたい」と住民の理解を求める。
石巻地方の医師数は287人(2004年12月現在)。住民10万人当たりで127人で県平均の201人をはるかに下回っている。少ない医師数で十分な医療を支えるためには、効率良く役割分担することが不可欠―というのは、地元の医療機関の総意とされる。
<住民含めて協議>
石巻地方の地域医療の在り方については、民間病院も含めた各院長や住民代表らで組織する石巻地方医療体制検討専門委員会(久門俊勝石巻市医師会副会長)が議論を続けている。
先月の会議では、石巻赤十字病院の飯沼一宇院長が「当院はこれ以上病床数を増やせない。限られた人的資源を効率よく配置する体制を考えなければならない」と、他の医療機関に協力を求めた。
周辺では患者数の減少に直面する病院もあり、「石巻赤十字病院で治療を受けた患者の療養を、ほかの小規模病院が受け入れて支援した方が良いのではないか」と、理解を示す意見が出た。
ただ、「完全予約制」にしても、病院に足を運んだ新規患者を完全に排除するのは困難だ。地域の医療機関が今後、地域住民にどう理解を求めていくかが、すみ分けの鍵を握っている。 河北新報:2006年10月14日土曜日
http://jyoho.kahoku.co.jp/member/news/2006/10/20061015t13025.htm
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大病院志向が地域でも出ているようで、仕方ないのですが、患者集中でかえって病院の機能低下を招いている現状があります。いずれ搬送を引き受けられなくなったとしても、医師の責任ではなく、「何でも病院」「いつでも病院」という住民の意識が変わらない限り、地域医療の衰亡を招くような気がしますが‥難しいですね。
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