・臨床整形外科って変な標題については,最後の方に説明しております.
・以前から,このブログで職業・環境性疾患はunderdiagnosisされているということを,いろんな教科書の記述(職業・環境医学の教科書のみでなく,ハリソン,セシルといった一般の内科書)を引用しながらしてまいりました.特に疾患として呼吸器疾患と筋骨格系疾患がそうであることも述べたと思います.本日は筋骨格系疾患を主に診ている整形外科の問題について述べたいと思います.(ちなみに私は,内科医です.別に整形外科のDr.にケンカうっているわけではありませんが、私の認識が間違っていないか,ご意見を伺いたいのです:反論の例「いや,整形外科医は,職業性筋骨格系疾患をunderdiagnosisしてはいない」)
・まずは,不思議でしょうが,先日紹介しました石綿関連四学会連絡会編のパンフレット「石綿の健康影響に関するQ&A」から:実は,このパンフレットには,Q&Aのみでなく,付録が付いています.そのうちの一つが,日本産業衛生学会「石綿問題検討委員会」報告書(平成21年3月14日)というものがあります.その中に以下のような文章があります.引用する文章は,産業衛生学会と他の学会(ここでは,整形外科関係の学会ということになります.)との関係について述べた部分です.
より明確に他学会とは意見が異なった別の例として,「職業性頸肩腕障害」の例がある.1970年代事務の機械化が急速に普及し,キーパンチャーや電話交換手などの頸,肩,上肢の障害が多発して産業保健の大きな課題となった.そこで本学会には専門委員会ができ,上記「疾患概念」を提起した.しかし,これに対して他の学会からすでに疾患概念としては確立し終えたもの,として新たな疾患概念を提案することに難色が示された.本学会は事務機械の改善,過重作業の制限や作業環境の改善で,患者の障害を軽減するとともに,新症例の発生の大幅な減少を図るという視点・方法論で,その後,同障害の予防に大きく寄与したといえよう.
・上の記述を補足すれば: 高度経済成長期「機械化」が進み,キーパンチの作業が増えました.そして頸肩腕障害になる労働者が多発,毎年何人(何十人?)もつらくて,自殺者がでる状況が続いていたのです.それも,若い娘さんが.頸肩腕障害は重症になると,とてもつらいのです.患者さんは,両腕を切り落としたいとも言ったりします.その気持ちは私も分かります.PCの使いすぎで私も「頸腕」になりましたが,夜寝ているときも両上肢のしびれ・痛みというか何とも表現できない違和感というのがあって眠れないのです.また,病気だけの問題でなく,それを病気と認められないとか,原因は精神的なもの,果ては詐病といったあつかいもあり,自殺に至ったと思われます.そういった情勢のもと産業衛生学会は,作業管理・作業環境管理(当然健康管理も)をするために,あたらしい疾患概念を提唱したのです.しかし,整形外科の学会は,肩や頸,腕の病気の専門は整形外科である,「素人である」労働衛生が何を言うかといった立場だったわけです.(表現悪いですけど)しかし,そういった批判にもめげず労働衛生の専門家は,作業管理等をすすめてゆき,発症を激減させたのでした.何が問題か?ここからは私の意見ですが,整形外科は,自分の立ち位置が分かっていなかったのです.つまり、診察室の中で、上肢への荷重の負荷が原因でおこった頸、肩、上肢の痛みを、原因を見ず、結果=症状のみしか「診て」いなかったのですね.いくら病院で投薬や物療,また,一時休業の指示をだしても,作業が変わらない限り治らない,そのことが「分かっていなかった」と思います.ここまで書くと,整形外科のDr.から反発があるかもしれませんが,ちゃんと(いや,ちょっとあいまいかな?)整形外科学会が出した本にそのころの(今でも?)の問題点がかかれておりますから=『作業関連筋骨格系障害 エビデンスの検証』(日本整形外科学会産業医委員会翻訳)という翻訳本があります。その序文に当時の委員長が以下のように述べております。
「職場における筋骨格系障害に対して、整形外科医は、筋骨格系障害自体には関心もあり、治療に対しても積極的に対応している。それに比べて、職場や作業という外的因子にはあまり注目してこなかったのではないだろうか。」
・ちょっと横道のそれますが,私は以前水島コンビナートの近くの病院に勤めていました.COPDや喘息の患者さんがいっぱいです.患者さんは,入院したら一定症状が改善しますが,退院したら悪化します.当たり前ですね,空気がきれくならないのだから.いくら吸入ステロイドや抗コリン剤の吸入をしてもダメで,空気をきれくしないかぎり症状は落ち着きませんね.(実際大気汚染激しいときの水島を知らないと,実感がわかないと思います.まずは,実態をみることが大切.今でもコンビナートのすぐ横に人家があります・・・コンビナートで火災があったら近隣の住民は熱で死亡するというレポートもあります)
・さて,今回ブログ表題の「臨床」整形外科についてです.そもそもこのブログの表題に臨床医学とつけているのですが,実は,臨床医学という言葉が私にはどうもしっくりきません.臨床医学とは基礎医学の対語で,実際に患者さんを診療する医学と言うことですが,そもそも臨床とはベッドサイドということです.医者が患者さんのベッドサイドにいって診療するということ.少し広げて病院・診療所にきた患者さんを診療するということ.ということは,なかなか患者さんの生活や仕事がみれません.(往診したら一定生活がみれますが)実際に患者さんを診る医者は「臨床」のみではいけないのではないかという思いが私にはあります.(実地医家という言葉もありますが,なんかしっくりいかない)表題に「臨床整形外科」とつけたのは,診察室の中だけで患者さんを診ているだけでは,失敗することがありますよという意味をこめて書いたのです.(それは,整形外科に限ったことではありません.自戒を込めて)
・もう一度いいますが、決して整形外科の悪口をかいているわけではありません。実際、以下のような良い本を監訳されておりますから。
『上肢筋骨格系障害の診断ガイドラインー作業関連性の評価基準ー』(日本整形外科学会労働産業委員会監訳。南江堂。2004年)
・以下日記です。
本日は久々に午前中は何のdutyのない土曜日。朝喫茶店でモーニングサービスを食べながら読書。そして9時過ぎに重役出勤。たまっている事務作業を処理するつもりでしたが、3時間半では処理できませんでした。昼は、「備中讃岐屋」というところで、大根おろしうどん(580円)を食べたのち、13時30分から16時過ぎまで理事会。その後専務といろいろ話。会議が早く終わったら、『トランスフォーマー リベンジ』を見に行こうと思っていましたが、無理でした。ちなみに『エヴァンゲリオン』も上映がはじまりましたが、すごい人気みたいですね。MOVIXのwebsiteで見たら、本日のチケットはほぼ売り切れでしたね。映画が見れない代わりに、Party Partyというケーキ屋さんによって、紅茶とケーキを食べながら読書→子供らにお土産買って帰宅です。
ところで、数日前に箒木 蓬生の『三たびの海峡』を読み終わりました。なんかすごい小説でした。作者もよくこれだけ詳しく調べたなと思いました。読むほうは、日本と韓国の歴史をある程度知らないと、ぴんとこないかもしれませんね。(一応私、ハングル文字9割は読めます)映画化もされていますが、私は見てませんでしたが、小説読んで見てみようかなと思いました。
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