2008.04.10 11:31 |  診療  |  仕事 / 職場  |  生活 / くらし  |  ピィ  | 推薦数 : 2

優しい国

先日、ER が急に騒がしくなり、少しのぞいてみると、ER 入り口にタクシーが横付けされました。

タクシーの中を覗いてみると、後部座席にはぐったりした血まみれの女性が、横たわっており、助手席にはご主人と思われる男性が、頭を抱え、泣き叫んでいます。

女性をER に運び込み、慎重に処置を始めます。


妊婦さんでした

ご夫婦でオートバイに乗っていたところ、事故にあわれたそうです。ご主人は膝を痛めているのみで、比較的軽症でしたが、女性のほうは、ほとんど問いかけにも応じません。

実は、このご夫婦は現地の方なので、私が担当する範囲ではないのですが、何かお手伝いできることはないかと、様子をみていたら、女性の耳から出血が。。。

耳鏡で中をチェックしようにも、次々と流れ出る血液に邪魔されます。

結局、このお二人はうちの救急車で、国立の総合病院に運ばれていきました。


この女性が、そしてお腹の中の赤ちゃんが、無事である事を、願ってやみません。

私のいる国では、救急車は有料です。

それも、現地の方の収入を考えると、かなりの高額になります。

私の勤務する病院は、外国人向けの設備を誇っているため、診察料もその他の費用も、他のローカル病院と比べると、段違いに高額であり、うちの救急車の出動費用は、普通の現地人の1ヶ月のお給料に相当します。

そのため、このようにタクシーで運ばれる患者さんも少なくはありません。

血まみれの女性を運んで来たタクシーの後部座席は、同じように血まみれになっていることでしょう。

そして、そのタクシーの運転手はあとでどこかで、嫌な顔ひとつせずに、怪我をした女性と赤ちゃんの無事を祈りながら、タクシーの後部座席を清掃し、次の勤務に向かうことでしょう。

他にも、道ばたで事故にあった日本人が、通りすがりの現地の人に助けられ、バイクや車やタクシーで運ばれて来たり、うちの救急車で他の病院に搬送する際、いつもは道をよけてくれない他の車が、今日はよけてくれるなぁ?と思ったら、運んで来てくれたバイクの男の子が、救急車の前を先導してくれたりした事もありました。

弱ってる人に、とても優しい国です。

ちょっと前の日本のようです。

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